脚本家・倉本聰が描く至高の愛、至高の美を豪華キャスト集結で描く
映画『海の沈黙』の記者会見&舞台挨拶つき先行上映が、10月13日に北海道・札幌で開催。主演を務めた本木雅弘、共演の小泉今日子、菅野恵、原作・脚本の倉本聰、若松節朗監督が登壇し、作品への想いを語った。
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『前略おふくろ様』『北の国から』『やすらぎの郷』など数々の名作を手がけてきた巨匠・倉本聰が長年にわたって構想し、「どうしても書いておきたかった」と語る渾身のドラマを、『沈まぬ太陽』(09年)『Fukushima 50』(20年)の若松節朗監督が映画化した本作。北海道・小樽を舞台に、人々の前から姿を消した天才画家が秘めてきた想い、美と芸術への執念、そして忘れられない過去が明らかになる時、至高の美と愛の全貌がキャンバスに描きだされる。
本作の着想のもとになったのは、「永仁の壺事件」。1960年、鎌倉時代の古瀬戸の傑作として国の重要文化財に指定されていた瓶子が、実は1897年生まれの陶芸家・加藤唐九郎の作品であることが明らかになり、重要文化財の指定の解除、文部技官が引責辞任するなどの事態となった。イベント当日の午後に行われた記者会見で、倉本は事件について「(偽物だと分かると)皆が美の価値を下げてしまう風潮に納得がいかず、なんとかドラマにしたいと思っていた」と語った。
主役・津山竜次を務めた本木は、北海道で記者会見・先行上映舞台挨拶を行うことについて、「北海道を皮切りにプロモーションが始まることを非常に嬉しく思います」と挨拶。「繊細さ、頑なさを秘めた難しい役で苦労しましたが、熟練の若松監督の支えもありながら、なんとか乗り切ることが出来ました」と撮影を振り返った。
倉本脚本の映画は88年の高倉健主演、蔵原惟義監督作『海へ ~See You~』以来36年ぶり。倉本の最新作に出演することについて本木は、「憧れるような魅力の詰まった作品であり、その中の竜次というキャラクターが私で成立するのか。戸惑いもありましたが、今回は“正真正銘最後の作品になる”というオファーだったので、覚悟を決めてお受けいたしました」と語った。
竜次のかつての恋人・安奈を演じた小泉は、倉本が脚本を手掛けた作品にかつて出演し、別の作品でもオファーがあったが都合がつかず出演が叶わなかった過去を明かした。「いつかリベンジしたいという気持ちがあったので、今回お話をいただいたときにこれで心がスッキリできると思いました。60年、先生が温めてきたテーマ。先生の心に引っかかっていたものを流すタイミングでご一緒できてうれしかったです」と語った。
今回がスクリーンデビューであり、小樽で竜次と交流するバーテンダー・あざみを演じた菅野恵は、「錚々たる先輩方、監督、そして倉本先生から言葉をいただきながら、まだまだ力及ばずだなと感じることもたくさんありましたが映画は本当に素敵な仕上がりになりました」と答えた。
若松監督は「監督であれば誰しもが一度は倉本聰の脚本を演出したいと願います。しかし相当厳しくやられるのだろうなという不安もありました。しかし倉本さんはとても優しいお方で、先生には背中をずいぶん押していただいて、先生の描きたかった世界観が本木さん、小泉さんたちの力を借りて出来上がったような気がします」と語った。
夜にTOHOシネマズ すすきので行われた舞台挨拶つき先行上映では、即完売となった観客の前に5人が登壇。北海道を舞台にした作品が地元で先行上映されるとあって、客席からは大きな拍手が沸き上がった。
いよいよ初お披露目となる本作について倉本は、「俳優さんが素晴らしいです」と太鼓判。本木は「倉本先生の本拠地、そしてロケの思い出のある北海道でいち早く皆さんに見てもらえることを大変嬉しく思います」と挨拶。若松監督も「季節は今、芸術の秋。美術館や絵が好きな方たちにはとても良い映画です。そして、本木さんと小泉さんのラブストーリーにもご期待ください!」と本作にて描かれるドラマをアピールした。
本作に参加した際の気持ちを訊かれた本木は、「倉本作品で定説として言われている“セリフを一字一句最後まで書かれている通りに話せ”というのは、そのようにした方がよろしいのでしょうか?と伺ったら、“それはちょっと噂が1人歩きしたんだ”と。“心情に沿っていれば、感じたままにおやりになればよろしい”と仰っていただきました」と倉本との電話のやりとりを明かした。
小泉は、「倉本先生が書かれたテーマにまず惹かれて、そして主演が本木さんだと聞いて、これはきっと面白く素敵な映画になるだろうなと思い参加しました」と語った。
菅野は本作の豪華な出演陣について、「子どもの頃から見ていた方々ばかりの中に私の名前が並ぶチャンスを貰えたので、しっかり準備して、やるぞ!という意気込みで臨みました」と撮影を振り返った。
若松監督は、「HBC制作の東芝日曜劇場に倉本さんの北海道を舞台にした作品がいっぱいありまして、それが僕の教本でした。倉本さんと一緒に仕事ができるということが、監督としての誇りです」と感慨深げ。さらに「本作でも倉本節といえるセリフもたくさん出てきます。ぜひ楽しんで貰えたらと思います」と語った。
最後に倉本は、「皆さんがおじいさん、おばあさんになったときに、孫に昔、北海道はこうだったんだという昔話をできるような映画になればいいなと思います」と本作が長く愛される作品となることを願いイベントを締めくくった。
『海の沈黙』は11月22日より全国公開。
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