1981年8月5日生まれ、東京都出身。1998年に女優デビューしたのち、『バトル・ロワイアル』(00年)や『GO』(01年)で注目を集め、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞に輝く。2002年に歌手デビュー。18年からは「MuseK」の名で国外でも歌手活動を行っている。その後、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年)、『メゾン・ド・ヒミコ』(05年)、『容疑者Xの献身』(08年)などの話題作に次々と出演。『47RONIN』(13年)ではハリウッド映画にも出演し話題となる。数々のドラマにも出演したのち、17年にはNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の井伊直虎役で大河初出演にして主演を務め、注目を集めた。そのほか、自身のファッションブランドを立ち上げたり、起業家としても活躍している。20年には映画『燃えよ剣』の公開も控えている。
直木賞をはじめ数々の賞に輝き、幅広い読者から高い支持を得ている人気作家・角田光代。「紙の月」や「八日目の蝉」など、これまでに多くの著書が映像化されており、そのたびに注目を集めてきた。そんななか、ベストセラー小説「坂の途中の家」が全6話でドラマ化され、4月27日よりWOWOWプライムにて放映が開始される。
主人公となるのは、主婦の里沙子。3歳の娘と夫(田辺誠一)と平穏な日々を送っていたが、乳児虐待死事件の補充裁判員に選ばれたことによって、自分のなかに眠っていた感情と向き合うことになる衝撃のヒューマンサスペンスだ。今回、里沙子を演じるのは、大河ドラマ『おんな城主 直虎』以来、2年ぶりの連続ドラマ主演となる柴咲コウ。そこで、本作を通じて感じた女性の生き方や仕事へ対する思いを語ってもらった。
柴咲:意見を押し殺してしまう里沙子という人物は、私本来のキャラクターとは遠いので、若干もどかしさがあり、不思議に感じる部分もありました。
ただ、私自身は公に顔を出して仕事をしているため、言いたくても言えない場面があったり事実とは違うことが世の中に伝わったりすることもあるので、歯がゆいという意味では共感できる部分もあり、そういうところを生かせればいいなと思いながら、演じていました。
柴咲:作品に登場する女性たちは大きく分けて、子どもがいないことに対して周囲から圧力を感じている女性と、里沙子のように理想的な家庭を作ることにプレッシャーを感じている女性。前者では、子どもができない人もいれば、作らないと決めている人もいるのに、「結婚するということは子どもを作って、ひとつの家庭を築くということでしょ?」と当然のように思われることもありますよね。
反対に後者のタイプでは、地味なことの積み重ねで華々しいことばかりじゃない子育てに悩んでいる人もいるんだろうなと感じました。みなさんにもそういったことに関心を持っていただき、共感していただけたらいいなとは思っています。
柴咲:すごく悩むとは思います。というのも、人を裁くということについてプロではない民間の一個人がそういう判断をしなければいけないというのは、すごい重責だなと感じたからです。もちろん、日頃いろいろなニュースを目にする際に、自分のなかで様々な判断を下していることはありますが、実際にひとつの事件を裁く一員になるのとは重みは違いますし、制度自体についても深く考えることになると思います。
感情に流されずにきちんと公正な目で判断できるかどうかが重要ですが、やはり人間というのは感情の生き物ですから。大変な作業になるんだろうなと想像しています。今回のように母親が子どもを虐待していたという事件に関していえば、それだけで嫌悪感を持つと思いますが、そういう偏見を取り払って真実を見極められるのか。制度の在り方も含めてまだ考えているところです。
柴咲:私の友人には専業主婦もいますし、バリバリ仕事をこなしながら母親業をしている人もいますが、みなさんすごく生き生きと子育てしているんですよね。特に、彼女たちは自分の意志で生きやすい世界を構築していて、誰かに任せたり、誰かのせいにしたりすることがないんです。なので、彼女たちからはいい影響を受けていますし、友だちでいることも誇りに思っています。
そもそも社会というのは、意見交換をして出来ていくもの。第一にきちんと発言することが必要なんじゃないかなとは感じています。だからこそ、何の主張もせずに、文句だけ言って気づいてもらおうとするのは難しいことかもしれないですね。それは、今回の里沙子にも感じた部分でもありました。
柴咲:角田さんもそのことに関しては、本を執筆した当時と今とでは、時代も虐待の質も変わっているとお感じになっているようです。特に、虐待する側が「愛」というものを知らない例が増えてきているとはおっしゃっていました。今回の物語のように、理解者がいなくて孤立してしまい、そうせざるを得なかったという話とはまた違うものではないかということだと思います。
柴咲:角田さんとは対談で初めてお会いしましたが、すごく楽にお話できたので、自分のなかでは勝手に気が合う方だなと感じてしまいました。ご自身のことを「9割ネガティブな性格」とおっしゃっていたのですが、そういうところが共感できたのかもしれないです(笑)。
柴咲:撮影してすぐに作詞に取り掛かることができたので、お芝居しているときのフレッシュな感覚やセリフにはならない思い、そしていろんな人の心の声を取り込みながら、新たな物語を作るような感覚でした。
人は失意のどん底にいるとき、凪のような状態になることもあると思いますが、そういうときこそ「がんばれ!」とか「負けないで!」という言葉は全然響かないものなんですよね。なので、今回はそういった不思議な静けさみたいな部分もひとつのテーマにはなっています。
柴咲:私はいつも撮影に入るときは、どの現場でも初心者の気持ちに毎回なるほうなので、今回もそういう感じだったと思います。準備も含めると1年半近くかかる大河ドラマの後ということもあり、自分の時間も必要でしたし、新しいことを始めたりもしたので、作品と作品の間に期間が空いたのは、私にとっては自然なサイクルでした。
柴咲:現場には赤ちゃんや子役がたくさんいたこともあり、終始なごやかで順調でしたね。待ち時間では、娘役の笑花(えみか)ちゃんと踊ったり、お話をしたりしながら過ごしていました。まだ小さいのに彼女なりの世界観がすでにしっかりとあるので、同じ目線で話を聞くのがおもしろいんですよね。
柴咲:以前から高畑淳子さんが大好きだったので、今回やっと親子役ができて本当にうれしかったです。高畑さんのお芝居には吸引力があるので、セッションしてみたいという気持ちでしたが、あとは純粋にお話してみたいというのもありました。カメラの回っていないときの高畑さんは少女のような方なので、ますますファンになりましたね。また機会があったら、ぜひご一緒させていただきたいです。
柴咲:それはなかったですね。というよりも、私は以前から作品の影響を受けて日々を過ごすということはあまりないんです。ただ、それは役柄と作品にもよるので、例えば手話を覚えないといけない役なら現場以外でも切り離せないですが、里沙子というキャラクターは自分の日常とはまったく違ったので、仕事と私生活とのメリハリはついていたと思います。
柴咲:今回で言うと、お芝居することがストレス発散になっていたように感じました。スケジュール的にすごく忙しい時期でもありましたが、作品に入ると、生活にリズムが出来てくるので、私にとってはそれも居心地がいいんですよね。
シリアスな内容ではありましたが、感情をアウトプットすることでストレスを相殺できていたような気がしています。つらいときに泣いてすっきりするのと似ているかもしれないですね。
柴咲:やっぱり家にいるときはリフレッシュの時間ですよね。なので、くつろげる部屋作りに励んでいます。あと、いま力を入れているのは、時間の管理。なるべく朝早めに起きて、仕事を始めるまでの基盤を整えるようにしています。最近は、仕事が休みの日でも早起きするようにしているんですよ。
柴咲:今年の2月初旬あたりからやる気になったばかりなんですが、それまでが本当に忙しすぎたこともあり、時間管理を見直さないといろんなことができなくて見落としてしまうと感じたからです。そこで、まずは朝早く起きるという習慣をつけようと思って始めましたが、朝の時間を大切にすると午後がすごく楽になるんですよね。
柴咲:実はいままでが怠り過ぎていたので、少し前まで本当にひどい状態だったんです。ただ、私はそこまでいかないとやる気が出ないタイプなんですよね(笑)。私自身は年齢を重ねることに対してワクワクしているんですが、さぼったままでいるのと、美しく年を取ることとは別だなと思うようになりました。ちょっと気合を入れてケアをしようとやっと考えられるようになったので、ここ最近はがんばっているところです。
柴咲:まずは乾燥がひどかったので、加湿器を買い足したのと、大容量のスチーマーを使うようにしています。部屋の乾燥と自分の顔が潤うので、一石二鳥なんですよね(笑)。保湿をすることがいかに大事かを実感していますが、それだけで顔の印象もだいぶ変わってきました。
柴咲:年齢にとらわれることはよくないと思っているので、特にないですね。それよりも、いま取り組んでいることがたくさんあるので、それぞれをもっと深く掘り下げて、成長させていきたいなとは思います。
ただ、年齢的なことを強いて言うとすれば、「40歳くらいにもうひと花咲かせたい」ということです。「じゃあ、そのひと花ってなんだろう?」と考えると、いま進行していることをより発展させていくということになると思うので、それがここ3年くらいの目標ですね。
(text:志村昌美/photo:小川拓洋)
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