1991年6月30日生まれ、東京都出身。2003年にCMでデビューを果たしたのち、11代目の「リハウスガール」に抜擢され注目を集める。その後、ドラマや映画に次々と出演。2007年には映画初主演となる『天然コケッコー』で、日本アカデミー賞新人俳優賞や報知映画賞など、数々の賞に輝き、高く評価される。主な映画出演作としては、『うた魂(たま)♪』(08年)や『きな子〜見習い警察犬の物語〜』(10年)、『箱入り息子の恋』(13年)、『海街diary』(15年)、『ピンクとグレー』(16年)、『22年目の告白−私が殺人犯です−』(17年)など。また、2012年からは舞台にも挑戦しており、活躍の場をさらに広げている。
恋のきっかけをつかめない男と、目が不自由なために過保護に育てられた女。そんな2人が、親同士が子どもに代わってお見合いする「代理見合い」によって運命の出会いを果たす。オーストラリア出身の映画監督・脚本家のマックス・マニックスが持ち込んだこの企画を、映画『無防備』(09年)で世界中から高い評価を受けた市井昌秀監督が映画化した『箱入り息子の恋』。
本作で、市井監督が作り上げた個性的な主人公・健太郎を演じたのは、俳優だけではなく、音楽、文筆業と多彩な才能を持つ星野源。そして盲目の女性・菜穂子を演じたのが、近年、幅広い役柄に挑戦している女優・夏帆だ。映画初主演を果たした星野と、難役を自然体で演じた夏帆に、この作品に込めた思いや、お互いの印象などを語ってもらった。
星野源と夏帆のラブストーリー。一見すると爽やかな恋愛模様がスクリーンに映し出されるのでは? と安易に想像してしまうが、本作はやや趣が違う。「最初脚本を読んだとき、どんどん話が変な方向に進んでいくのが、痛快だなって思いました」と星野は本作に出会ったときの第一印象を語る。
星野演じる主人公の健太郎は、35歳にして彼女いない歴35年、いわゆる童貞こじらせ系男子。「こじらせ系、という言葉は好きではないんですよ。自分とはあまり共通する部分がなかったので、共感はありませんでしたが、僕は健太郎という人間がすごく好きで。とても真面目で、筋が通っているのに、周りの誰からも認めてもらえない人。こじらせているわけではないんです。だから、健太郎をバカにする目線とか、悪意のあるような感じのお芝居にはならないようにしようと心掛けました」。その言葉通り、星野演じる健太郎は、不器用ながらも相手に対して常に真面目で一生懸命に向き合う。「何に対しても一生懸命な人は好きです」と夏帆も星野が作り上げた健太郎像に太鼓判を押す。
一方、夏帆演じる奈穂子は、8歳の時にかかった病気によって現在は目が見えず、過保護な両親からなかなか独り立ちできない女性という役柄。「わたしも自分と照らし合わせて似ていると感じるところはなかったので、これまでの経験をもとに奈穂子に寄せていこうという考えは持ちませんでした」と役に取り組むスタンスを語ったが「市井監督からは、奈穂子の目が見えないところや健太郎の内気な性格を、欠点ではなく癖や個性ととらえてやりたいと聞いていたんです。映画『オアシス』みたいな感じでって。そのあたりは意識して役柄に臨みました」と明かした。
劇中、恋愛に不器用な2人が、ぎこちなく愛を確かめ合っていくシーンが印象的な本作。「付き合って間もない役だったので、微妙な感じを出したいということもあり、あまり現場では話をしませんでした」と撮影を振り返った星野と夏帆。そんな2人だが「前からずっとテレビや映画を見ていて、すごく可愛くて可憐な人なんだろうなって思っていたのですが、実は男気のある人で。媚びないというか、仕事に対する姿勢も男らしく格好いい。より好きになりました」と星野が夏帆への印象を語ると「女らしくしないと……ね」と照れ笑いを浮かべる夏帆。逆に星野の印象を聞くと「撮影前に、星野さんの音楽を聴いたり、お芝居を見ていた時は、どんな方なんだろうと、つかめない部分があったのですが、実際お芝居をしてみて、何でもドーンと受け止めてもらえるような安心感がありました。難しいことを考えなくても現場にいられる。とても演技がしやすかったです」
そんな2人の絶妙な距離感と信頼感がスクリーンを通じて伝わってくることによって、ただの恋愛ストーリーでは終わらず、冒頭で星野が述べたように後半「痛快」な作品へと加速し、非常に多面性を持った映画へと変貌する。「この作品に出演して、お芝居がより好きになりました。今までと違うアプローチ方法で挑んだ、僕にとっては挑戦的な映画でした。これまでは感情を強く出したり、訴えたりするシーンが楽しかったのですが、この作品では逆に一見何もしていない芝居が楽しくて。ぼそぼそとしゃべっているのに、実はめちゃくちゃ心のなかでは怒っているとか……。演じていてとても楽しく、もっとお芝居をやっていきたいって思いました」。
同じく夏帆にとっても、この作品に出演したことで、女優として多くの収穫があったと言う。「これまでは自分の役柄をどうリアルに演じるか?ということを意識することが多かったのですが、この作品を通じて、現実世界の基準で考えるのではなく、映画のなかで成立していればいいのだって思えるようになったのです。当たり前のことのようですが、そこに気づけたことは私にとっては大きかったですね」。
「僕は欲深い人間、そして性欲も強いですね」と突然つぶやいた星野に「なに言ってるんですか!」と笑いながら絶妙のタイミングで突っ込みを入れた夏帆。お互い淡々とした語り口ながら、その空気感は劇中の健太郎と奈穂子さながら、見ている人間を心地よい気持ちにさせてくれる。序盤の静かな展開から、一転する後半について「恋愛映画でありますが、これまでに見たことがないようなむちゃくちゃな展開になります。僕が演じた健太郎、夏帆ちゃんが演じた奈穂子が、色々な障害をぶちのめしていく姿を見たら、きっと応援したくなると思います」と作品の見どころをアピールした星野の口調は、静かながらも初主演映画への熱い思いが感じられた。
(text&photo=磯部正和)
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