「仕事も、家も、家庭もほしい」ダウン症の青年が主役! “あんまり歌って踊らない”異色のインド映画『アハーン』の公開が決定

#アハーン#アブリ・ママジ#ニキル・ペールワーニー#生活の医療株式会社#秋元麦踏#インド映画

アハーン
(c)Will Finds Way Films
アハーン
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ヒンディー映画初 ダウン症当事者が主演を務める

社員2人の小さな日本の出版社の代表が、国際線の機内上映にて鑑賞したことがきっかけで日本公開が決定したインド映画がある。タイトルは『アハーン』。ムンバイ出身ニキル・ペールワーニー監督の長編デビュー作であり、ダウン症を持つ主人公アハーン役を自身もダウン症当事者であるアブリ・ママジが演じたことでも話題になった作品だ。

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映画の主人公は、ダウン症をもつ青年アハーン(アブリ・ママジ)。愛情深い両親と共にインドの大都市ムンバイに暮らし、何不自由のない日々を過ごす彼だったが、両親の意向で外出を制限されていた。「自立したい」「仕事を見つけたい」「素敵な女性と結婚したい」という切実な思いを募らせたアハーンは、ひょんなことから、気難しい性格と潔癖症のせいで妻に見限られた中年男性オジーの家を訪れることに。オジーは妻と会うためにアハーンを利用することを思いつき、自由な外出を願うアハーンとの間の奇妙な協力関係が始まることとなるのだが……。

(C)Will Finds Way Films

本作最大の注目点は、ダウン症を持つ主人公アハーン役を演じるアブリ・ママジである。彼のキャラクターと存在感は、作中でひときわ輝きを放っている。彼自身ダウン症当事者であり、本作で俳優デビューを果たした。監督のニキルは、本作のリサーチで障がい者のためのデイケア施設を巡っていた際、俳優を夢見るアブリと出会う。

初めは当事者キャスティングを想定していなかったが、二人で時間を過ごし、映画への情熱を共有するなかで、「“アブリはダメだ、彼には無理だ”って誰が言えるんだろう、挑戦させもせずに?」という想いが生じ、アブリを主演に抜擢するに至った。この偶然に導かれた出会いによって、障がいのある人々が直面する現実を真摯に見つめながらも希望とユーモアを忘れずに、ダウン症青年の日常をストレートかつコミカルに映し出す、“あんまり歌って踊らない”異彩のインド映画が誕生した。

(c)Will Finds Way Films

社員2人の出版社が映画配給に挑戦するワケ

配給を担うのは、医療・健康領域の本を中心に扱う出版社「生活の医療株式会社(通称:生活の医療社)」。これまで映画の配給とは縁のなかった、社員2人の小さな会社。生活の医療社代表・秋元麦踏(あきもとむぎふみ)が、国際線の機内上映にて日本未公開であった本作を鑑賞し感銘を受け、多くの人とこの作品を共有したいと、“翻訳書を出すようなつもり”で日本での配給権を取得。様々な縁が実を結び、日本公開に至った。

■配給を担当する生活の医療社・秋元麦踏のコメント

遡ること3年、羽田に向かうコロナ禍で閑散とした国際線の飛行機の中で『アハーン』を見た。「ヒンディー映画初のダウン症当事者主演作品」というような触れ込みが気にはなったが「へー、こんな映画あるんだ」という程度で、たまたまと言うほかない出会いでした。どっこい80分後には、目を腫らし鼻水を垂らしながら、後ろの座席の人に「着陸までの時間ギリギリですが、是非『アハーン』という映画を見て下さい」と熱っぽく売り込んでいました。配給もその延長にあります。
当時、この映画を共有したいと思った「熱」を改めて言語化するならば、作中の対話劇の臨場感から来るものだった様に思います。アハーンが口にする、ごくごく〈ふつうの願い〉に、心の中で〈現実を知ったかぶった否定〉でツッコミを入れる自分がうっかり引きずり出されていたのです。隠したいはずの偏見を言葉ではなく(やさしく、時にコミカルに)あぶり出されるような体験を共有できるのではないか。そういう「熱」です。

右も左も分からないままに見切り発車をしてしまったにもかかわらず、劇場公開に至ったのは、作品の力はもちろん、偶然のツテに恵まれたおかげにほかなりません。翻訳書を出すようなつもりで配給権を取得してしまってから、友人の友人であるVLVT Filmsの松岡優馬さんに出会い、ラビットハウスの増田さんを紹介してもらい、ようやくこのプレスリリースの手順を知った次第です。

気難しく潔癖症な中年男性オジーとの交流をきっかけに、外の世界へ飛び出していくアハーンはどこに向かうのか。公開が待ち遠しい作品だ。

『アハーン』は2025年9月5日より全国順次公開。

アハーンとオジー、2人の対照的なキャラクターが並ぶポスタービジュアルを見る。

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