1967年6月20日生まれ、アメリカのハワイ州で生まれ、オーストラリアで育つ。『デイズ・オブ・サンダー』(90年)で共演したトム・クルーズと90年に結婚。『誘う女』(95年)でゴールデングローブ賞他数々の賞を受賞。クルーズとの3度目の共演作『アイズ・ワイド・シャット』(99年)はキューブリック監督の遺作。01年の離婚を期にますますキャリアを広げ、『めぐりあう時間たち』(02年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞。その他、『ムーラン・ルージュ』(01年)、『コールドマウンテン』(03年)、『オーストラリア』(08年)、『NINE』(09年)、『ラビット・ホール』(10年)、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』(16年)、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(17年)などに出演。
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』ニコール・キッドマン インタビュー
気品あふれる演技でモナコ公妃を演じきったオスカー女優が、グレース・ケリーの実像を語る
ハリウッドのトップ女優として活躍したグレース・ケリー。ミュージカル映画『上流社会』への出演を最後に、モナコ公妃となった彼女が、モナコ公国の危機に立ち向かう様子を描いた『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』が、10月18日より公開される。
現代のシンデレラ物語とも言われた結婚から6年後、宮殿のしきたりに馴染めず夫婦関係にも軋みが生じ、四面楚歌の状態に立たされたグレースが、彼女にしかできない方法で国を救おうとする姿が感動を誘う。裏では血のにじむような努力を経て、細心の注意を払い、彼女が演じた一世一代の“名演技”とは──?
本作で、グレースの優美さを再現させているのがニコール・キッドマン。この難役に挑んだ感想などを聞いた。
キッドマン:プレッシャーだとは思わなかったわ。素晴らしいチャンスだと思った。私はキャリアを通して自分を厳しい状況に置いてくれる作品を探し続けてきたの。これは、まさにそのひとつだったから光栄に思ったわ。彼女は本当に美しいキャラクターで、話し方、動き方は天使のよう。彼女を演じるのはとても美しい体験だったわ。
キッドマン:私は、これまでにも何度か、実在の人物を演じたことがあるの。アプローチはその都度違ったわ。この役に関しては、当然のことながら映像記録がたくさん残っていて、それを見ることができた。彼女の声を聴くことができるし、彼女について書かれたものもたくさんある。今回、私には、5ヵ月の準備期間があったの。だから、(映像や写真などで)彼女を観察しながら、少しずつ、ゆっくりと、彼女の皮膚のなかに入っていくことができたのよ。同時に、それに縛られてしまわないことも大事だった。つまりそれらは彼女のエッセンスをとらえるための努力だったの。彼女の人生を6ヵ月生きるのはとても美しい経験となったわ。
キッドマン:ヒッチコック映画は、撮影が始まる前に全部見たわ。彼女の演技で1番気に入っているのは、『裏窓』よ。さらに、彼女の映像を山のように見た。なかでも興味深かったのは、彼女がレーニエと結婚して、その後、立ったままジャーナリストと囲み取材をやっている映像ね。そのインタビューで、彼女は、自分や生まれてくる子どもたちの国籍はどうするのかなどを聞かれている。それとは別に、彼女がボートに乗ってどこかに行く映像があるのだけれども、そのボートにはジャーナリストたちも乗っているのよ。一緒にどこかに向かっているの。当時は、ああだったのね(笑)。そのボートには、彼女のペットも家族も乗っている。それがすごく奇妙に見えて、おもしろかったわ。それを見ているだけでも、彼女がいかに尋常ではない人生を送っていたのかが分かるわ。
キッドマン:みんなが彼女について語るとおり、彼女は常に、人生への強い情熱と、好奇心を抱き続けたの。彼女は普通でないことをやってみたわけだけれど、それにしたって、好奇心があったからこそ、やったことなのよ。それから、彼女は威厳もずっと保ち続けたわ。人生の大きな変革期を、公の目にさらされながら経験しているのに、しっかりと威厳を保ち続けることはかなり難しいことだと思うわ。この映画にはフィクションの要素も混ざっているけれども、私は、あの2人(モナコ大公レーニエ3世とグレース・ケリー)が深い愛情でつながっていたと信じているわ。最後まで夫婦だったしね。結婚当初、彼らにはお互いを知る期間が必要だった。2人はお互いを良く知らないまま結婚したのよ。彼女が皇室に入るとかその生活に慣れるとか、自分の国を出てよその国に引っ越すとか、そういう大きなことがたくさん起こるなかで、2人は互いを知ることから始めなければならなかった。私は、彼女に魅了されるわ。もちろん、世界中が彼女に魅了されているわけだけれども。
キッドマン:彼女の選択は賢かった。世の中の多くの女性は同じ選択をすると思うわ。彼女はとても若くしてハリウッドの大スターになり、アカデミー賞も取った。それなのに彼女は、「仕事はもういい。私は結婚したい、家族を持ちたい」と決めたのよ。結婚は、女性に限らず、多くの人にとって大きな決断よね。私には理解できるわ。
この映画の始まりは、結婚から6年が経っている。子どもも2人いる。クリエイティブで情熱的な人間に生まれたら当然のことだけれども、彼女も、何かやりたいと感じ始めている。結婚時、仕事は完全に捨てられると思ったけれども、実際にそれをやってみると、思っていたのとは違うものなのよ。この映画は、そういうところから始まるの。それがとてもおもしろいと私は思う。実際には、(この映画のシーンにあるように)ヒッチコックは実際にモナコに行きはしなかったのだけれど、彼はグレースに電話をして、役をオファーした。そして彼女は、それを受けたいと思った。それは、私にとって興味深かったわ。
私の人生にも、彼女に似たことが少し起こっている。もちろん私は王子様と結婚はしなかったけれども。いえ、違うわね。私も王子様と結婚したわ(笑)。カントリー音楽の王子様と(笑)。
キッドマン:その選択を迫られたことはこれまでにないけれども、もしそうなったら、疑いなく愛を選ぶわ。迷いもしないでしょう。ほかにやることは見つけられると思うし、愛は、1番大事な感情。それなしで生きるなんて考えられない。
オスカーを獲った直後は、私の人生で、とてもきつく長い時間だったわ。そして、奇妙なことに私の場合、なぜかキャリアが最高の状態のときは私生活が最悪の状態にある傾向があるの。いつか、キャリアが最高のときに私生活も最高、ということになればいいけれども、それが起こってくれるかどうかはわからないわね(笑)。それに、子どもをもつと、誰かのために死ねると思うようになる。その感情の持つパワーに勝るパワーはないわ。自分をまったく捨てることができる強さなんだもの。
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