藤井聡太二冠の快挙に沸く将棋界、厳しい勝負の世界がわかる映画&ドラマ3本
将棋の藤井聡太棋聖が、2020年8月20日の第61期王位戦第4局にて、木村一基王位に勝ち、王位を奪取。史上最年少(18歳1ヵ月)での二冠という快挙を達成するなど、大きな盛り上がりを見せる将棋界。だが案外、その裏側は分かりづらいもの。そこで今回は、映画・ドラマなどを通じて、将棋界の裏側について見てみたい。
プロ棋士になるためには、まず日本将棋連盟のプロ棋士養成機関である「奨励会」に入る必要がある。会員は六級からスタートし、勝ち進みながらひとつずつレベルを上げていき、三段となった者だけが年2回ある「三段リーグ」に参加することが許される。そしてその「三段リーグ戦」を勝ち抜いた上位2名が、晴れてプロ棋士を名乗ることができるというわけだ。だが、満21歳の誕生日までに初段に、満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は奨励会を退会しなければならない、という厳格なルールが存在する。夢破れて、奨励会を去っていった若者たちも多かったという。
・瀬川五段、自身の役を松田龍平が演じてくれ嬉しかった、と羽生竜王との対談で明かす
瀬川晶司五段の自伝を松田龍平主演で映画化した『泣き虫しょったんの奇跡』は、26歳という壁に一度はプロ棋士の夢を諦めたしょったん(瀬川晶司)が、35歳にして再びプロ棋士を目指す姿を描き出した熱いドラマ。同作のメガホンをとった豊田利晃監督は、9歳から17歳まで奨励会に在籍していたこともあり、経験者ならではの徹底的な演出で、迫力の対局シーンを作りあげている。なお余談だが、女性奨励会員の西山朋佳三段は現在、女性として史上初の「棋士」(※1)昇格に、あと一歩というところにつけている。『泣き虫~』を見ると、プロ棋士になることのハードルがいかに高く、難しいことなのかが理解できるが、それを踏まえると、「棋士」を目指す西山三段の勝負の行方を見る目にも力が入りそうだ。
藤井棋聖は中学生でプロ入りしたが、将棋の歴史を見ても、藤井棋聖以前の中学生棋士は「ひふみん」こと加藤一二三(ひふみ)九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺明名人しかいない。映画『3月のライオン 前編/後編』で神木隆之介が演じる主人公・桐山零は、史上5人目となる中学生でプロ棋士としてデビューした若き天才棋士という設定。藤井棋聖が14歳・中学生でプロデビューを果たした当時は、両者の共通点がいくつかあって、「リアル桐山零」と騒がれたこともあった。作品は、孤独に生きてきた少年が、周囲の人たちの温かさに触れながらも、将棋界の頂点を目指すべく、ひとつずつ階段をのぼっていくさまを描き出す感動作だ。
とてつもない緊張感の中で、長時間考え続ける対局は、はたから見ているよりも恐ろしいほどに体力を消耗するのだという。だからこそ食事が大事になってくる。テレビドラマになるが、内田理央主演の『将棋めし』(FODにて配信中)は、史上初の女性プロ棋士となった峠なゆた(内田)が、食事選びも勝負のうちとばかりに、何を食べるべきか真剣に悩むさまを描き出す異色のドラマ。一見、単なる食のドラマに見えるかもしれないが、どのメニューを頼んだか、という選択が将棋の勝負の行方に色濃く関わっていくところが興味深い。また、カレー丼、ちらし丼など、劇中に登場する食事は、千駄ヶ谷の将棋会館付近に実際に営業している店舗で提供されている本当のメニュー。そこから棋士たちの食生活が垣間見えるのも面白い。(文:壬生智裕/映画ライター)
※1:プロ資格は「棋士」と「女流棋士」の2種類がある。女性のみが対象の「女流棋士」に対し、「棋士」は男女が対象。だが、これまでの将棋界の歴史において、女性の棋士は誕生していない。
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