1978年5月4日生まれ、高知県出身。テレビシリーズ『涼宮ハルヒの憂鬱』(06 -09年)で古泉一樹を演じて注目される。『黒執事』(08-14年)のセバスチャン・ミカエリス役、『ジョジョの奇妙な冒険』(14-18年)シリーズの空条承太郎役、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(18年)古代進役、など、多数の人気作品のメインキャラクターを演じている。
2015年に放送開始されるや否や、たちまち話題となったテレビアニメシリーズ『おそ松さん』。ハチャメチャな内容は荒唐無稽で、次に何が起きるかわからないワクワク感があり、社会現象となるほど注目を集めた。
監督は、突拍子もない展開を見せて人気のアニメシリーズ『銀魂』などを手がける藤田陽一が担当。その藤田監督が続投した完全新作劇場版『えいがのおそ松さん』が、3月15日に公開される。
ご存知の通り赤塚不二夫による漫画「おそ松くん」を原作に、大人になった松野家の6つ子が描かれている。主役級の超が付く人気声優たちが6つ子を演じ、劇場版でももちろん彼らが再集結。松野家の五男で、テンションが高くて明るくおバカな十四松を演じる小野大輔に話を聞いた。
小野:『おそ松さん』シリーズで共通してるのは“不条理”という点で、それは赤塚不二夫作品すべてに共通するものだと思うんです。何をやっても「これでいいのだ」で済ませるあの感じ。『おそ松さん』であの“おそ松くん”が大人になって、まともになっているのかと思ったら、そんなことはなかった。嬉しかったですね。僕は世の中って全部には意味ないと思うんです、逆のことを言う人ももちろんいると思うけど。作品にするときにそんなことをわざわざ描かないし、作り手って何か意味を持たせたがったりするじゃないですか。でも、世の中意味のないことだらけだと思うし、ちゃんと赤塚作品なんだなって思いましたね。
小野:僕、実松さん(テレビシリーズに登場する、闇を感じさせる小野が演じたキャラクター)はキライですっていつも話してたんですよ。なのに、藤田監督が「次回の台本です」って渡してきたのを見たら「オイ! 実松じゃねーかよ!」って(笑)。いつもは声を荒げたりしないんですけど藤田監督、許さないです(笑)。……どんな方か、ですよね。自分の好きなことを思いついたままやってる方だなと。あぁ、この人は『おそ松さん』そのものだなって思います。何故いつも最終回で野球が描かれるのを聞いたら、自分が好きだからって。好きという気持ちって、とてもシンプルで強いパワーですよね。藤田監督は素敵だな、って思いました。
小野:いえ、まったく。演じている本人の僕がいちばん意外に思ったぐらいです。え? 万人受けする作品なの?って。好きな人は好きだろうな、という程度だと思ったら、好きな人が実は多かった。それは嬉しかったです。
小野:5歳の子からファンレターが届いたことですね。子どもの字で「十四松になりたいです」って。5歳の子の将来の夢ですよ。親御さんがしっかりされてれば大丈夫かな、と(笑)。
小野:不思議と違和感はなかったです。6つ子のなかでどのキャラを僕がやるか考えた場合、必然的に十四松だなって思います。逆に今となっては、十四松を誰が演じられるんだろう?って。天狗になっているわけではなく、僕しかいないよなって思えますね。
小野:不条理が赤塚作品の象徴だというお話をしましたが、セリフからして不条理なので、感情なんてわからないんですよね。もうイントネーションや言い方、声の大きさでやるしかない。それって芸人さんに近いものがあるなって思ったんです。「ガチョーン」とか「トゥース」とか、意味はわからない、けど面白い。意味のないことをこんなに全力でやる、だから面白いんだって思って。脚本の松原さん(松原秀)はラジオ番組のハガキ職人から放送作家になられた方で、お笑いに造詣が深いし、コントの脚本も書かれているんですよね。だから僕も、お笑い芸人さんになったつもりでチャレンジしていました。
小野:彼は僕に自信をくれた存在ですね。笑いは正義というか、意味がなくても笑ってくれたらその時間がハッピーになる、それでいい。演技する時でも、日常でも、人と話す時でも、僕は自信がないんですが、十四松が理屈抜きの自信をくれた。バカポジティブとでも言うのかな、十四松を見ていると元気が出てくると言われることが多くて、誰かの役に立ってると思うとすごく嬉しいです。この映画化もまた十四松ができるということがとにかく嬉しかった。
小野:台本がすごく分厚くて2冊もあって、あのテンションを100分越えか……無理だ! 喉が裂ける! 僕たち壊れる‼って(笑)。
小野:とくに十四松はテレビシリーズとはまったく性格が違うのですが、僕としては腑に落ちたというか、若い時ってこういうことあるよな、と納得できたんですよね。『おそ松さん』という作品にこんなにちゃんとした要素があったんだと感動しました。
小野:トト子ですね。トト子が関係しているシーンはいつ見ても面白い。トト子はどこか狂気を孕んでいて、単純に大声で叫ぶだけで笑っちゃうんです。劇場版でもそういうシーンがあって、トト子はシリーズ通していちばん変わらないと思いますね。
小野:劇場版はコメディ要素とドラマ要素が対になっていて、両方が絡み合って成立していると思います。ピエロが泣いているような悲哀を感じるんですよね。残酷な部分があるけど、同時に笑いにもなっていて、18歳の6つ子たちがとてもドラマティックなんです。このシリアスさはテレビシリーズではできない。この映画ならではの要素が見どころだと思います。
(text:入江奈々)
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