三角関係の恋が切なくてキュンとなるBLアニメ『映画 ギヴン』

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『映画 ギヴン』
(C)キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
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バンドを組んでいるメンバーたちの恋と青春と音楽を描いた、切なくも爽やかなBLアニメ『映画 ギヴン』が8月22日より公開される。

元ネタはBL誌「シェリプラス」で2013年から連載し、今月初旬に最新刊の6巻が発売されたばかりのキヅナツキ原作によるBLコミックだ。フジテレビの深夜アニメ枠として人気の番組「ノイタミナ」で初めて本格的なBL作品として、「ギヴン」はテレビアニメシリーズ化された。

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そして今回、フジテレビの劇場アニメBLのレーベル「BLUE LYNX」で劇場アニメ化されたのが『映画 ギヴン』だ。テレビアニメシリーズの総集編などではなく、テレビアニメシリーズの続きがしっかりと描かれる。

テレビアニメシリーズは「高校生組」を中心に描いていたが、劇場版では「大人組」にスポットが当てられる。「ギヴン」で描かれるのは1組のバンドを組む、ギター担当の高校生・上ノ山とベースの大学院生・春樹、ドラムの大学生・秋彦たち。

刺激の足りない毎日を過ごしていた上ノ山は、ある日学校で壊れたギターを抱える真冬と出会う。彼が魅力的な歌声を持つことに気づいた上ノ山は真冬をバンドに誘う。バンド初心者の真冬を指導し、過去にトラウマを抱えた真冬と交流していくうちに上ノ山はしだいに真冬に惹かれていく……。

と、まあ、これがテレビアニメシリーズで描かれた内容。テレビアニメシリーズでは高校生の上ノ山と真冬を中心に描かれている。そして、今回の劇場版では大人組と言われる春樹と秋彦、そして秋彦の同居人である雨月にスポットを当てて描かれていく。春樹と秋彦と雨月3人、そうこれは三角関係の切ない物語なのだ。

蚊帳の外の平凡な片想いに思わず共感!

キヅナツキ原作の大人気BLコミックを劇場アニメ化した『映画 ギヴン』が公開された。バンドを組んでいる男の子たちを描いていて、フジテレビの「ノイタミナ」で放送されたテレビアニメシリーズでは上ノ山と真冬の「高校生組」が描かれたが、劇場版はその続編となり「大人組」と言われる大学生たちの物語が描かれる。

バンド「ギヴン」のお人好しで優しいベース担当の春樹は、繊細だけどぶっきらぼうなドラムの秋彦にかねてから想いを寄せていた。一方、秋彦には雨月という天才的なヴァイオリニストの同居人がいて、過去に惹かれ合っていた2人は体の関係を続けていた。しかし、お互いがお互いを幸せにはできないこと感じていた秋彦は息苦しさを感じ、春樹の気持ちに気づいていた秋彦は彼に強引に迫り……!

切なくも苦しい三角関係が描かれていく。今回の劇場版では春樹がメインに感じられて嬉しく思った。個人的には比較的目立たないと思うポジションのベースを担当しているのが似合う春樹は面倒見が良くてバンド「ギヴン」の良心的な存在。ロン毛が似合ってて顎髭がチャームポイントの全体的に柔らかいイメージのキャラクターだ。

ヘタレな残念メン好きの筆者の推しは春樹だから春樹メインで描かれるのは嬉しいが、でもそれだけが理由じゃない。バンドメンバーの上ノ山は若くして才能があるギタリストだし、バンド経験のなかった真冬はカリスマ的な歌声の持ち主。秋彦はドラムだけかと思いきや大学ではヴァイオリンを専攻しててそこそこの実力のようだし、なぜだか女性にもやたらとモテる設定。雨月に至っては浮世離れした天才ヴァイオリニスト。

みんながみんな物語の主人公のような特別な存在だ。そんな中で春樹だけは凡才で、それに気づいていて彼自身そのことで悩んでいたりもする。その春樹を霞ませずに中心に描かれていたことが嬉しく思えた。

才能ある者たちばかりだと、ともすれば見る側を置いてきぼりにしてしまう可能性があるが、凡才の春樹の目線にすることで視聴者も気持ちを乗せて見ることができる。恋愛としても秋彦と雨月はやたらとドラマチックだが、彼らの狂おしい恋愛ばかりをクローズアップせず、のめり込み過ぎずに描くバランスがとてもいい。

平凡な存在であり、蚊帳の外の平凡な片想いに悩む春樹に共感させられる。春樹を見ているとホッとさせられるし、彼に報われて欲しいとついつい思ってしまうのだ。「ギヴン」はこういったバランス感覚に長けた作品であり、そこが魅了的なのだろうと思う。

大人も共感してしまうバンドマンたちの恋!

テレビアニメシリーズで描かれた高校生組は青春ど真ん中の高校生がメインだし、真冬は過去に大きなトラウマを抱えていて歌声はカリスマ的で、ちょっと中二病な香りがしなくもない。青春時代はとっくの昔に通り過ぎてしまった大人としてはついていけるかなぁという不安がよぎる。

でも、忘れちゃいけないのは「ギヴン」はバンドものだということ。真冬の心の癒しとともにヴォーカリストとしての成長も描かれて、バンドとしても山や谷がありながら徐々に前進していく様子がラブストーリーと絡み合いながら上手く描かれている。

それにともなって高校生組から大人組へと話の中心が移行していき、大人組の中でも浮世離れしたばかりでなく、平凡な春樹を中心にすることでバランス良く描かれていく。大人も白けてしまわずについていけるのだ。

そして、映像化されることによって“カリスマ的な歌声”である真冬の歌をきちんと聞かせることも好感持てる。ごまかしたりイメージだけを先行させたりする中二病的な表現をされると、これもまた大人は白けてしまうところだが、しっかりと具現化してストレートに歌で表現している。

テレビアシリーズだけでなく劇場版でも真冬の歌が披露され、作詞もしている真冬の表現者としての成長も見て取れる印象的で感動的なシーンとなっている。そして上ノ山だけでなく、真冬の歌は春樹も秋彦も雨月さえも心に届き、彼らに影響していく。

ラブストーリーとして、人間ドラマとして、バンドものとしてバランスが取れた作品だなと思わせる。彼らと同じ世代の若い人はもちろん、ちょっと自分にはついていけないんじゃないかと引いてしまってる大人も思い切って飛び込んでみてはいかがだろうか。きっとくすぐったい気持ちを持ちつつ、音楽の力も相まっていつしか感動を覚えているはずだ。

真冬の歌は実際の歌声もさることながら歌詞の内容も含めて原作では描かれていないので、原作ファンも新たに「ギヴン」の世界観を楽しむことができるだろう。「ギヴン」を1ミリも知らない方は劇場版だけでもわかるとは思うが、原作やテレビアニメシリーズを履修したほうがより楽しめるに違いない。

また、8月28日まで『期間限定トーク&バンド・ギヴン「冬のはなし」特別映像付き上映』の開催も決定。特別映像の前半は声優たちによる『映画 ギヴン』の感想や裏話のトークが繰り広げられ、後半は真冬役を演じる矢野奨吾がギターボーカルをつとめるバンド「ギヴン」がテレビアニメシリーズ9話の舞台となったライブハウス・町田The Play Houseで演奏した「冬のはなし」のライブ映像が上映される。声優好きな方、「ギヴン」のファンの方は貴重な特別映像付きバージョンもぜひチェックして欲しい。(文:矢野絢子/ライター)

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