1971年生まれ、フランスのパリ出身。90年代半ばからオリヴィエ・ナカシュと共に短編の制作をスタート。2011年にナカシュと共同監督した長編4作目『最強のふたり』が世界的大ヒットを記録。『サンバ』(14年)でもナカシュと共同監督をつとめた。
『セラヴィ!』エリック・トレダノ監督×オリヴィエ・ナカシュ監督インタビュー
『最強のふたり』のコンビ監督が、不寛容の時代に投げかける深イイテーマとは?
富豪の障害者とその介護人の“友情”を描き大ヒットを記録した『最強のふたり』。『アメリ』の国内興収記録を塗り替えた作品を手がけたのは、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュのコンビ監督だ。そんな彼らの最新作『セラヴィ!』が7月6日より公開される。
今回の主人公は、引退を考え始めたウェディングプランナーのマックス。30年間に渡り多くの結婚式を手がけてきた超ベテランの彼だったが、今回集まったスタッフは誰も彼も使えない者ばかり。果たしてマックスはポンコツ・チームをまとめて豪華パーティを成功させることが出来るのか!?
笑って泣ける人生賛歌について、2人の監督に聞いた。
トレダノ:2015年にパリ同時多発テロが起き、僕たちは気持ちが沈んでいて、純粋に騒いで楽しめる雰囲気の作品をつくりたい、という欲求に駆られたんだ。心から笑い、楽しむことを必要としていたのだと思う。その頃には、ジャン=ピエール・バクリに主演を打診しようというアイデアも出ていたんだ。
トレダノ:結婚式にはお客さんがいて決まった衣装があり、それぞれの役割もある。まるで芝居を見ているようだし、そこにはさまざまな要素が入り交じっている、と感じたから。結婚式だからこそ生まれる緊張感や言葉にはできない感情、家族の問題といったものがすべて詰まっていると思ったんだ。そして、それはコメディーになりやすい。何より、みんなで共有できるイベントだしね。「また、あの幸せな雰囲気に戻れたらな」と思うこともできる。ただ、本作で描きたかったのは、単なる結婚式ではなく、そこで働く人々と、そこから立ち去ろうとしている1人の男の話。その摩擦みたいなものが、本作を作るうえでは必要だった。
ナカシュ:基本的にはいつも同じだね。多くの場合、1年から1年半リサーチをするのだけれど、本作では昔の記憶を集めるところから始めた。それに、僕たちがまだ駆け出しの頃は短編を作るためによくイベントなどでウェイターのアルバイトをしていたんだ。働きながらイベントの裏側を見ることで、この業界の大変さや面白さが見えてきたから、それも参考にした。こうして、古い思い出たちから登場人物を作り上げていったんだ。ただ、脚本を書くにあたっては最近の業界のリサーチもしたよ。
トレダノ:現実と空想がゴチャゴチャになっているのが映画だけど、ビュッフェばかり食べているスタッフや、アーティストになりたかったけど実際はバイトで食いつないでいるミュージシャン……こういった人々は僕たちが実際見てきた人だよ。脚本を書く時はいつも2人でアイデアを出し合い、整理し、並べ、書くパーツも分担しているんだ。お互いがお互いの初めての観客となり、アイデアを行ったり来たりさせる。でも、本作では(主演の)ジャン=ピエール・バクリが3人目の脚本家として参加してくれた。彼自身、脚本の分野でも活躍しているから快く参加してくれたし、僕たちが書き直すたびに意見を出してくれて、すぐさま演じてもらえた。とても新鮮だったよ。
トレダノ:彼がフランスで最高の俳優の1人だからだよ! 彼の演技の正確さやリズム感、どれを取っても文句のつけようがない。彼が携帯電話で話しているシーンがあるのだけれど、電話越しに相手が本当にいるかのようだった。ほかの俳優たちも、彼から何かを学ぼうと必死だったよ。
トレダノ:オーケストラの指揮者のような感覚でやっている。出演者たちはある意味、それぞれの楽器みたいなものかもしれないね。最初は調律もなっていなくて雑音にしか聞こえないけど、全体を考えつつメロディーを組み立てていくんだ。あと僕たちはジャズが好きだから、アドリブも大事にするようにしている。
ナカシュ:いくつかあるけれど、イヴ・モンタン主演でパリのブラッスリーを舞台にした『ギャルソン!』かな。これはクロード・ソーテ監督の作品なんだけど、僕たちはソーテ監督の映画から多大な影響を受けていると思う。彼は状況説明がとてもさりげなくて上手で、観客がストーリーに入りやすいよう、工夫を凝らしているように思う。
トレダノ:脚本を書いている最中は、現在のアルゼンチン社会の縮図をうまく描いている映画『人生スイッチ』(第87回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品)も参考にしたよ。
トレダノ:多くの作品が、僕たちのいる世界がどれだけ過酷で暴力的で恐ろしい場所か、ということを描いているのに対して、この映画は“そんな世界で、いかに楽しむことを忘れないでいるか”というテーマを投げかけている作品だと思う。それは他でもなく、この作品を、過酷だった“2015年”に書き始めたことが大きく影響していると思う。
トレダノ:人というものは、思っているほど違いはないということを伝えたい。他の人の話に耳を傾けることはとても大切だよ。この映画は、今の状況に抵抗しているものでもある。ユーモアで語り、ポジティブに見せたい。僕らは、嘆くよりも笑うことを選びたいんだ。
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