1974年、アメリカのミシガン州デトロイト生まれ。フロリダ州立大学卒業後、ウェイン州立大学を経て、ロサンゼルスに移住し映画の予告編やCMの編集を手がける。脚本も手がけた『アメリカン・スリープオーバー』(10年)で監督デビュー。長編2作目となる『イット・フォローズ』(14年)はカンヌ国際映画祭国際批評家週間でプレミア上映され、インディペンデント・スピリット賞4部門ノミネートされたほか、全米で3週に渡りトップ10にランクインされるなど大ヒットもおさめた。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督インタビュー
セレブの街に潜む闇をホラーで描いた気鋭監督を直撃!
ロサンゼルス、ハリウッドにほど近いシルバーレイクシティ。多くのセレブやアーティストたちが暮らすこの街を舞台にした悪夢のような話題作『アンダー・ザ・シルバーレイク』が先週末より公開中だ。
大いなる夢を抱きロサンゼルスへやってきたものの、気がつけば職もなく無為な生活に身を沈めている青年サム。偶然出会ったとびきりの美女の失踪を皮切りに、シルバーレイクの闇に近づいていくサムだったが……。
クエンティン・タランティーノが「こんなホラーは見たことがない」と絶賛した本作について、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督が語った。
監督:何となく自分を追い立てていた。書きまくっていて、もう脚本を何本も書いていたんだ。考えがいっぱい頭に浮かんできて、それをどんどん書いていきたくなる時が僕の人生にはあるんだよ。ちょうど一つの脚本を書き終わった時で、でもあんまりそれに満足していなかった。何かを一生懸命にやり過ぎる感じだったんだ。だからある種の自由を渇望していたんだよ。
僕がちょうどその脚本の完成に近づいていた時、あそこの(ハリウッド)の丘の上にある豪邸では実際にどんなことが起こってるのかなあなんて妻と話していたんだ。一体何が起こっているんだろうってね。どんな奇妙なことが起こるんだろう。どんな可能性があるかについてただしゃべっていた。そして謎があるよねってことも話していたんだ。そこで、このストーリーについてのイメージや考えが瞬く間に頭に浮かんだんだよ。そしてそれから1日2日経った後、僕はもう一つの脚本を書いていたんだけど、先に進めなかった。こんなことはあまり無いんだけれど、作曲家も、映画の中の他の様々な要素も頭に浮かんできた。とにかく自然に頭に浮かんできて、僕はそこで文字通り、座って急いでそれらを書き留めたんだ。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』の脚本は、取り憑かれたように書いたよ。普段はそんな状態にはならないんだけど、とにかく猛烈に書いたんだ。コーヒーも飲みまくり。ある程度書いて、それを妻に見せた。それで僕が書いた内容について2人で笑ったりして楽しかった。僕たちは、この脚本はよくできていると思った。楽しい内容だと思ったんだ。僕はとても楽しんで書いた。「自分が書きたいものを何でも書いちゃえ!」なんて思っていたからね。だからこそあれが書けたんだよ。完成させた時はとても満足だった。
でも、これを完成したところで、どうすることもできないってことに気づいていなかった。これは、(監督の大ヒット作)『イット・フォローズ』を作る前で、それまでの僕の作品は、『アメリカン・スリープオーバー』だけだったんだよ。個性的な脚本をいくつも書いてあったんだけど、それまでの作品が『アメリカン・スリープオーバー』だけっていうことは、僕が書いた脚本をどうすればいいかわかる人なんて誰もいないことはわかっていた。『アメリカン・スリープオーバー』から『アンダー・ザ・シルバーレイク』に行くなんて想像できる?
監督:確かに、自分の周りの世界にある要素を持ってきて、この狂気じみた人生を描き出したんだ。でも、主人公は僕じゃないよ。映画の中には僕の個人的な要素が確かに入っているけど、それらは僕の行動でも僕の世界観でもない。僕はただ、僕が知っているひとつの世界に対するとても歪んだ見方を想像したんだ。ある意味では個人的であって、反個人的だね。僕の部分部分は入っているけど、それはサムだけでなく、男女関係なく多くの登場人物に入っているんだ。うまく説明できないけどね。
監督:最初はどんな音楽を作っていいか分からなかった。でもリッチと話していく内に、「オーケストラをもっとプッシュしたものを作りたいね」とか「1930年代後半〜50年代の映画の音楽の雰囲気が欲しい」「もっとクラシックな、オーケストラを多用したハリウッドのこの時代の音楽のようなものを作りたい」等と徐々に方向性が見えてきたんだ。
実はリッチは、オーケストラの曲の作曲はしたことがなかったみたいなんだけど、あっという間に独学で勉強して、すぐに曲がかけるようになっていたんだ。彼はすごく才能があるので、彼の曲を聞いて僕もすごくスリリングに思ったよ。50年代のオーケストラ音楽っぽい要素プラス、現代の音楽のちょっと変わった部分、それに電子音楽が混ざったようなものができたと思う。
監督:あくまで僕の願いだけど、1回目は純粋に娯楽として楽しんでほしい、そして2回目以降「これとこれが繋がるんじゃないか」というようなミステリーの意味付けをしながら楽しんで欲しい。
1回目は、純粋に楽しみながらも何か疑問が残るというようにわざと作り、何度か見た後に、繋がりが見えてくるようなデザインをしたつもりなんだ。大抵ミステリー作品は、最初に色々な疑問が沸いて、最後の10分位ですべて解決する作りが多いけど、本作はその疑問と解決の繋がりを、はっきり分からないように仕上げている。ミステリーがあること、疑問そのものの美しさ、というものを楽しんでもらいたいね。
監督:彼はとにかく素晴らしい俳優だと思うんだ。だから彼と一緒に働けるっていうことがとても嬉しかった。彼が演じるサムは素晴らしくなると感じたんだよ。ある種の魅力とカリスマ性があって、人に好かれるタイプだけれども、陰では恐ろしいことをしている役柄を演じることができる俳優が必要だった。そしてその意味で観客を引き込むような俳優だ。彼にはそれができると思ったんだよ。
監督:僕はいろいろなことを試してみるのが好きなんだ。またそのいろいろなことを繋ぐ糸のようなものが必ずあると思いたい。その僕が作る作品なわけだから、人がそれぞれの作品を見たら、その繋ぎの要素が見えると思うよ。
いろいろなジャンルを試してみるのは楽しい。第1作目は若者が成長する姿を描いた優しさに溢れた作品で、その次の『イット・フォローズ』も若者が主人公なんだけれど、奇妙で衝撃的なホラー映画なんだよね。
僕はいろいろなことを書くんだ。様々なジャンルの脚本をたくさん書いてあって、さらに探求しながらいろいろな種類の映画を作りたいと思う。『アメリカン・スリープオーバー』を見た人が、次に『イット・フォローズ』を見て少し驚くなんてことがあったらいいなと思うんだよ。そして『イット・フォローズ』を見た人がこの映画を見て少し驚く、なんていうようにね。できる限りそんな感じで続けて行きたいと思う。
だからと言って、以前やったことと同じようなことをやらないというわけではないよ。立ち返ってもみたいけど、時間を置いてからだね。ある時点では、写実的な作品をまた作るかもしれない。またホラー映画を作るかもしれない。ミステリーもね。映画にして語りたいストーリーがたくさんあるんだ。
僕は映画が大好きなんだ。映画の歴史の中に存在する様々な種類の映画が大好きなんだよ。僕の喜びの源泉はそこだね。映画の歴史から少しずついろいろなものを持ってきて、アレンジし直して、別の目的を作って、そこに僕自身の考えを加えて新しいものを作るんだ。独自のものを作る。でなければ僕にとっては面白くないんだよ。
NEWS
PICKUP
MOVIE
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29