1974年8月14日、ドイツ・ベルリン生まれ。9歳でフランスに移住。スタンダップコメディアンとしてTVを中心に活躍。英語、フランス語、ドイツ語、ヘブライ語を操るほか、ベルギーの大人気コミック原作の映画『ラルゴ・ウィンチ』シリーズ(08、11年)では、ハードなアクションも自らこなすな
どマルチに活躍する期待の俳優。そのほか出演作に、『迷宮の女』(03年)、『裏切りの闇で眠れ』
(06年)がある。
『スリープレス・ナイト』フレデリック・ジャルダン監督&トメル・シスレー インタビュー
フランス発、ノンストップ・アクションの傑作の舞台裏に迫る
パリ市内で白昼堂々、大量のコカイン強奪事件が発生する。犯人はなんと2人の刑事。首謀者のヴァンサンは顔を見られ、コカイン奪取を目指すマフィアは彼の1人息子を人質に取る。息子を救い出すためにマフィアが経営するナイトクラブに単身乗り込んだヴァンサンの“眠れぬ夜”を描く『スリープレス・ナイト』は、ノンストップのアクションと緊張感あふれるストーリーがたまらないフランス発のアクション作。
脚本も手がけたフレデリック・ジャルダン監督、『ラルゴ・ウィンチ』シリーズで知られる主演のトメル・シスレーに話を聞いた。
監督:その通り。この映画で描きたかったのは何より、父と息子の絆だ。
監督:プロデューサーから、僕が過去に撮った3作より、もっと暗いものを書いてみろ、と言われたのがきっかけだった。僕自身、フィルムノワールをやりたかったし、父と息子の物語も書きたかった。密室劇というのも好きなシチュエーションなんだ。時間と場所、アクションの相乗効果で、悲劇を盛り上げる。
シスレー:素晴らしいと思った。とても的確で、よく書かれた脚本で、一気に読んだ。完成作では即興に見えるような場面も全て脚本上にあったよ。そしてフレッド(監督)と同様、僕も父親の物語として捉えていた。
シスレー:もちろん。僕が演じるときに心がけるのは“ふり”をしないことなんだ。僕には子どもがいるけど、まだ2歳だから、思春期の子を持つ親の気持ちは正直わからない。でも、父親のわが子に対する無償の愛は理解できる。ヴァンサンには長所もあるけど、過ちもたくさん犯す。普通の男なんだよ。そんな点にも共感した。あとは、窮地に陥っても臨機応変に行動するところ。ヤバい状況を切り抜けるのは僕の日常でもある(笑)。でも、本当に脚本を読んだ時点では、アクションが売りの映画になるとは思いもしなかった。アクション・ヒーローを演じるつもりもなかったし(笑)。アクション映画というより悲劇だと思って演じていた。
監督:確かに、ああいう場面はアメリカやヨーロッパの映画よりもアジアの作品に多いだろうね。最近だと韓国映画とか。
シスレー:2日かけて撮ったね。(戦う相手の麻薬捜査官を演じる)ジュリアン・ボワッスリエとリハーサルを繰り返しながら、いくつか修正を加えて……。
監督:トメルがすごいのは、あのシーンを全部自分で演じたこと。スタントマンはいたけど、出番はなかった。とにかくリアリティのある場面にしたかった。マーシャル・アーツの技の見せ合いみたいじゃなく、調理台の引き出しでも、おたまでも、その場にあるもは何でも利用するような野蛮な感じを出したかった。現場でアクション監督と一緒にトメルもアイデアを出してくれたんだ。
シスレー:元々格闘系のスポーツをするのは好きだし、アクションも好きなんだ。だから簡単にいろんなアイデアが浮かんで来る。
シスレー:あのシーンは大変だった。僕にとってはね。(監督に向かって、おどけた調子で)あの時、喜んでただろう、このサディスト!(笑)
監督:(真顔で)喜んでいたのは、2人ともすぐに役になりきって演じてくれたからさ。スケジュールがタイトで何度も撮り直しはできない状況だったんだ。そのうえ、マイナス20度の本物の冷凍室での撮影だったからね。
シスレー:しかもワンシーン・ワンカットだった。カメラを回し始めたら、最初から最後まで演じる。舞台みたいだったね。刑事役のリジー・ブロシュレはとてもいい女優で、僕は彼女のことが大好きで……。
監督:なんで“大好き”って強調する?(笑)
シスレー:大好きなんだから、いいじゃないか。とにかく、芝居とはいえ彼女を痛めつけるのはとてもつらかった。怪我させないように注意しながら、でも、さっきも言ったように“ふり”をするのは嫌だから、それなりに力が入る。で、彼女も芝居が上手いから、こっちは本当に痛めつけたような気分にさせられるんだ。女性に暴力をふるうなんて良くないことだし、普通、映画ではあまり見かけない描写だけどね。
監督:特にアクション映画の主人公にはふさわしくない。
シスレー:そう。でも、僕自身はあのシーンを気に入ってる。主人公の目的は息子を救うことだから。そのためなら何でもする。僕だって、自分の娘を救うために女性を殴らなきゃいけない事態に直面したら、ためらわずに殴るだろう。後悔もしないだろうね。それがリアルな感覚だと思う。
監督:ストーリーの鍵となる場面でもあるね。時間の経過と共に、観客はヴァンサンについて知っていく。冒頭から、彼が被っている仮面は1つずつ落ちていくわけだけど、ここでまた1つ重要な事実が明らかになるんだ。
監督:実は、この作品はモノクロで撮りたかったんだ。もちろんプロデューサーに反対された。その時、イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』を思い出した。カラー作品なのにモノクロ映画のような印象を受ける。そこで、撮影監督だったトム・スターンにコンタクトしたんだ。脚本をとても気に入ってくれて、パリに来てくれた。話してみたら、とても気が合って、それで実現したというわけさ。彼は俳優を暗がりの中に置くことを嫌がらないし、コントラストの強い照明も嫌がらない。彼との仕事は素晴らしかった。
監督:フランス、ルクセンブルグ、ベルギー合作なので、3ヵ国で撮るのが条件だった。厨房はルクセンブルグ、ダンス・フロアはベルギー、事務所はフランスと、一軒のナイトクラブのシーンをあちこち飛び回って撮るのはなかなか大変だった。フランスで一発殴られて、ベルギーの床に倒れて、立ち上がったらルクセンブルグ、みたいな感じだね。
シスレー:本当に大変だった。撮る順番はバラバラだし、しっかり記憶しておかないと、つながらなくなるからね。ヴァンサンは冒頭で怪我を負っているから、時間の経過と共に弱っていく。その表現にも気を使ったかな。
監督:トメルは素晴らしかったよ。1つひとつの動きのなかに様々な感情を込めることができる。それがヴァンサンという役には重要な要素だったんだ。
(text=冨永由紀 photo=編集部)
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