1951年9月5日生まれ、アメリカ合衆国のペンシルベニア州出身。コメディアンを経て『ラブ IN ニューヨーク』(82年)で映画デビュー。ティム・バートン監督の『ビートルジュース』(88年)で人気を得て、『バットマン』(89年)に主演。続編『バットマン リターンズ』にも出演した。『マイ・ライフ』(93年)、『アウト・オブ・サイト』(98年)などに出演、『紅の豚』や『カーズ』(06年)、『トイ・ストーリー3』(10年)などで声優もつとめている。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』マイケル・キートン インタビュー
俳優は不安を抱えた職業!? 元ヒーローが人気稼業の大変さを語る
かつてヒーロー映画に主演し、トップスターとなった男。今ではすっかり落ちぶれてしまった彼が、ブロードウェイの舞台で再起をねらう姿を描いたのが、第87回アカデミー賞で作品賞ほか主要4部門を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』だ。
本作で、主人公リーガン・トムソンに扮しているのはマイケル・キートン。かつて『バットマン』でヒーローを演じたものの、最近では目立った活躍がなく、トムソン役は自身を彷彿させる部分もある。そんなキートンに、作品の見どころなどを語ってもらった。
キートン:実はこのキャラクターは他に比べて、共感を覚えなかった。おかしなアイロニーだということは分かっているが、彼が私と同じ職業についていること、それに彼も私もスーパーヒーローを演じたことがある点を除いて、彼には親しみを感じない。ただ、それは簡単に飛び越えることができる障害の一つにすぎなかった。「オーケー、わかった。先へ進もう。このキャラクターについてもっと大切なところはどこだ?」と考えるだけだから。この映画についての説明を読んだ時には、「この映画が何を言おうとしているか、きちんと説明する必要がありそうだな」と思った。でも、皆がこの映画について語る時には、「本作にはとても多くのものがある」と言うだろう。
この男のどこが気に入ったか? 彼は哀れで情けないし、大きな不安を抱えた状態だが、こういう部分は演じがいがあると思った。しかも、彼は人生のどん底にいるが、最後には立派なところを見せる。これは本当のことだ。彼についてはどんなことでも言えるが、最後には、勇敢なところを見せるから、ドン・キホーテのような部分が出てくると思う。
キートン:他の役者の意見を聞いてみなければならないが、役者というのはこういうことをやっているが、台本を初めて読んだ時には、もしかすると、それほどハッキリとは分かってはいないのかもしれない(笑)。台本を手にして読み進みながら、興味を惹かれていく。ページをめくってみると、彼はナオミ(・ワッツ)と話し、ザック(・ガリフィナーキス)に芝居についての話をする、それから彼は外へ出て行く。そこで笑いながら、「これは笑えるぞ」と思い、「よし、ここではどうするか良い考えがある」と思う。そしてページをめくると、彼は下着姿で締め出され、タイムズ・スクエアを走り抜ける。次のシーンへ読み進み、「これは面白そうだ」と思う。撮影が始まってそのシーンになっても、洋服を脱ぐことになるなんて特に考えてもいない。途中まで演じてみて、「あれ、ちょっと待てよ。こんなクレージーなことだったなんて思いもしなかった」と気づくんだ。
でも、「監督とここについて話をしなければならない」とは一度も思わない。自分がやりたくないなんて発想はしないからだ。そんなことは考えもしない。すごくおかしな話だ! でも演じてしまう! そこを走り抜けながら、人々に見られて、「待てよ。私は下着姿で、黒のソックスをはいて、タイムズ・スクエアの人込みを歩いている。どうなっているんだ!」と思うんだ。「私の思考過程はどうなったんだ?」と。台本を読んだんだから、「こんなことはやらない」と言えたはずだ。でも、実際は、一度も考えもしなかった。役者に聞いてみれば分かるが、ほとんどの役者が同じように答えるだろう。ふと気がつくと、演じてしまっている。「困ったな。あのシーンをやらなければならない……」なんてことは思いもしない。「あのシーンは今日の撮影だ」と思うだけだ。役者というのは、一体どういう仕事なんだろうね? どれだけ狂っているんだろう? 実際、このシーンよりもずっと心配していたシーンが他にいくつかあったからね。
キートン:ああ、いたよ。エキストラもいたが、数は知れている。
キートン:いや、違うんだ。彼の映画はたぶん、全部見ていて、とても気に入っていたよ。「こういう映画をどういう人たちが作っているんだろう?」と思った。
エージェントは監督が会いたがっていると電話してきたが、「この映画に出るのは無理でしょう。あなたはもう2本も映画を抱えているんだから」と言ったが、私は、「待てよ、彼の作品はとても好きなんだ」と答えた。エージェントは、「ハードすぎる。今のままで行くべき」と言った。私はちょっと考えて、「いや、この映画に出演する方法を考えなければ」と答えた。
その後、イニャリトゥ監督と夕食を一緒にしながら話した。お互いを知る必要があったから、彼がいくつか質問をし、私も彼に質問した。それから彼が映画の説明を始めたが、全部は説明しきれなかった。彼が「家まで車で送ってもらえるか?」と言った。彼の家はうちの近くだったからだ。私が「もちろん」と答えると、彼は「ちょっと寄ってくれ。台本を渡すから」と言うんだ。そして「いいから読んでみてくれ」と言った。彼は自分がどういう撮り方をするつもりか、映画の内容やキャラクターについて説明してくれた。まだ私が出演するかどうかも、彼が作品を作るかどうかもわからなかった。そして私は「分からないが、どうなるか様子を見よう」と思った。
それからも監督とは映画の話を続けていた。私は知らなかったことだが、彼は本作の資金を集めるためにとても苦労したんだ。この映画の話を聞いた多くの人が、「いいね、資金を提供するよ」とは言いそうにないタイプの作品だからね。だから、監督が映画製作にこぎつけるまでにはちょっと時間がかかったが、彼は誰にも言わないまま企画を進めていた。土壇場になって話がまとまって、彼はキャストを集めた。次の瞬間にはリハーサルを始めていて、それ自体も良い経験になったが、こうして映画作りに入ったんだ。
キートン:すこぶる面白かった。というのは、次から次と課題に直面したからだ。私は必ずしも役者の仕事が好きじゃない。まったく役者をやる気にならない時期がかなり長く続いた。自分のやっていることが面白いと思えなくなっていたんだ。何も脚本を読まなかったし、特に面白いと思うようなオファーもなかった。なんとか外に出て、ちょっとしたことはやっていた。何か良い話が来るまで、ある程度は関わりを持っていなければならないからね。経済的には何とかなったから運が良かった。私は半分スコットランド人だから、お金の管理は得意なんだ(笑)。
キートン:ああ。でも、金のために仕事をすることはありがちだ。よく分かるよ。役者として生活をするのは本当に大変なことだからね。とにかく、私は自分がドキッとするようなもの、あるいはワクワクするような作品に出たい。良い題材、役者、監督と一緒に仕事をしたいと思うが、一番重要なのは監督だ。なんといっても、アレハンドロは名監督の1人だからね。
キートン:ああ、そうだ。注意していないと、毎日不安が大きくなっていくような職業だ。本質的に、これは恐怖に基づいた職業だ。役者の中には、舞台の上だけが心地よいと感じるような人もいる。マイケル・ジャクソンについてそういう話がよく取り上げられていたと思う。彼がくつろげたのは舞台の上だった。他はどこもしっくりこなかったんだ。
キートン:私が長いこと離れていたのは、すばらしい作品のオファーがなかったからなんだ。オファーを断っていたが、オファーが押し寄せていたわけでもない。それが現実だし、それが私の仕事だ。そうなることは前から分かっていた。良い時もあれば悪い時もある。私の息子(ショーン・ダグラス)は、今はとても成功しているが、ショーンには「準備しとけよ。こんなふうになるぞ。脇道にそれるだろうし、人気が落ちることもある。“時の人”になることもある。そういう道のりだ。自分で選んだんだから、それでいいんだ」とね。父としては、息子には役者を選んでほしくなかった。彼はいつでも独創的な子だったから嬉しいし、彼がやりたいことをやっているから喜んでいるが、「安定した収入を得られるといい。彼がうまくやれるかどうか、すべてうまくいくかどうか、彼が家を持てるかどうかと心配しないですめばいい」とも思ってしまうんだ。
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