家族、職業、ジェンダー……分断化された社会について考えさせる
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自分の世界を大切にしてきたアラサー女子が、社会にもの申す。そんな映画、『エマ、愛の罠』が公開となる。監督は、パブロ・ラライン。
・暴力、異常気象、人種差別、薬物、ジェンダー……問題提起していたプリンス伝説のアルバムを13枚組LPでふたたび
主人公のエマ(マリアーナ・ディ・ジローラモ)は、20代後半のレゲトンダンサー。養子に迎えた少年ポロを手放すことになってしまったことを後悔している。夫は自らが所属するダンスカンパニーの振付師のガストン(ガエル・ガルシア・ベルナル)。そのほかに、ガストンとの離婚相談に乗ってもらっている女性弁護士のラケル、その夫で実直な消防士アニバルが登場する。その3人をもてあそぶかのように振る舞うが、実はポロを取り戻すための綿密な計画の一環だった。
チリには、日本で言うニートにあたる「ニニ」という概念があるるといい、今の社会システムに嫌気が差している若者の言葉をこのエマが代弁しているのだとエマ役のマリアーナが言う。
確かに、作中でエマは「新しい雑草を育てるためには古い雑草を燃やさなければならない」と言ったり、火炎放射器で真夜中の市街地にある車を燃やすのは、舞台である南米のチリで抑圧された若い女性が思いをぶちまけた言動といえる。チリ海軍の最大の英雄、アルトゥール・プラットの彫刻を燃やしたのは、まさしく象徴的だとマリアーナは語っている。
取り戻そうとしている少年は養子。同じダンサーである夫は振付師で、不能の男。そしてラケルは社会的地位の高い弁護士、しかも女性だ。自分なりの世界観を持った間もなく30になろうという女性がどんなことをしてでも奪い返したいものは何なのか。家族、職業、ジェンター、社会的地位、年齢。世の中の分断が進み、世界中至る所で従来の社会構造が限界に来ている中で、この作品が考えさせる意味は深そう。
『エマ、愛の罠』は、10月2日より公開。(文:fy7d)
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