1986年1月14日生まれ、岡山県出身。05年に石井裕也監督の『剥き出しにっぽん』で映画デビュー。以降、個性派として映画、ドラマ、CMと活躍している。おもな映画出演作に『指輪をはめたい』(11年)、『桐島、部活やめるってよ』(12年)、『鬼灯さん家のアネキ』(14年)、連続テレビ小説『マッサン』(14年)、ドラマ『重版出来!』(16年)。映画監督としても活動している。au「三太郎シリーズ」のCMで一寸法師役に抜擢されて話題をさらった。
『舟を編む』の脚本家としても知られる渡辺謙作監督によるヒューマンドラマ『エミアビのはじまりとはじまり』が公開になる。漫才コンビ“エミアビ”としてW主演を務めた森岡龍(『グミ・チョコレート・パイン』、『あまちゃん』)と前野朋哉(『鬼灯さん家のアネキ』、TVCM「au三太郎シリーズ」一寸法師役)に単独インタビュー。
映画撮影後、実際にM-1グランプリに挑戦し、予選一回戦を突破中でもある2人が、本当のコンビのようなやりとりで答えてくれた。
前野:率直に漫才かぁ、と。森岡くんとやるということは決まっていたので、相方の実道は森岡くんだと思いながら脚本を読みました。最初に読んだときには、これってどうなるんだろう、と。現実なのか非現実なのか分からないシーンが結構あるので。どういう意味なんだろう、と。すぐ読み返したんですが、それでも分からないから監督に早く会いたいなと思ってました(笑)。
森岡:相方の海野が前野くんだと知って読んだというのは僕も同じです。それに僕もどんな映画になるのかあまり分かりませんでした。コンビを組んでいた相方が死んじゃって、再生しようとする話と聞くと分かりづらい話ではないんですけど、全体が回想劇になっているので、見ている人にとってどんな手触りの映画になるのか想像できなかったんです。ただ、前野くんとの漫才がカギになることと、(漫才シーンが)大変だということは分かりました。
森岡:はい。高1、高2、高3とM-1グランプリに挑戦しました。
前野:バリバリやってたんですよ。
森岡:バリバリというか、文化祭の延長で。
前野:なので、もうこれで大丈夫だなと。
森岡:逆に俺はそれがキツかったよ!「お前やってたんでしょ?」みたいな空気。だから「漫才監修いらないね」とか言われても、いやいや、素人ですからって。
前野:今回の作品は漫才監修が全く入ってないんですよ。だから監督と僕らふたりで作っていったんです。実際に漫才を見に行ったりもしましたけど、そこからもらってくるということはあまりなかったですね。まぁ、高度でできなかったというか。でも独特のものにはなったと思います。
森岡:あとは、ネタも映画ならではのものにしたほうがいいんじゃないですかねという話はしました。
前野:それでエマ・ワトソンとかが出てきたの?
森岡:とか、フリップを使ったりというのも画的におもしろいかなって。
前野:それはM-1経験者として?
森岡:いやいや、どちらかというと映画好きとして。
前野:へへへ。
森岡:もちろんしました。一緒に見に行ったよね。
前野:うん、新宿に『ビリギャル』を見に行ったよね。あったよね〜、ああいう時期っていう話をして。あと有村さん、かわいいねって(笑)。
森岡:映画の話は結構しますね。
森岡:そこは大事なところですよね。僕らも友だちなんですけど、どういう風に仲良く距離を詰めていって、どういう会話をして、どうやってエミアビになっていくかというのは探り合いでしたね。お互いに映画は好きだけれど、でも好きなジャンルは違ったりするし。エミアビはお笑いが好きなふたりだけれど、人に組まされてしまった。相手を受け入れる、相手を知る、歩み寄っていく難しさと楽しさはありましたね。海野がいないと実道はダメだったし、前野くんがいないと森岡はダメだった。
前野:僕らの距離を詰めていくことが、結果的に役作りになった。いきなり漫才をふたりでどうぞと言ってもなかなかできないので。やっぱりお互いを知っていこうという工程を踏まないと。だからちょっとでも同じ時間を共有するということはしてました。
前野:いろいろありますが、森岡くんの弱い部分も知れたというのは大きいです。この作品をやっていなかったら、そこまで森岡くんのことを知ることができなかったと思うし。森岡くんを知ったことで、実道という役を、海野として見られるようにもなった気がします。
前野:そうですね。苦労していたり、泣いてたりとか。
前野:泣いたり、怒ったりしているところを見て。ふふふ。
森岡:(苦笑)鼻が出ちゃったよ。僕は、前野くんってどっしりしてるんだなと思いましたね。僕はどっしりしていたくて、人前では弱いところを見せないようにしよう、強くいようという自分を作り上げているところがあるんですけど、でも前野くんはそういうものを取っ払って、どしっとブレないんですよ。僕がテンパっていても前野くんが隣にいてくれるだけで成立してしまう頼もしさを感じていて、日々敬っていました。
前野:結婚する?
前野:僕は歌ったり、告白したり空中を飛んだりと、ハードルの高いシーンが毎日あったので、とにかくそれをがむしゃらに乗り越えようという気持ちでした。海野は、映画を見たときにかっこいい人だなと思いました。かっこいいと思って演じていたわけではありませんが、結果的にかっこいい感じがしました。森岡くんとは漫才以外で会っていないので、映画を見て実道の苦労を知りました。僕が死んだ後、こんな顔をしていたんだとか、黒沢先輩にこんなにいじめられてたんだとか。森岡くんがすごくたくましい顔になったのを見て、ほっとしたというか。こんな顔をしてたんだなって。
森岡:これまで僕は、役を自分に引き寄せて演じるみたいなことをしていたんだと思うんです。でも今回の実道の場合は、“森岡龍”が出ないように、ビジュアル的にも内面的にも徹底してやりたいという思いがありました。ただそれが難しくて。だから僕ができた唯一のことは、監督を信じること。監督の言っていることをちゃんとやるというか、食らいつく、一生懸命従うということです。前野くんの海野に関しては、やっぱりお互いのシーンを見ていないので、海野ってこんな顔をしてたんだというのが新鮮でした。本当に男らしいというか、かっこいいと思いましたね。そのかっこよさがちゃんと映ってたから、実道の痛々しさも伝わるのかなって。お互いのことを知らなったんだなって感じですかね。理解していなかったというか。
森岡:そうそう、そうなんですよね。
前野:そういうことなんですよね。結婚してても、一緒にいない時間は何をしているか知らないし、晩御飯のときに、昼間これをしてたと言われても、それが本当かは分からないですからね。
森岡:確かに身近な人だったのに、こんなやつだったんだ!ってのを知った感じかな。漫才をやっているときは、めっちゃわかっている感じがしたのにっていう。
森岡:一寸法師?
前野:最近じゃん! 仕事でギャラをもらったときかな。CMのオーディションに受かって、ギャラが入ったときに気合が入りました。
森岡:僕はやっぱり『あまちゃん』ですかね。あと、今回の映画が、本当に一番転機になる気がしています。役者としての向き合い方、意識が180度変わった作品です。
森岡:エミアビとしてM-1の決勝戦に出る。
前野:それ、いいね! 野望!
森岡:なんとかテレビに映って。
前野:まぁ、野望というか無謀かもしれないけどね(笑)。
(text&photo:望月ふみ)
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