人気子役の兄、崩壊した家庭、苦難を乗り越えて素晴らしい俳優へと成長したキーラン・カルキン
#キーラン・カルキン#リアル・ペイン~心の旅~#この俳優に注目
(C)2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
『リアル・ペイン~心の旅~』でアカデミー賞助演男優賞にノミネート
【この俳優に注目】3月発表の第97回アカデミー賞において『リアル・ペイン~心の旅~』(公開中)で助演男優賞の大本命と目されているキーラン・カルキン。ユダヤ系アメリカ人の従兄弟同士が亡き祖母の足跡をたどり、ポーランドを旅する。忘れてはならない歴史にふれながら、40代の男性2人が自身と向き合う物語で、キーランは心に傷を抱えるキャラクターを見事に演じ、すでにゴールデン・グローブ賞など各賞を受賞している。
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名前からして一目瞭然だが、彼の兄は『ホーム・アローン』シリーズで絶大な人気を博した名子役のマコーレー・カルキン。1982年生まれのキーランは2歳上の兄が同作で演じた主人公ケヴィンの弟役で映画デビューした。子役から現在に至るまでの歩みや兄との関係、キャリアや私生活について紹介する。
『リアル・ペイン~心の旅~』
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子役スターの兄に対して脇役をこなしたキーラン
兄が子役としては破格の高額ギャラ(1993年、94年当時で800万ドル)を稼ぐスターだったのに対して、小役時代のキーランは主演よりも脇に回る作品が多く、インディペンデント映画を中心に、いじめられっ子と難病の少年の交流を描いた『マイ・フレンド・メモリー』(1998年)やメリル・ストリープの息子役を演じた『ミュージック・オブ・ハート』(1999年)やアカデミー賞受賞作『サイダーハウス・ルール』(1999年)などの良作に出演し、『イノセント・ボーイズ』『17歳の処方箋』(ともに2002年)など隠れた名作で主演を務めている。
『イノセント・ボーイズ』で注目された直後から数年間、キーランは映画やTVへの出演を控えた。6歳で仕事を始め、「20歳の時に突然、自分にキャリアがあることに気づいて、恐ろしくなった。(この仕事を)自分でやりたいと決めたわけではなかったから」と後年、振り返っている。
兄の莫大な稼ぎを巡り両親は泥沼の法廷闘争
この決断には、マコーレーが成功を収めた後に離別した両親が親権や莫大な財産をめぐって泥沼の法廷闘争を続けたことも影響しているだろう。兄は10代でアルコール依存症になり、1995年の『リッチー・リッチ』に主演後に一時的に俳優業から退いていた。
兄の苦悩を間近で見ていたであろうキーランは、演技というものを本当に自身の仕事にしたいのかを見極める時間が必要だったと語っている。
その間はやりたいと思った仕事だけに集中し、出演するのはほとんど舞台作品になった。合間に『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010年)や『ムービー43』(2013年)などの映画やTVシリーズ『FARGO/ファーゴ』(2015年)などに出演してきた彼が「自分のやりたいことがわかった気がする。これまでやり続けてきたことだ」と思えたのは33歳になった頃だったという。
30代後半になり『メディア王~華麗なる一族~』で高評価を得る
そんな彼が大きな脚光を浴びたのは2018年からスタートしたTVシリーズ『メディア王~華麗なる一族~』。メディア王の父の後継をめぐって骨肉の争いを繰り広げるきょうだいの末っ子、ローマン・ロイを演じ、エミー賞やゴールデン・グローブ賞、映画俳優組合(SAG)賞を受賞(アンサンブル演技賞)した。富裕層の御曹司の“嫌なところ、ダメなところ詰め合わせ”のようなキャラクターだが、皮肉屋でありながら脆く、終盤にかけて父親への愛憎入り混じる複雑な心境をリアルに表現し、キャリアを新たな高みに押し上げた。
『リアル・ペイン~心の旅~』では愛されキャラの変わり者を演じる
『リアル・ペイン~心の旅~』で演じるベンジーにもローマンと共通するものがある。本作の監督、脚本を務めるジェシー・アイゼンバーグが演じる主人公デヴィッドとの2人旅で身勝手な行動をしてばかり。実直だが面白みにかける従兄弟と対照的に、ジョークで皆を楽しませる愛されキャラかと思えば不謹慎な振舞いで周囲を困惑させ、突如正論を振りかざしてガイドに食ってかかったり、デヴィッドばかりかツアー参加者たちも彼に振り回される。
物語が進むにつれてベンジーの過去が明らかになるが、キーランは役作りについて「ローマンとベンジーを演じた時は、キャラクターが自分自身について知っている以上のことを知りたくなかった。彼がリアルタイムで知っていることだけを知りたかった」と、キャラクターを分析し過ぎずに臨んだと話している。
本物の痛みを内に抱えた人物像を見事に作り出した演技はゴールデン・グローブ賞映画部門やクリティクス・チョイス・アワード、ナショナル・ボード・オブ・レビューなどアカデミー賞の行方を占う各賞の助演男優賞に輝き、本作は彼の新たな代表作となった。
『リアル・ペイン~心の旅~』
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エマ・ストーンとは破局後も共に仕事をする仲、現在は2児の父
実はキーランは『リアル・ペイン~心の旅~』でプロデューサーを務めるエマ・ストーンと『ペーパーマンPaperMan』(2009年)での共演をきっかけに2009年から2011年まで交際していた。破局後も良き友人として、今回のように一緒に仕事もする関係だ。
2013年にはロンドン出身で広告代理店で働いていたジャズ・チャートンと結婚し、現在は2児の父だ。妻のインスタグラムには優しい表情で子どもたちと遊ぶキーランの様子が投稿されている。そこには「良き父親の見本ではない人に育てられたのに、彼はかなりうまくやっています」とキャプションが付けられている。
子役時代のマネージャーでもあった実父とは12歳で離別して以来、疎遠だ。一方、子どもたちと8日間以上離れないと決めているキーラン本人は、ポーランドでロケする『リアル・ペイン~心の旅~』への出演をクランクイン直前に断りかけたが、エマの説得で考えを改めたという。
若さが残るキャラクターから次の章へ
幼くして名声の恐ろしさを身にしみて知った彼は、これからも何より自身と家族を大切にしながら仕事を選ぶのではないだろうか。3月からはブロードウェイの舞台で名作「グレンギャリー・グレン・ロス」に主演する。映画版『摩天楼を夢みて』ではアル・パチーノが演じ、舞台でも多くの名優が演じた役への挑戦で新境地を開拓するに違いない。
生意気な若さが残るキャラクターから次なる章へと進むキーランの活躍を末長く楽しみたい。(文:冨永由紀/映画ライター)
『リアル・ペイン~心の旅~』は公開中。
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