純愛BLコミックをイケメン俳優共演で実写映画化した『リスタートはただいまのあとで』

#BL#ボーイズラブ#リスタートはただいまのあとで#古川雄輝#竜星涼

リスタートはただいまのあとで
『リスタートはただいまのあとで』
2020年9月4日より全国公開
(C)2020映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会

日常の積み重ねを描いた心温まるラブストーリー

ほっこりとあったかい気持ちにしてくれる癒し系BLコミック「リスタートはただいまのあとで」が実写映画化された。ココミ原作の人気のBLコミック誌「Canna」で連載された作品で、実写映画は9月4日から全国公開される。

『リスタートはただいまのあとで』竜星涼インタビュー

「Canna」は多彩な人気作品が掲載されるBL誌で、実写映画化された「ひだまりが聴こえる」が連載されていたのも本誌だ。「リスタートはただいまのあとで」は「ひだまりが聴こえる」のように障害などを扱っているわけではないが、ちょっぴりシリアスで繊細な要素を含みつつハートウォーミングなストーリーだ。

主人公は東京の会社を辞めて10年ぶりに故郷に戻ってきた青年・孤塚光臣。彼は、初対面でいきなり「光臣」と呼び捨てで呼ぶ人懐こい青年・熊井大和に出会う。大和は近所で農業を営む熊井のじいちゃんの養子だった。いつもにこやかで働き者の大和に比べて、物事が上手く行かずにくすぶっている光臣は大和をうっとうしく感じていたが、ともに過ごす時間が長くなるにつれ、光臣の中で大和の存在が大きくなっていく。

大きな事件は起こらず、日常の積み重ねを追ったほのぼのとしたストーリーの本作。映画化されると知った時は少々驚いた。映像化不可能とかそういう意味ではなく、言い方は悪いがインパクトの強い作品ではないからだ。

もちろん評判は良くて読むとじんわりと心が温まる良作なのだが、ドラマチックな怒涛の展開や過激描写があったりするような引きの作品というわけでもなかった。でも、逆にこういう作品にも注目して拾うようになってくれたことは単純に嬉しいことだ。

古川雄輝&竜星涼、イケメン俳優が共演!

しかもキャストは無名に近い新人俳優ではなく、人気のイケメン俳優たちだ。光臣役には人気少女漫画をテレビドラマシリーズ化した『イタズラなKiss Love in TOKYO』でヒロインの相手役を演じた古川雄輝。日本だけでなく中国を中心にアジア圏でも人気が高く、『曇天に笑う』や『となりの怪物くん』などの話題作にも出演している。

大和に扮するのはアニメ化や舞台化などメディアミックス展開されている大人気コミックを待望の実写映画化した『弱虫ペダル』で主人公の先輩・金城真護役を演じた竜星涼。主演作『ぐらんぶる』や三谷幸喜作・演出の舞台「大地」への出演など引っ張りだこの人気俳優だ。彼らのダブル主演となっている。

共演は熊井のじーちゃん役に『マッサン』『とと姉ちゃん』などNHK大河ドラマや朝の連続テレビ小説に出演も多い蛍雪次朗。家具職人である光臣の父親役は『三月のライオン』など数々の映画やドラマに出演する名バイプレイヤーの甲本雅裕が演じ、光臣の母親役は『いつかのふたり』などの中島ひろ子。実力ある俳優達たちがそれぞれ役に合った味わいある演技を見せ、物語に厚みを持たせている。

主演2人ももちろんキャラクターにハマっている。光臣は東京での生活に失敗してUターンしてきた背景があり、海外生活も長かった古川の洗練された空気感は合っている。田んぼが広がる田園風景のなか二両編成の電車がガタゴト走るこの田舎に、いい意味で溶け込まずに浮いた存在として映る。それでいて実年齢よりいくぶん若く見える童顔なので、将来について父親と衝突する青臭さも感じさせる。

大和の方は作業着や軽トラが似合う、いかにもな田舎の青年で、竜星の柔らかい雰囲気がピッタリ。光臣よりもこの田舎で過ごした年数は短いにもかかわらず、光臣よりも田舎の風景に馴染んでいて、方言も自然に聞こえて良い。

ただ、光臣に対して大和はとても近しげで、距離感もやたらと近いわけなのだが、なんだかちょっと近過ぎて怖い気もしてくる。原作の大和はあっけらかんとした短髪の爽やかな青年なのだが、竜星は短髪ではなく長めで爽やかさには欠けるからかもしれない。でもそれも、後半で大和の陰の部分をクローズアップしていくくだりで、その爽やかばかりでない部分が生きてくるようになる。

ボーイミーツボーイのシンプルな純愛!

大和の明るい笑顔にも彼なりの理由があって、それがまた健気で切ないのだ。結局のところ絶妙なバランスで竜星は大和役に合っていると言えるだろう。

こんな大和の髪型のように原作と実写映画化ではちょっとだけ違う点がいくつかある。

光臣の父親は原作では仏具店だが映画版では家具店を営んでいるし、光臣と大和が親しくなっていくのは原作では半年かけているが、映画版ではそこまで長くはない。でも、一足飛びに急に親しくなるわけでなく、原作にはなかった光臣が大和の家の農作業を手伝う過程で丁寧に描かれる。

原作にアレンジを加えて無理なく実写化し、なおかつ原作のテイストは壊さないことに成功している。仕事に真面目に取り組んでひとつひとつ優しく教えてくれる大和をいつしか光臣はウザいと感じないようになり、心を許していく彼の気持ちが見ている側にも伝わってくる。陰ながら心に寄り添い、支えてくれる大和の存在が心の中で大きくなった光臣は大和に特別な想いを持つようになっていく……。

ちょっと前なら、男同士の恋愛に必然性がないとか、男同士なのに当人たちの抵抗感が薄いだとか言われたたぐいかもしれない。でも、男同士であることに特別な理由がなくていいし、抵抗感もなくていいはずだ。これはボーイミーツボーイのシンプルなラブストーリー。田舎の牧歌的な風景によく合う純愛を純粋な気持ちで堪能して欲しい。

ちなみに原作コミックの続編となる「リスタートはおなかをすかせて」は8月末に発売されたばかり。本作の光臣と大和のその後の姿をもっと見てみたい方は、この続編コミックを読んで脳内で実写映画化するのもいいかもしれない。(文:矢野絢子/ライター)

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