1897年9月9日生まれ。東京都出身。キッズモデルとして活躍後、連続ドラマ「眠れる森」で中山美穂演じるヒロイン大庭実那子の少女時代役として女優デビュー。その後、数々の作品に出演。本作で初めて大胆な濡れ場に挑戦し、主演を務めた。
ロマンポルノ生誕45周年を記念して立ち上げられた「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」第3弾『牝猫たち』が公開を迎える。メガホンをとったのは『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督。
名匠・田中登監督のロマンポルノ『牝猫たちの夜』をオマージュにしているという本作は、現代に生きる女性の“いま”を痛々しくも痛快に描くロマンポルノでありながら、エンターテインメント色がちりばめられた作品だ。主演を務めるのは、2歳からキッズモデルとして芸能界に入り、子役としても数々の作品に出演していたという経歴を持つ井端珠里。この作品に出演し「子役の自分と決別できた」と語った井端が胸の内を赤裸々に語った。
井端:そうですね。フランス映画のようで「おしゃれだな」という感覚で見ていました。大学時代にはインディーズ系の作品なども色々と見ていました。ロマンポルノは『赫い髪の女』が初めて見た作品でした。
井端:以前から白石監督のファンだったので、オーディションを受けさせていただいたときも、ご一緒できたらいいなとは思っていましたが、まさか自分が主演で出演できるなんて思ってもいませんでした。ロマンポルノに出るということより、白石監督と一緒にお仕事ができるということに喜びを感じていました。
井端:脱ぐ、脱がないというより、見られることに対してはずっと戦ってきましたし、こういうお仕事は、見る側がイメージを作っていくもの。特に最近はSNS等が発達しているので、好きに切り貼りされて語られることに対しては覚悟していました。
井端:そうですね。子役の時も肌では感じていました。高校生ぐらいになると巨大掲示板なども出てきて、そういうネットと共に私も成長してきたと思います。自分が表に出る仕事をすると、顔の見えない匿名の方の発言や言葉に対してどう対峙していかなくてはいけないかなどは考えていましたね。
井端:脱ぐことには抵抗はなかったんです。今回は白石監督だったので、とても愛を持って美しく撮ってくださると思っていました。そこに関しては絶対的な信頼がありました。でも子役をやっていたこともあり、母親はどうしても出てほしくないという気持ちがあったようです。女優としてではなく、井端珠里として何も思わなかったかと言えば、嘘になります。でも出来上がった作品を見て涙が止まりませんでした。母親に胸を張れると思ったし、見てほしいとも思える映画でした。
井端:子役の自分と決別ができたのかな、と。私は子役時代のことをずっとコンプレックスに思っていて、子役の感覚を脱することができなかった自分と常に戦っていた気がしていたんです。その気持ちが、今回の作品に向き合ったことでバイバイできたのかなって……。そんなことを思っていたら涙が出てきました。あとは、純粋に白石監督の愛をいたるところから感じることができた喜びや、こんな素敵な作品の主演を務めさせてもらえたことへの感謝だったり、観客として感情移入したり……すごく複雑な感覚の涙ですね。
井端:主演女優としてやらせていただくからには「いい身体で出たい」というのはありました。痩せないように、普段よりプラス4キロぐらい太って、身体に丸みを帯びさせて、くびれだけは筋トレしてきれいなラインが出せるように意識しました。また共演した音尾琢真さんが、私が色っぽく映るように考えてくださっていたので、私はそれに乗っかって、できる限り自分なりの色っぽさを出せるように頑張りました。
井端:演出はもちろんありましたが、あまりお芝居のことは話をしませんでした。私のお芝居をどう思っているのか不安だったのですが、屋上でのシーンを撮影した際に「珠里ちゃんいいよ!」って大きな声で叫んでくれたときは嬉しかったです(笑)。
井端:ロマンポルノはもちろんですが、『凶悪』で素晴らしい演技をされていた女優さんなので、共演ができることをすごく楽しみにしていたんです。
井端:あのシーンは、当初予定していた体勢と違う形になってしまい、息が吸えなくなってしまったんです。最初はセクシーさも必要だと思い、そういった表情をしていたのですが、どうにも我慢できずに号泣してしまったんです。
井端:そうですね。カットがかかってからも緊張の糸が切れてしまったのか、ずっと泣いていたんですね。そうしたら白川さんが縛られたままの私のところに来てくれて、優しく抱きしめてくださったんです。それで「これからはあなたたちの時代だから頑張るのよ」って勇気をもらえるような言葉をいただいたんです。仕事がつらくて泣いていたのではないのですが、偉大な女優さんの優しさと強さに触れることができたありがたい現場でした。
井端:すごく大きかったです。私が演じた雅子は、生きているけれど満たされず、何かを求めて、何かをつかみたくてさ迷っている。そんな彼女が最後のカットで、初めて自分を受け入れることができて、この街を受け入れることができて、そして人生を受け入れることができたって私は思ったんです。そういう感覚は私の中にもあって、とても自分とリンクしていたんです。なので、ラストカットを見た時は、私自身も自分が好きになれたし、初めて「女優をやっているんです」って胸を張って人に言えるなと思いました。
井端:そういう部分はありましたね。作品に出演している、していないということではなく、自分の中で吹っ切れない何かがあったんでしょうね。でも白石監督と出会って、監督の言葉を信用して、絆というものでつながっていたという感覚があったんです。子役からの脱皮ということもありますが、自分の中では転機になった作品ですね。本当に素敵に演出してくださって、白石監督には感謝しかありません。
井端:もちろんまた白石監督とご一緒したいです。私はどちらかというとコメディが得意なので、おもしろい役をやってみたいですね。映画だけにとどまらず、舞台もやっているので、色々な方面で、白石監督が私を主役に選んでくれたことに恥じないような素敵な女優さんになりたいと思っています。
(text&photo:磯部正和)
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