『攻殻』最新作、millennium parade楽曲は素晴らしいが映像の完成度に課題

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NETFLIXオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』
Netflixで4月23日より全世界独占配信
NETFLIXオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』
Netflixで4月23日より全世界独占配信

『攻殻機動隊 SAC_2045』#うちで過ごそう

明日4月23日よりNETFLIXで配信がスタートする『攻殻機動隊 SAC_2045』。「全世界同時デフォルト」と呼ばれる経済災害の発生とAIの劇的な進化により、計画的かつ持続的な戦争“サスティナブル・ウォー”へと突入した近未来を舞台に、正体不明の“ポスト・ヒューマン”に立ち向かう草薙素子やバトーら元・公安9課のメンバーたちの活躍を描く。

King Gnu・常田大希の才能全開、 『攻殻』最新作の音楽がスゴイ!

預言的なリアリティを持った世界観の構築と細部の描き込み。ファンを魅了し続ける『攻殻』シリーズのコアは常にそこにあり、その世界観に豊かな奥行きを持たせる要素として、音楽が重要な役割を果たしてきた。押井守監督による劇場版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と『イノセンス』では川井憲次、神山健治監督によるTVアニメシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では菅野よう子、黄瀬和哉総監督による劇場版シリーズ『攻殻機動隊 ARISE』ではコーネリアスが音楽を担当。近未来のサイバーパンク的世界観に寄り添った劇伴という意味で、アプローチはそれぞれ異なるものの、クォリティはどれも極めて高く、中でもコーネリアスのサウンドトラック盤はアートワークも含めて『攻殻』とコーネリアスの両方のファンを納得させる仕上がりだったのは記憶に新しいところだ。

先日の記事でもご紹介したように、今回の『攻殻機動隊 SAC_2045』でもmillennium parade × ghost in the shell: SAC_2045名義によるオープニングテーマ「Fly with me」は素晴らしい。millennium paradeは、King Gnuの中心メンバーである常田大希のソロプロジェクト。常田自身『攻殻』の大ファンだったそうで、今回のオファーも二つ返事で快諾したという。また、カナダ人ヴォーカリストのCassie WeiとコンポーザーのYamato Kasaiを中心とする音楽制作集団、Miliによるエンディングテーマ「sustain ++;」も、本編のキーワードのひとつである“Sustainability”(持続可能性)に着想を得たコンセプチュアルな楽曲に仕上がっている。

戸田信子 × 陣内一真による劇伴も、これまでのどの『攻殻』シリーズとも異なる。従来の『攻殻』の多くがアジア圏の大都市の“闇”を基調としてきたのに対し、本作前半の舞台はアメリカ西海岸。そのため今回の『攻殻機動隊 SAC_2045』は、これまでになく明るく、乾いたルックの『攻殻』となっており、劇伴もエンタメ性や分かりやすさという意味で群を抜いている。なお、共同監督を務める神山健治&荒牧伸志と戸田&陣内は、同じNETFLIXの配信によるフル3DCGアニメ『ULTRAMAN』でも一緒に仕事をしている。

全世界配信に先立って、シーズン1の全12話を見ることができた。音楽に関しては先に触れた通りの好印象だが、世界観の構築と細部の描き込みという肝心の部分については、正直なところファンの期待値に達しているとは思えない。これまで発表されたどの映像作品の続編でもない、まったく新しい『攻殻』とアナウンスされているものの、『SAC』と題されているだけにファンはTVアニメシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のスピーディなアクションシーンとハードなストーリーテリングを求めるだろう。しかし、今回のシーズン1を見る限りにおいてはそういった『SAC』らしさ、もっと言えば『攻殻』らしさが活かされているという印象はない。3DCG化された各キャラクターの動きは鈍重でぎこちなく、動かされている感ばかりが目についてしまう。もちろんこれは現時点での印象。すでにシーズン2の制作も始まっているということなので、いち『攻殻』ファンとして猛烈な巻き返しを切に願いたい。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)