電気がなくてもカメラが撮れる!? アナログ技術が繋ぐ縁にほっこり/#うちで過ごそう

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『サバイバルファミリー』
『サバイバルファミリー』

【フォトグラファーのオススメ/写真やカメラが印象に残る映画 2】
『サバイバルファミリー』

『スウィングガールズ』や『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』など軽快なタッチが魅力的な矢口史靖監督がメガホンを取り、突然電気が使えなくなった日本で東京から鹿児島までサバイバルツアーに出る家族をコミカルに描いた人間ドラマです。主人公の一家で父・鈴木義之を小日向文世さん、母・光恵を深津絵里さん、大学生の長男・賢司を泉澤祐希さん、高校生の長女・結衣を葵わかなさんが演じています。

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ある朝起きると目覚まし時計は鳴らず、スマホはバッテリーが切れ、電子レンジもうんともすんとも言わなくなるところから物語は始まります。外では都心全体にわたって車・電車と電気にかかわるものすべてが機能停止し、時間を経ても一向に改善する気配がない事から父が奮起。「大阪は電気が通っている」という噂を聞き、気乗りしない家族を強引に引きつれて日本横断の旅に出ます。しかも自転車で。

ディザスタ―ムービーは昔から色々ありますが、矢口監督だけあって温かいんですね。仕事人間で自分勝手な父とそんな父を煙たがっていた年頃の子どもたちが、困難を通して一つになっていく姿が物語の中心です。父が失敗してイライラしても母が柔軟な発想でピンチを乗り切るところも微笑ましいし、何よりポジティブな気持ちで乗り切ろうという所がミソ。ゴーストタウンと化した街並みや避難する人たちが高速道路を埋め尽くすシーンなど、映像にも力が入っています。

電気が使えない中でサバイバル術やアナログなものが活躍し、カメラも登場します。鈴木家が道中で出会うサバイバル好きな斎藤一家の次男・翔平(志尊淳)に撮ってもらうシーンで、スマホもデジカメも使えない中で彼が持っていたのは電池がなくても使える昔ながらの「機械式カメラ」。現代っ子の結衣が驚いて「カメラ使えるんですか?」と尋ねると、「デジタルじゃないよ」と翔平。「それ、できたら送ってください」と嬉しそうに結衣が住所を書いたメモを渡します。

カメラが登場するのはそのほんの一コマですが、電気が戻り日常を取り戻した頃に現像された写真が手紙で届きます。メールではなく、手紙という所もセットでニクイと思いました。(文:ナカムラ ヨシノーブ/フォトグラファー)