昼は娼婦、夜は良妻、背徳の人妻をカトリーヌ・ドヌーヴが気高く演じたエロスの名作
#エロい映画#カトリーヌ・ドヌーヴ#ルイス・ブニュエル#昼顔
(C)1967 STUDIOCANAL - Five Film S.r.l. (Italie) - Tous Droits Réservés
森の奥で妻は両手を縛りあげられ……。ルイス・ブニュエル監督作『昼顔』
いまや『昼顔』と聞くとどうしても上戸彩と斎藤工の不倫ドラマを連想してしまうが、元祖はなんといっても1967年に製作されたカトリーヌ・ドヌーヴ主演のフランス/イタリア合作映画である。『昼顔』は、第28回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した。ジョゼフ・ケッセルの同名小説が原作で、監督を務めたのはスペイン出身のルイス・ブニュエル。サルバトール・ダリと交友があり、共作でシュルレアリスムの傑作と称されるショートフィルム『アンダルシアの犬』を製作したことでも知られている。
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昼顔とは、カトリーヌ・ドヌーヴ演じる貞淑な妻が昼間に娼館で働く時の源氏名である。医師の夫に内緒で昼間だけひっそりと咲く愛欲の花、昼顔。人に言えない二重生活を送る人妻を描いた映画はいったいどのくらいエロイのか、女性目線で紐解いてみたい。
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森の中を2頭立ての馬車がシャンシャンと鈴を鳴らして優雅に走っていく。車上では美男美女のカップルが率直に甘い愛の言葉を交わし合う。だが、「不感症さえ治れば君は完璧だよ」という男の不躾な言葉で場の空気が一変、口論へと発展する。
言い争いの末に激高した男は、自分の妻である女(カトリーヌ・ドヌーヴ)を2人の御者とともに馬車から引きずり下ろし、森の奥に連れていく。両手を縄で縛りあげて木の枝に括りつけると、背中のファスナーを下げてブラジャーのホックを外し、御者に鞭で打つように命じるのだった。なんだなんだ? のっけからいきなりSMプレイか? と度肝を抜かれるが、この映画では時折、夢や妄想と現実が交錯しながら話が展開してゆき、観客はその境界線を見失って翻弄されることがある。さすがダリと一緒に映画を作った男の作品、という気がしなくもない。
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夫との凡庸な行為に興味はないが
ドヌーヴ演じるセヴリーヌには、イケメンでやさしい医師の夫ピエール(ジャン・ソレル)がいる。美人で裕福で夫婦仲もよく何一つ不自由のない生活を送っているように見えるのだが、どうやら夜の夫婦生活だけは例外のようだ。夫の要求を拒み続けるセヴリーヌは愛の行為に消極的な女性かと思いきや、どうやらそうでもないらしい。
既婚者のとある友人が昼間娼館でひそかに娼婦として働いている、という噂話を聞くと、そのことが頭から離れなくなってしまう。そしてついにいてもたってもいられず自ら娼館のドアを叩き、「昼間だけ働かせてほしい」と直訴するのであった。そんなセヴリーヌに、女主人は「昼顔」という源氏名を与える。セヴリーヌは夫婦間の平和で凡庸な行為に興味がないのであって、心の底では貪欲に刺激的な愛の交わりを求めているらしい。
曲者の客たちを相手に快楽に身をゆだねる
いつも仕立ての良い服を着て見るからに「いい所の奥様」といった風情のセヴリーヌは、娼館とはいたく不釣り合いである。でも彼女にとっては、同僚の娼婦も羨むハイブランドの服を脱ぎ捨てて見ず知らずの男に身を任せるのがこの上ない悦びなのだ。ドMの産婦人科医、風変わりな巨漢のアジア人、ガラの悪いチンピラ風のスペイン人など訪れる客はいずれも曲者ばかりであるが、彼女は客たちとベッドを共にすることを大いに楽しんでいた。
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昼間は貪欲に快楽をむさぼり、家ではつつましやかな良妻を演じるセヴリーヌ。依然として夫の要求は拒み続けているが、やさしい夫はそんな妻を一切責めようとはしない。悪いことというのはいつかバレるものであるが、背徳の二重生活がほころび始める日は果たして来るのか来ないのか。
モードに身を包んだドヌーヴが美しい
下着姿やセミヌードを惜しげもなく披露して体当たりで娼婦役を演じるカトリーヌ・ドヌーヴも見ものだが、それを凌駕するくらい当時の最新モードに身を包んだ彼女の着こなしが素晴らしい。
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エロスがテーマの映画であるが、ともかく全編を通してお洒落で品がある。そして鬼才ルイス・ブニュエルによる、不可解ながらも時に哲学的で芸術性を感じる作風も印象的だ。『昼顔』は、単なるエロでは括れない名作と言えるだろう。(文:春蘭/ライター)
『昼顔』はPrime VideoのシネフィルWOWOW プラスで配信中
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