1982年生まれ、岐阜県出身。2003年に俳優デビューし、NHK連続テレビ小説『カーネーション』(11年)で脚光を浴びる。その後は映画・ドラマを中心に多数の作品に出演。主演作『そこのみにて光輝く』(14年)で第88回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞など数多くの賞を受賞。『日本で一番悪い奴ら』(16年)で第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、『閉鎖病棟–それぞれの朝−』(19年)で第43回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。主な主演作に『新宿スワン』シリーズ(15年、17年)、『ピース・オブ・ケイク』(15年)、『怒り』(16年)、『64−ロクヨン~』前・後編(16年)、『パンク侍、斬られて候』(18年)、『楽園』(18年)、『影裏』(20年)、『ホムンクルス』(21年)など。藤井道人監督の映画『ヤクザと家族 The Family』(21年)とドラマ『アバランチ』(21)にも主演。
数々の違法捜査に関与し、自ら覚醒剤の密売にも手を染めた“北海道警のエース”が引き起こした「日本警察史上、最大の不祥事」。実際に起きた事件をもとにした激ヤバ映画『日本で一番悪い奴ら』が、6月25日から公開される。
「正義の味方、悪を断つ」が信条だった真面目な青年は、いかにして裏社会と結託していったのか? でっちあげ・やらせ逮捕・おとり捜査・拳銃購入・覚せい剤密輸などあらゆる悪事に手を汚していく主人公・諸星要一を演じた綾野剛に、本作について語ってもらった。
綾野:その時、その時を瞬間的に生きている方だと思ったので、僕も撮影現場でその瞬間ごとに演じることで、あまり気負わずに諸星という人間の長い歳月を生きられたんじゃないかと思っています。具体的にその時代を生きるために衣装などをいろいろ相談して、髪型も決めていきました。
綾野:映画としてその題材でフィクションを製作しているわけですから、その中で大事なことは1人の人間がいて、人との出会いと別れを繰り返して、今もまた新たな一歩を踏み出しているということなんだと思います。そうやって人は成長していくんだなということをきちんと表現するのがこの映画にとって一番大事なことだと思っているんです。
綾野:獅童さんとは、今まで何度か共演させていただいて、一緒に飲みに行ってもらったりもしているんですが、今回は「剛が主役をやるんだったら出るよ」と男気でやってもらったところもあるんです。現場に来たら黒岩をしっかり作ってこられていて、本物なんじゃないかって思わせる説得力がありました。役を生きる説得力が獅童さんは根本的に違うと思いました。その説得力を間近で改めて拝見させて頂くと、やっぱりカッコイイですよね。
綾野:太郎役のYOUNG DAISさんは同い年なんですが、彼の人懐っこさや礼儀正しさには感銘を受けました。彼はヒップホップグループをやってますが、「これ芝居なの?」っていうぐらいナチュラルに太郎を演じていて、アーティストの良い部分を最大限に生かして太郎を演じていたのが、僕にもとても影響しました。本当に、太郎なくして(主人公の)諸星はなかったのでは、と思うほどです。デニスの植野さんも僕と同い年ですが、ハーフということもあって役柄的にもぴったりでした。面白く見えることを本人はいたって真剣にやっているから、怒ってる芝居自体が面白い(笑)。芸人さんということはもちろんありますが、そこを置いても役を魅力的に演じてくれました。
綾野:最初は確か監督のほうから「今日もお疲れさま」って握手して頂いたんですけど、途中からは「無事に今日撮り終えてよかったね。またひとつのシーンが撮れて歴史を刻んでいるね」という意味で握手させてもらっています。と言うのも、これだけ強度のある作品は、今の時代、コンプライアンスのこともあって簡単に撮れないと思うんです。でも、映画でできる表現をあきらめずにやっていた時代があって、僕もそういう映画を見て育ってきたので、今それを堂々とやりきるには、それ相応の覚悟がないとできないと思っているんです。その覚悟を毎回握手して確かめ合っているんだと思います。
綾野:本当にそうです。間違いなく。僕にとっての代表作になりますし、表現方法も含めて、なかなかできないことをやらせてもらっています。理解をいただいた自分の周りの関係者や普段からお世話になっている方々にも改めて感謝を申し上げたいと思います。それから、やはり白石和彌という監督でないと絶対撮れない血の通った人間賛歌になっています。白石監督は誰かを演出している時も、その役になりきって演出するので、全部の役が出来ちゃうんじゃないかっていうぐらいなんです。僕も白石監督から受けるパワーを全部吸収して武器にさせてもらいました。唯一無二の監督です。
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