1987年12月23日生まれ。熊本県出身。高校3年生のときに「SMAティーンズオーディション2005」でグランプリを獲得する。一方で女優業にも力を入れていく。09年にNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』のヒロインに抜擢。以降、テレビ、映画と活躍を続けている。主な出演作にドラマ『名前をなくした女神』(11年)、『私が恋愛できない理由』(11年)、『ファーストクラス』(14年)、『刑事7人』(15-17年)、映画『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(08年)、『夢売るふたり』(12年)、『3月のライオン』前後編(共に17年)など。
25年前に姿を消した父は、別の地で、新たな家族を築いていた……。2012年まで劇団「東京セレソンデラックス」を率いた宅間孝行が、同劇団が07年に上演した舞台を再構築し、監督したヒューマンドラマ。
年に一度の祭りでにぎわう田舎町に、生き別れた父・東雲六郎を探す女性・高島さつきがやってくる。父と娘の、そして周囲の人々の5日間を描いた同作で、ヒロインのさつき役で主演を務めた倉科カナに単独取材。「さつきとは境遇が似ていた」と告白し、「自分がやるべきだ」と感じたという本作に挑んだ心情に迫った。
倉科:ありがとうございます。
倉科:私自身が、さつきと境遇が似ていたんです。脚本を読ませていただいて、「これはやりたいし、私がやるべきだ。私しかいない」と思いました。
倉科:人間くささです。登場人物のひとりひとりの描かれ方が、とても豊かで温かみがあるんですよね。いい人たちだからこそ、いなくなった先でお父さんは幸せにしているんだという苛立ちが募ってしまう。さつきが感情をむき出しにする気持ちもすごくわかりました。
倉科:今回、このシーンができなかったなとか、難しいなといったことが本当になかったんです。うまくやりたいといったことも考えなかった。ワンシーン、ワンシーン、その場にさつきとしているだけでした。
倉科:前半はさつきが何者なのかを観客にあまり知らせたくないという意図がありました。そしてできるだけ清太郎を利用しているように映るようにと。
倉科:そうですね(笑)。序盤は見ている人が引っかかるように演じてほしい。そう監督がおっしゃっていたので、その方向で行きました。
倉科:わたしと市原君、メアリーちゃん(高橋メアリージュン)の年齢が同じなんです。それにふたりとは何度も共演しているので、最初から仲良しでした。やべ(きょうすけ)さんも本当にお話好きなステキな方で、4人でいる感じは、本編のまんまです。とっても仲良くなれて、4人で飲んだりもしました。
倉科:いえ。1日、都内で居酒屋のシーンを撮影したんです。そのときに、撮影が終わってから、そのままその居酒屋で飲みました(笑)。(さつきの父の内縁の妻)玉枝役の原田(知世)さんは本当に素敵な方で、すごくお話したかったんですけど、物語での関係性が複雑なので、あまり仲良くなってもよくないなと。なので少し距離感を保つようにしていました。同じ理由から、(父・六郎役の立川)談春さんとはほとんど顔も合わさないように心がけていました。
倉科:素晴らしかったです。ワンシーンワンカットでの撮影が多かったのですが、ライブ感がこの映画にぴったりでした。ひとりひとりの心の機微が、説明くさくなることなしに、押しつけがましくなく伝わってきました。エンドロールを見ながら、携わってよかったなと思いました。スタッフさんの、この作品にかける熱量もすごく感じました。
倉科:玉枝さんとの対峙以降ですね。私が何者かというのを玉枝さんに伝えてからのシーン。そこは見どころだと思います。
倉科:いいですよね! 本当に素晴らしいと思いました。「うまい!」って頷きましたね。そんな風になれたらいいなと思います。
倉科:それが、自分のなかでは20代後半くらいから、なぜか32、33歳くらいの気持ちでいたんです。もうすぐ30歳だね、なんて周りの人に言われて、あ、そうか、私まだ30歳になってないのか、という感じでした。だから30歳になるからどうという意識はなかったんですけど、実際に30歳になってからのほうが焦りが出たりしています(苦笑)。なんというか、仕事の面で、ちょっと中途半端な年齢だなと感じたりして。
倉科:30歳になると、その人自身のもつ人間性といったものが生きてきて、今後の女優としての厚みも変わっていくと思うんです。今まではただ目の前にある役柄を演じていくことに頑張ってきたけれど、これからは先のことも考えていく必要があると思います。今まで考えてこなかったことを考え始めたり。でも、自分を見つめる作業というのは結構きついんですよね。もともとどちらかというとマイナス思考なので。
倉科:意外と。自分のことを認められなかったり、卑下してしまったりするんです。
倉科:続きになりますが、マイナス思考になりがちだったものが、全部いいじゃんっていう考えにいきついたんです。たとえば、他人のことをうらやんだり、自分のなかで、こうした部分はイヤだなと感じるところがあったり。でもそれもすべて自分なんだと認めていった先に、何か女優として生かせるものがあるんじゃないかって。これからは自分のことをもっと認めて、もっともっと自分自身を好きになりたい。それには努力も必要だし、お芝居の勉強もしなければだめだし、プライベートでも、たとえば旅に出て何かを感じるとか、車の運転をしていろんなところに出かけるとか、たくさんのことをしていきたいと思っています。
倉科:はい。やっぱり人間力ですよね。そこを高めたうえで、何を表現していくのか。表現の基盤は自分の身だから。自分にないものを生み出すのは難しい。だから、自ら飛び来んでいろんな経験をして、常に自分に刺激を与えて進んでいけたらいいなと思います。
倉科:すごく感じています。どこか引っ掛かっていたものが、少し目の前が晴れたような気がしています。やっぱりご縁があったんだと思います。宅間監督とも、舞台を拝見して、そのあとお食事に行ったときに、「今度、一緒に仕事をしたいね」と話をしていたら、この作品で実現しました。作品を撮り終わってからも、友だちと焼肉を食べに行ったとき、偶然、監督と再会したり。縁というのは、やっぱりあるのだと感じています。
(text&photo:望月ふみ)
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