巣ごもり時代を迎え、家での豊かな時間の過ごし方がテーマとなっている昨今、そのヒントになる展示会が東京・日本橋高島屋本店8階催事場で開催中だ。「いまの暮らしに、健やかな美を 民藝展」がそれ。
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“高島屋の民藝展”といえば、1941年にフランスの建築家シャルロット・ペリアンが三日三晩寝ずに準備したといわれる伝説の展覧会にはじまる。西洋のまねごとではなく、地域の伝統的な民藝品の中にこそすばらしいものがあることを伝えたいというのが本旨だった。
今回は、2017年以来3年ぶり。テーマは「示唆」で、「柳宗悦が見出した民藝と若い世代の連携を図り、これからの時代に民藝のある暮らしを提案する」とある。
民藝とは、ひとことでいうと、“用即美“を体現する道具といっていい。したがって、観光地のお土産屋で売っている民芸品とは区別される。
民藝を知ると言うことは、器であれば和の食文化、家具であれば和の住環境というように、家庭との関わりが背景にある。したがって、私たちの暮らしが変化すれば、当然その道具である民藝品もそれに寄り添って変化していくはずのものである。したがって、必ずしも昔通りのデザインや手法である必要はないし、必ずしも手作りでなければならないわけでもない。
ペリアンも、生活と物との豊かな衝撃によって新しいものを絶えず造っていくことがデザインであると述べていた。
ただ本質は、意図して見た目に美しい物を造ろうというのではなく、必要に迫られその役に立とうとする純粋性が、結果として美しいできあがりになるにすぎないというところにある。そこに“愛用“される秘訣があり、本展はそれを考えるためのきっかけのひとつになる。
知花くららによる展示ブースがある。彼女は民藝品を多く愛用しているが、実はそれと意識しないうちにセレクトし、自分の日常の中にあったという。本展でも、いま多くの家がそうであるようにモダンなインテリア空間に混在させる形で民藝品がコーディネートされている。
菓子研究家の福田里香やインテリアスタイリストの中林友紀による素材感も含めたコーディネートは、民藝品の懐の深さを教えてくれるとともに、生活空間に温かみを持たせる手法を教えてくれる。日本では、そもそも洋食なのか和食なのか中華なのかがボーダレスともいえるが、今回出展されている民藝品の多くに接すると、和食器であってもシンプルであれば、洋食でも中華でも盛り付けできるといったことの意味がわかってくる。
民藝にもともと興味がある人々にとっては、カナダの映像作家マーティ・グロスがバーナード・リーチから譲り受けていた貴重なフィルムなどのデジタル修復映像が公開されたのが嬉しい。柳宗悦や河井寛次郎、濱田庄司らの姿とともに、動画に映し出される昔の日本の手仕事の素晴らしさに息をのむ。
日常生活に加えると馴染みがよく、ぬくもりを与えてくれる民藝の世界。東京での開催は9月6日まで(9月9日以降は大阪)。感染予防対策でエレベーターには4人までしか乗れないが、デパートは思ったよりも空いている。おうち時間を豊かにする民藝の世界に触れてみよう。そして何か感じたら、東京・駒場の日本民藝館にも。(文:fy7d)
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