1965年9月5日生まれ。東京都出身。85年、映画『ビー・バップ・ハイスクール』で俳優デビュー。翌年『あぶない刑事』シリーズに出演し、人気を博す。02年公開の韓国映画『ロスト・メモリーズ』では「韓国のアカデミー賞」とされる"大鐘賞"助演男優賞を受賞。映画化もされたドラマ『チーム・バチスタ』シリーズ(08〜)の官僚役も印象深い。近年は映像のみならず舞台でも活躍している。
『さらば あぶない刑事』舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル インタビュー
『あぶ刑事』夢の4ショットが実現!
1986年にテレビドラマが製作されて以来、30年の歳月が流れた『あぶない刑事』が劇場公開版『さらば あぶない刑事』として約10年ぶりに帰ってきた! 題名に“さらば”と入っているように、タカ&ユージが定年退職まであと5日というところから物語はスタートする。
『あぶ刑事』ファンなら涙を流して喜ぶような名シーンが盛りだくさんの本作。「ファンの期待に応えられるようなものを作りたい」という思いがぎっしり詰まったラストにふさわしい映画が、いよいよ公開を迎える。舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオルという超豪華4ショットが“あぶ刑事愛”を語りつくす。
舘:俺は単純に嬉しかった。もう1回遊べるのかってね。今回は原点に戻りたいという気持ちがあったので、やるならそういう作品にしたいって思っていましたね。
柴田:僕も嬉しかったですね。一方で10年ぶりだったので、ファンの期待に応えたいという気持ちも強かった。最後という思いが強かったので、色々な要素を入れたかったし、その話し合いができたのが良かった。いい作品になったって思っていますね。
仲村:またやるのか、またやれるのかっていう気持ちでしたね。
柴田:またやるのかって、いま面倒くさそうに言ったね?
舘:それが本心なんだな。つい本音がでちゃったな。
仲村:いやいや、少し出ましたけれど、って冗談ですけど(笑)、『あぶない刑事』は他の仕事と話の来かたが違うんですよ。「やりますか?」ではなくて、「やりますから」という伝達な感じ(笑)。今回は、「またやれる」っていう嬉しさと「またやるのか」っていう複雑な気持ちでしたね。
浅野:私も嬉しかったですよ。でも10年間も時間が経過したって感じがしてなくて、昨日、一昨日「お疲れ様」って言っていた気分だったので、あまりかしこまった感じではなかったですね。
舘:全然なかったな。
仲村:僕が一番心配だったのは、『あぶ刑事』ファンとしては舘さんや恭兵さんが「あれ?」って思うぐらいお年を召されていたら残念だなって思っていたんです。でも撮影初日にお2人にあって挨拶したとき「やった! まだ格好いい」って思えたので、心配は消えました。現場は、自転車って何年乗らなくても乗り方を忘れないのと同じで、この中に入ると、すっと自分の居場所を見つけられるんです。
柴田:要するに、トオルにとって俺たちは過去の人って認識だったんだね。
舘:そういうことなんだな。
仲村:いやいや、そういう意味じゃないですよ(苦笑)。
仲村:このお2人の前でそういう話はやめてくださいよ。
舘:トオルって尊敬されてるんだ。それ聞いちゃうと笑っちゃうよね。
柴田:でも他ではブイブイ言わせてるらしいよ。
仲村:……。
舘:恭さまが銃の打ち合いをしている時に「残りの敵の数と、残った弾の数がまったく合いません!」っていうセリフがあるんだけれど、あれが好きなんだよね。あのセリフは俺が書いたんだけど、セリフが良い悪いじゃなくて、あの状況のなか、柴田恭兵がああいう雰囲気でいうのが好きなんですよ。切羽詰まった状況で、俺にいうでもなく、カメラに向かって言ってるわけでもない。目が宙に浮きながら笑っているのか必死なのか分からない。絶品ですね。
柴田:僕はハーレーで鷹山が現れるシーンですね。あれを見ると「ゾワァ」って鳥肌が立つ。舘さんでよかったなって。もしあれが舘さんじゃなくてトオルだったらどうしようって思っちゃうよ。
浅野:2人が私からジャンプしながら逃げていく姿。あれをみると『あぶない刑事』だなって思っちゃうんですよね。
仲村:今作の冒頭で、恭兵さんがステップを踏む姿を見てガッツポーズしたくなりました。ほかにもいろいろありますが、やはりエンドロールは、見ていて涙が出そうになりました。
舘:最初『あぶない刑事』が始まったときは、やりずらい俳優だなって思っていたんですよ。何でこんな芝居するんだろうってね。自分の中には拒否感があった。でもしばらくやっていくうちに、その気持ちって実は憧れだったり嫉妬なんだって気づいたんだよね。そこに気づいてからお互いのテリトリーがはっきりしてきたんですよ。自分がこういう芝居をしたいと思っても上手くできない。でも恭さまがやると輝いて見える。そういう中で尊敬が生まれてきた。僕の中で、とても影響を与えてくれた俳優ですね。コミカルな軽い感じの芝居の基本になっているのは柴田恭兵なんです。
柴田:舘さんは、とても懐の深い、器の大きい人なんです。
舘:女には「器小さいね」って言われるんだけどね(笑)。
柴田:舘さんと一緒にやっているとき、アドリブとかも含め、リアクションがとてもチャーミングなんです。温かい人なんだなって。自由に泳がせてくれるんです。現場で温ちゃんやトオル、ベンガルさんたちといつも楽しくさせてくれたのは、舘さんがいたから。すごく素敵な出会いでしたね。役者としても男としても格好いいし、ゴルフもうまいし(笑)。うちの家族も舘さんのファンなので別の作品も見ているんです。またいつでも舘さんが「やるぞ」って言ったら駆け付けるぞって気持ちですね。
仲村:僕が『あぶない刑事』に参加したときって、俳優を始めてまだ1年もたっていない時期だったんですね。それから30年たって、自分の中で大切だなという考え方、例えば「役者は現場にいるとき以外の時間をどう生きるかが大事」だったり「現場に来たとき、どれだけ考えて感じるか」などは、全部『あぶない刑事』の現場で舘さんや恭兵さんからもらったことだと思うんです。俳優としての僕は、舘ひろしと柴田恭兵のハーフで、浅野温子という人の洗礼を浴びて育ったって感じですかね。
浅野:(浅野演じる真山)薫という役ができたのは、2人のおかげなんです。刑事部屋のみなさんが「温ちゃんはこういう芝居がしたんだよね」って言ってくれていて、その通りのはじけた感じの芝居をしたのですが、主役の方たちが、ああいう芝居を許してくれなければ成立しなかったと思うんです。私の好きなように野放しにしてくれたので、薫のキャラクターができあがったと思っています。
柴田:席外したほうがいいかな?
柴田:外す間もなく「ない」って言いそうだよね(笑)。
仲村:真面目な話、何年か前に舘さんには話したことがあるのですが、ある人がその部分を分析しているんですよ。「なぜ格好いいのか、それは格好悪いことをしないから」って。まさにお2人はそうなんです。格好悪いことをしないってすごくストイックな生き方。弱音を吐いたり「疲れた」と言ってしゃがみこんだりしたのを見たことないんです。長いキャリアを通してずっとそうされている。本当に格好いいです。
浅野:2人ともやっぱりすごく優しいんですよ。優しい男って強いんです。そして強いから優しくなれる。今の世の中って優しさと強さをもった人がいないから、男の人も女の人も憧れるんじゃないかなって。男の人は強いから優しくなれるって本能的に分かっているだろうし、女は優しい人を無条件にかぎ分けるんだよね。
舘:わりとNGなしでセリフが言えたね。俺も成長したなって(笑)。あとはそれぞれのテリトリーがより明確になった。それぞれが何をすればいいのか自然と分かってきたよね。30年やってきた賜物かな。
柴田:30年たったからこそ、余計元気になったような感じがしましたね。普通だったら力が衰えたりするんだけど、逆にみんなパワーアップしてる。すごいことだよね。
仲村:村川(透)監督を含めほとんど現場は変わっていないんですよ。30年たったとは思えない。あえていうなら、横浜の赤レンガ倉庫の周りがだいぶ変わったり、中華街のいつも止めていた駐車場がなくなっていたりという環境ぐらいですね。あとは、30年前は恐れ多くて、舘さんや恭兵さんの前でこんなにしゃべれませんでしたね。
舘:嘘だろ! しゃべってたよ。30年たつとこういう嘘がつけるようなるんだな(笑)。
仲村:……。
浅野:鷹さんと勇次さんが定年って聞いたり、トオルが近藤課長のポジションにいたり……そういう部分は時代を感じますよね。私なんか刑事部屋から追い出されて重要物保管所なんて場所に異動してましたからね。時を感じるしかないですよね(笑)。
舘・柴田:う〜ん。難しいな……。
仲村:今、思い浮かんだのは「ゲキテキ」という言葉。いわゆる「劇的」でも激しいという漢字の「激的」でもいいんですが。お2人が出会ったこと、ここまでバランスが良いというか化学反応しあうコンビであること、そして僕もその周りにいられたことは「ゲキテキ」だと思います。
舘・柴田:じゃあ、それで(笑)。
(text:磯部正和/photo:中村好伸)
(浅野温子=スタイリスト: 西ゆり子/衣装:ISSA、SAINT NICOLAS、VERITE、グロッセ)
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