1972年9月20日生まれ、静岡県浜松市出身。94年、『愛の新世界』に主演し、ブルーリボン新人賞、キネマ旬報新人賞など多くの映画賞を受賞した。ドラマ『相棒』シリーズ(00〜09年)や大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』(11年)などに出演。主な映画は『わさお』(11年)、『夢売るふたり』(12年)など。
様々な理由から残念な“お蔵入り”となってしまった映画のなかから秀作を発掘し上映させようという趣旨の「お蔵出し映画祭」。その第1回目となる「お蔵出し映画祭2011」でグランプリを受賞したのが、この『しあわせカモン』だ。
岩手を中心に活動しカリスマ的人気を誇るミュージシャン・松本哲也とその母の半生を映画化した作品で、幸せを望みながらも覚せい剤に溺れてしまう母親と、母親を愛しながらも反発してしまう息子の絆が感動を呼ぶ。
主演はドラマ『相棒』シリーズなどで人気の鈴木砂羽。演技派女優として高い評価を得る彼女の熱演が、本作の見どころのひとつでもある。そんな鈴木に話を聞いた。
鈴木:2009年に撮ったきりでお蔵入りしてしまうなんて、そこまでの作品だったのかなと一度は諦めかけたこともありました。でも全力で作った作品だったので、いや、そうさせちゃいけないでしょうと考え直したんです。完成後の作品の行方について、俳優がそこまで思いを強くすることってなかなかないのですが、この作品に関しては「私が思いを強くしなければ、誰がするんだ!」と思ったんです。
諦めない気持ちを持ち続けるのは大変でしたが「この作品が世に出るまでは死ぬ気で頑張ろう」ってマネージャーと2人で決心していました。そして、とにかく、私たちが思いつくあらゆる手段を使って、私とこの映画の知名度を上げようと頑張りました。普通、俳優は撮影が終わると次の作品に向かうものなのですが、『しあわせカモン』に関しては、完成後も「どこまで話が進んでいるの?」「今どうなっているの?」と気にかけていました。しばらくして「お蔵出し映画祭」の存在を知り、絶対に出品しようという話しになったんです
こうしてグランプリを獲得し、劇場公開というセカンドチャンスをいただけたことは本当に奇跡。諦めなくて良かったと思っています
鈴木:やっぱり、主人公の扶美江の、生涯を駆け抜けていく一途さ、ひたむきさに惚れ込んでいたからだと思います。これまで様々な役を演じてきましたが、1つの作品のなかでキャラクターの一生を演じ切ることはなかなかありませんでした。舞台ではキャラクターの生涯を通して演じることもありますが、映画のように、イメージが数珠玉のように繋がっているのとはまた違うので、映画でそれをできるということにやりがいを感じていたんです。
鈴木:結婚したことによって、私もようやく「母も1人の人間だったんだ、1人の女性なのだ」と認めることができました。実はここ数年、私のなかで「母親からの自立」というテーマがありました。母親の存在がずっと大きくて、大人になってからもどうしたら母親が望むような自分になれるのか、女優になれるのか……そんなことを考え、自分が自由になれないことを母親のせいにしていました。でも、考え方も変わった今のタイミングで『しあわせカモン』が公開されることに、どこか運命的なものを感じます。
鈴木:母と子の関係を描いている作品ですが、説教がましい親子映画ではないので、ある親子の日々を描いた物語として見ていただけたら嬉しいです。
撮影中は気付きませんでしたが、完成した映画を見て、親子って一緒に成長していくものなんだと実感したんです。そして子どもは、母親を1人の女性として見られるようになったときに初めて自立できるんだと思うようになったんです。
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