成田「生半可な気持ちではできないな…」と重圧も
『さがす』(21年)『ガンニバル』の片山慎三監督がつげ義春のシュルレアリスム作品を映画化した『雨の中の慾情』。本作が第37回東京国際映画祭のコンペティション部門正式招待作品に選出され、主演の成田凌、共演の中村映里子、李杏らが舞台挨拶&ティーチインに登壇。ワールドプレミアとなった本イベントで、撮影秘話や本作に掛ける想い、覚悟を明かした。
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多くの来場者で賑わう会場に登場したのは、売れない漫画家・義男役を演じた成田凌、妖艶でミステリアスな魅力を放つ美しい未亡人・福子を演じた中村映里子、台湾から参加したキャストの一人で、森田剛演じる伊守の妻・春美(シェンメイ)を演じた李杏の3人。成田は小雨が降る曇天の天候とタイトルをかけ「“雨の中の慾情”日和にお越しいただきありがとうございます」と挨拶し、場内の笑いを誘いながらも、衝撃的かつ独創的な本作の上映直後の雰囲気に「入ってきた時にお疲れムードを感じました(笑)。でも、最後には愛という形が見える作品になっていると思います」と無事にワールドプレミアを迎えられたことを喜んだ。
中村は「私にとっても特別で、かけがえのない作品になりました」と笑顔。台湾からの参加となった李杏は「この東京国際映画祭という場でワールドプレミアに出席できて嬉しいです」と明かし、映画祭という華やかな場で初お披露目となった本作のワールドプレミア開催を喜んでいた。
つげ義春の「雨の中の慾情」をベースに、「隣りの女」「池袋百点会」「夏の思いで」の要素を取り入れながら、片山監督が独創的な世界観を創出したラブストーリーとなっている本作。主演である成田は、最初にオファーを受けた時、「生半可な気持ちではできないな…」と重圧を感じながらも、「こういう映画を作りたいと思っていました」と本作に掛ける熱い想いと覚悟を明かした。
中村は「片山監督は作品を経てどんどんパワーアップしていると思いますし、監督の作品なら絶対やりたい!と思っていました。原作やキャラクターのユニークさ、その世界観がすごく面白そうで、その世界に飛び込んでみたいと強く思ったんです」と、福子役に挑む上での、当時の意気込みを思い返し、丁寧に言葉を紡ぐ。
2017年に台湾でも公開された『岬の兄妹』(18年)が大好きだという李杏は、「当時、ご縁があって監督と知り合うことができて…今回のオファーは躊躇なくお受けいたしました」と本作出演に至るエピソードを披露した。
後半には来場者からのQ&Aも実施し、早速「役を演じる上で監督からはどのような演出がありましたか?」といった質問が飛ぶ。成田は「まず言われたのは義男の走り方です。義男は肘を曲げないで走ると思うんですよ、と言われて。義男は生活の中で、どういう人間なのかを表現する必要があると思っていました」と明かし、予告映像でも見ることができる独特なフォームで駆け抜ける義男の姿が完成した撮影秘話を告白。
中村は「私はとにかく明るく演じてほしいと言われていました。福子という人物をリアルに表現するというより、どちらかというと大げさというか、思いっきり演じてみよう、という気持ちでしたね。汗っかきという設定なので、いっぱいオイルをつけていたりもして…それがキャラクターの一つの印象的な部分にもつながったと思います」と、具現化するのが至難の業だったという役作りについての裏側を明かした。
李杏も「瞬きのスピードを遅くしてほしい、と言われました。言われたことがない演出だったので面白かったです。いい経験でした」と片山監督が創出する世界を楽しみながら演じていたそう。
さらに、「自身の役柄とキャラクターが重なる部分はありますか?」という質問に対しては、「気が小さい所ですかね。こうなればいいな、と思うことはあるけど、そのための一歩が進んでいるのか、いないのか…あとできれば楽をしたいと思っている所です(笑)」と冗談を交えて明かす成田の姿に笑顔を見せる中村と李杏。
和気あいあいとした空気感が流れる中、妖艶なファムファタル(運命の女)のように見えて、儚げな未亡人の雰囲気もたたえており、かと思えば嫉妬に狂う激情家の一面も持つ…という福子を演じた中村は、「衝動的、直感的というか…自分の思うままに、というのは重なるかなと思います」と役柄に通じる自身の意外な一面を告白していた。
多くの挙手が上がり、質問が飛び交う盛り上がりをみせたQ&Aだったが、最後に成田が「今日はご来場いただき本当にありがとうございました。愛情の溢れる現場で撮影し、エネルギッシュな作品に仕上がりました。僕にとっても大切な作品になっていますので、皆さんの心にも残ると嬉しいです」とメッセージを贈り、ワールドプレミアとなった舞台挨拶&ティーチインは幕を閉じた。
『雨の中の慾情』は11月29日より劇場公開。
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