1971年9月8日生まれ、イギリス出身。『ラブ・アクチュアリー』(03年)などに出演後、『銀河ヒッチハイク・ガイド』(05年)に主演。BBCドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』(10年〜)で人気急上昇。『ホビット』シリーズ(12年、13年、14年)では主人公ビルボ・バギンズを演じる。その他、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(07年)、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(13年)、人気ドラマ『FARGO/ファーゴ』(14年〜)などに出演。
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ピーター・ジャクソン監督が情熱を傾けたスペクタクル・アドベンチャー『ホビット』シリーズ。このなかで主人公ビルボ・バギンズを演じたのが、英国人俳優マーティン・フリーマンだ。本シリーズをはじめ、ドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』、『FARGO/ファーゴ』と立て続けに大ヒット作に出演し注目を集めている。
シリーズ完結編『ホビット 決戦のゆくえ』DVD&ブルーレイ発売にからめ、作品への思い、そして最近の人気ぶりについての感想などを語ってもらった。
フリーマン:だいぶ変わった。でもその変化を歓迎しているよ。こうやって何枚もの皿が同時に回ってくれている状態はとてもラッキーなことだと思っているよ。こんなことになるとは思ってもみなかった。ということで、生活は変わったね。前よりも賑やかになった。街中で(役名の)「ビルボ!」と声をかけられることもたまにあるよ。
フリーマン:奇妙と言えば奇妙だし、そうでもないと言えばそうでもない。『SHERLOCK』で共演したとしてもしなかったとしても、今回はいいキャスティングだと思ったはずだし、そんなに違和感はなかったよ。「どうも共演する縁のようだ」とは思ったけどね。でも撮影中は一回も顔をあわせることがなかった。自分が出演するシーンでも、セリフを読み上げる他の誰かを相手にして芝居していた。だから違和感はなかったが、よくよく考えてみると、周りからは「この作品でもまた共演か」と思われるのだろうね。そう考えると変だ。
フリーマン:3作分のストーリーが全部頭に入っていて、それを自由自在にさばけるんだからすごいもんだよ。どの話の筋がどうなって、5シーンほど進んだらどうなるか、はたまた「ここにこのシーンを挿入したら、4時間後にはこれこれこういう意味を持つようになる」などと、すべてを把握していることに驚愕した。なんとも形容できないのだけど、とにかくあの壮大な宇宙が全部頭の中に入っているんだ。ものすごい仕事だと思う。
また睡眠時間がわずかで、多大なストレスを抱えていながらも、それを表に出さず上手く対処する。監督としてどうこう以前に、そういう人間性にも圧倒された。なんで神経衰弱にならないのだろうと思った。
フリーマン:そうだね。自然の流れでそうなる。友が苦しんでいるのを見ているビルボを演じる時に可愛く純情に演じるわけにはいかないよね? それをやってしまったらひどいことになる。つまり状況に反応し、それにつられるのが芝居。私は気難しくも暗くもないと思うが、何でもかんでも「素晴らしい!」と思うタイプでもない。ダークな方により傾いてしまうことは確かだ。誰かに止められないと、スッとそちらへ滑ってしまう。でもユーモアも好きだし、喜びを演じるのも好きだ。とはいっても二次元的に演じるのはいやだね。「怒りん坊を演じるのだから、最初から最後まで不機嫌でいよう」という人もいるが、人は実際そうじゃない。
突き詰めて言うなら、あなたも私もみんなも、誰一人例外なく不機嫌になったり、悲しくなったり、嬉しくなったり、楽しくなったりするものだ。役者としての仕事はそれを反映させることだし、ビルボが経験するあれこれにはダークなことも必然的に入ってくる。ビルボの置かれた状況から考えると相当ダークだ。だから彼にとってとてつもなく恐ろしい事態だろうが、そういうのは探求しがいがある。仮に脚本に書かれていなかったとしても、役者としてそういう要素は入れるかもしれない。やっぱりそっちのほうが演じていて興味深い。このシリーズは丹念に構成されており、厚みがあるからそういう部分もきちんと書き込まれているが、いずれにしても役者として少し厚みを持たせておきたいものだ。そうしないと自分自身を納得させることができない。
フリーマン:ホッとしたが、悲しみもこみ上げてきた。意外だったね。感情的になったり感傷的になったりすることも多いが、仕事を終えてそうなることはあまりない。どんなに楽しい仕事でも“終わらせる”のが好きだからね。だから終わらせたいと思うか否かは、楽しいかどうかのバロメーターにはならない。楽しいけど完成させたいという気持ちは、過去のどんな仕事に関しても言えることだね。それが現実だからだ。「一生ビルボでいろ」なんて言われたら悪夢だよ。ジョン・ワトソンだって嫌だ。一生かけてやりたいことではないね。
最後の日はリチャード・アーミティッジとドワーリンに扮するグレアム・マクタヴィッシュとの撮影だったのだが、私のほうが彼らより1日早く発つ予定だった。彼らにはもう少し撮影しなければならないシーンがあってね。グレアムが「共演できて楽しかったよ」と喉を詰まらせたので、私も泣きそうになった。2年ぶりの感動だったよ。その時に、このしょうもなく頭のおかしな仲間と長い時間を過ごしてきたということに改めて気付かされ、少し感極まった。こういうことは二度とできないだろうとしみじみ思った。まあ、もう一回やれと言われてもやりたくはないけれど、人生の大きな転換点にはなったし、これに関わった人たちも皆そうだと思う。
撮影現場にいてもそこから離れたところにいても、この作品は生活の大きな一部を占めるものだったことは確かだ。私は90歳になるまで『ホビット』シリーズを語り継いでいくことになるよ。忘れることはないだろうね。それにしても最後の日にホッと力が抜けてあのように感極まったのは我ながら意外だ。さようならを言いに来るみんなも目を潤ませていたよ。
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