1962年6月27日生まれ。香港出身。テレビ俳優として活躍後、映画に転身。『悲情城市』(89年)、『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(92年)などに出演。90年にウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』に出演。以後、『恋する惑星』『楽園の瑕』(共に94年)、『ブエノスアイレス』(97年)と同監督作品に連続して出演。同じくカーウァイ監督の『花様年華』(00年)ではカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。アジアを代表するトップスターで、そのほか主な出演作は『HERO』『インファナル・アフェア』(共に02年)、『レッドクリフ』シリーズ(08年、09年)など。
ウォン・カーウァイ監督が17年もの歳月を費やして完成させた『グランド・マスター』は、カンフーに人生を捧げた者たちの姿をとらえた愛と宿命の物語だ。カーウァイ監督ならではの映像美と息をのむほどに激しく美しいアクションが融合し、見る者の心を射貫く。
舞台となるのは戦争の足音が近づく1930年代の中国。中国武術の技と精神を磨き上げ次代に継承する宗師(グランド・マスター)の引退を受け、後継者に名乗りを上げた者たちの争い、そして復讐劇が交差する。
主人公は伝説的人物・イップ・マン(葉門)。あのブルース・リーの師としても知られる男を演じたトニー・レオンに、過酷な映画撮影について、そしてカーウァイ監督の情熱について聞いた。
レオン:彼は裕福な地主の一家に生まれ、40歳になるまでは何不自由なく生きてきた男です。やがて経済的な没落に陥り、精神的にも大変な打撃を受ける。家も財産も家族も失い、2人の娘も亡くしました。しかし彼は最後まで屈服しなかったのです。なんて素晴らしいのだろうと思いました。
僕の抱いていたイップ・マン像は、非常に柔和で教養に富み、思慮深い1人の紳士。ただし勝負が始まると、荒々しい動物のような人格に変わる。この2つの面が合わさっている点に魅了されました。
レオン:イップ・マンとブルース・リーを混ぜ合わせた人物として演じました。2人は対照的な道程で同じ目的地にたどり着いた人物です。
ブルース・リーは自著のなかでイップ・マンについてしばしば触れ、カンフー界における最も偉大な人物であると称えています。カンフーとは肉体的なトレーニングや自己防衛のための技術であるばかりでなく、精神鍛錬の手段、引いては生き方そのものであることを、ブルース・リーはイップ・マンの存在によって確信したのです。これは僕が自分でカンフーの訓練をして初めて理解できたことです。
レオン:ええ。その間、2回ほど腕を骨折しました。47歳のときにスタートしたのですが、最初に腕の骨を折ったとき、医者には半年休むようと言われました。でも、その間にせっかく覚えたことを忘れてしまい、また初めからやり直さなければならない。骨のヒビはわずかなもので、大した怪我ではなかったので僕は負傷した腕を包帯で巻いて、2週間後にはトレーニングを再開しました。
しかし、まだ治っていない状態で始めたので、その日にまたもや骨を折ってしまい、2回目の骨折の症状は深刻でした。さすがにこのときは医者の忠告を無視するわけにもいかなくて、結局4ヵ月ほど休みました。4年の間、この2回の怪我を除いてトレーニングはずっと続けていました。
レオン:最初の3年間は格闘シーンしかやっていなかったんです。1〜2年間、とにかく闘うだけの日々。それ以外のシーンは全く撮っていませんでした。実はストーリーすら知らなかったんです。最後の6ヵ月間の撮影期間に突入して初めて、ドラマ的なストーリー展開のあるパートに取り掛かったんです。
これがウォン・カーウァイ監督のスタイルで、彼の映画に出ることは、毎回ひとつの冒険をするのと同じです。彼との現場では、僕はラッシュを見ないんです。ストーリーもはっきり把握しないし、僕以外の役のことも分からない。知らない方がいいんです。進行中の作品に対して、何かアイディアを言いたくなったりしたら困るから。その映画はウォン・カーウァイ監督のものであるべきです。僕の仕事は、彼の思い描く世界を完成するための協力者であることだけです。
レオン:約6ヵ月(笑)。最長で6ヵ月ですね。4年もかけて1本の映画に取り組むなんて大変じゃないかと、みんなが僕に聞いてきますよ。
レオン:雨のなかで闘うシーンは大変でした。10月から11月にかけて、30日間休みなしで毎晩撮っていたんです。夜7時に撮影が始まってしまえば、全身ずぶ濡れになっても翌朝の終了時間まで着替えることもできない。午前0時を回る頃には寒くて体が震えてきます。毎晩それが続くわけです。風邪薬にも手を出しました。どんどん体調が悪化していき、このシーンを撮り終えた後、僕は5日間寝込みました。薬を飲んで、お粥だけ食べていました。咳が出て止まらなくなり、結局、気管支炎にかかっていました。
撮影中、一番辛かったのがこのときですね。足首くらいまである水のなかでの格闘で、衣装で底が布張りの靴が用意されていた。この靴は本当にツルツルと滑るんですよ。雨のなかの格闘シーンで滑る靴を履かされるとは! とにかくあの撮影は本当に寒かったです。
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