1960年6月24日生まれ、ノルウェーのオスロ出身。新聞カメラマンとしてキャリアをスタートさせ、国内外の紛争ニュースに従事。91年に、スウェーデン・ストックホルム国立演劇学校の撮影学科を卒業。11年からはノルウェーの芸術研究プログラムのメンバーとなり、リレハンメル大学では准教授を勤める。映画では、ベント・ハーメル監督の『卵の番人』(95年)の撮影監督としてキャリアをスタートさせ、98年に映画制作会社パラドックスフィルムを設立し、『BUNCH OF FIVE』 で監督デビュー。その後に監督した『Hawaii,Oslo』(04年)、『Troubled Water』(08年)は国内外で高い評価を受け、ノルウェーのアマンダ賞などを受賞。13年には、彼の初めての英語映画で、監督自身のカメラマンとしての経験に基づく自伝的な作品『おやすみなさいを言いたくて』でモントリオール映画祭審査員特別賞を受賞。本作は、アカデミー賞R外国語映画賞のノルウェー代表に選出され、最終選考の9本に選ばれたほか、 ノルウェーのアマンダ賞で作品賞、助演男優賞など歴代最多となる8部門の受賞に輝いた。
降伏か抵抗か──究極の選択を突きつけられたノルウェー国王が、愛する祖国と国民のために下した決断とは?
ナチス・ドイツに抵抗し続けたノルウェーの歴史的な3日間を描いた『ヒトラーに屈しなかった国王』が、12月16日より公開される。
本国ノルウェーで記録的ヒットとなり、アカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表作品に選ばれたほか、様々な映画賞を受賞した本作について、エリック・ポッペ監督に語ってもらった。
監督:ドイツによるノルウェー侵攻を実際に経験した人や関係者たちが亡くなる前に、その話が正しいかどうかを聞くことができるうちに、この物語を映画化したいと思いました。また、世の中の人に知られていない物語を語りたかったこという思いもあります。
そしてもう一つは、今日、意義のあるものを語りたかった。つまり、今の世界のリーダーたちは守るべきものが国ではなく、自分のことばかり考えている人たちが多いからです。その中で、国民を第一に考え、自分を犠牲にすることを厭わない国のリーダーについて思い出させてくれるような、意義のあるものを描きたいと思ったのが、3つ目の理由です。
監督:このドラマは映画で初めて語られるもので、国王を描くということで、なるべく本物に近いものを描きたいと思いました。つまり、制度としての王ではなく、王の人間的な部分を描きたいと思ったんです。リサーチに3年をかけ、国王に関する様々な本を読み、国王の日記も読ませてもらいましたし、関係者にもたくさん話を聞きました。その中で一番重要だった人物は、ホーコン国王の孫で、現ハーラル国王の姉アストリッド王女でした。彼女は、国王のこともとてもよく覚えていて、この映画をつくりあげるのにとても大切な役割を果たし、かなり本物に近い国王を描くことができたと思います。
監督:彼をキャスティングした最大の理由は、素晴らしい役者であり、そのキャラクターになるためには何をしても厭わないという勇敢さを持ち合わせているからです。
もうひとつは、本当にホーコン7世に似ていたんです。面白いエピソードがあるのですが、実際の宮殿内で撮影中、宮殿のスタッフたちにも撮影していることは伝えてはいたのですが、イェスパーが衣装をつけたままお手洗いに一人で行った時、宮殿のスタッフが、彼を見て、まるでホーコン7世の亡霊が出たかのように驚き、給仕しようと持っていたものを落としてしまったそうです(笑)。それほどよく似ていたということです。
監督:最初の撮影をした後、イェスパーが『007』シリーズの撮影で抜けたために中断せざるをえなくなり、彼のために1年待ちました。『007』の撮影後、こちらの撮影をすぐにはじめたかったので、サム・メンデス監督に直接連絡をして、”白い髭を生やさせてほしい”と話しました。だから『007』のミスター・ホワイトは髭を生やしていたんです(笑)。
また、本作はあらゆることに正確さを求めたかったので、ハリウッド映画のようなフィクション化されたものではなく、実際にその事件が起こった場所で撮影をすることが私にとって大切なことでした。キャラクターが本当に元々の人物のような動きをするものを作りたかったので、現国王がいる本当の宮殿の中でも撮影をしました。これはたぶん映画史上初めてのことだと思います。
監督:現国王の戴冠記念式典の一部として、宮殿の公園で野外上映をしたいと国王の代理の方から連絡があり、実施することになりました。実際のプレミア上映には、13000人もの人が集まりました。国王をはじめロイヤルファミリーの全員が観客たちと一緒の空間で、私の隣にお座りになってご覧いただきました。失礼だと思いつつ彼らの反応を見ると、皆さん号泣されていました。上映後、国王から「この映画を見ていて、最後の1時間はずっと、既に亡くなっている自分の父親を見ているような気がしました。」と述べられ、私にとって最高の褒め言葉をいただきました。
監督:これは純粋なフィクションではなく、実際に起きた事件に基づいています。民主主義あるいは国自体が攻撃されたという、どこの国でも起こりうる状況について描いた映画です。民主主義を守るためには、私たちは立ち上がらなければなりません。
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