北欧のインテリア全盛期の1960年代ワールド/映画『ストックホルムでワルツを』
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スウェーデンのスター歌手が伝説のモニカを好演
映画の中のインテリアを取り上げる本稿の題材は、『ストックホルムでワルツを』。2013年のスウェーデン映画で、監督はペール・フライ。
本作は、スウェーデンのジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドの自伝的作品である。シングルマザーのモニカは、電話交換手の傍ら地元のクラブで歌う日々。田舎町からストックホルムに出て、歌手で生計を立てることを夢見る。やがてアメリカ進出のチャンスが訪れるが失敗。帰国後に仲間と巡業する過程で行ったジャズのスタンダードにスウェーデン語の歌詞を付けて歌う試みが功を奏し、やがてモダンジャズ全盛期にビル・エヴァンスとのアルバム「ワルツ・フォー・デビー」で世界的にブレイクする。
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ただ、本作は単純なサクセスストーリーではなく、実際のモニカとも少し違う。女性として、母親として、シングルマザーの人生に踏み込んだ作品となっている。印象的に描かれたのは、成功した後にモニカが拠り所にした心の道しるべだった。
飴色のフィン・ユールがある映画監督の家
本作は、ファッションもインテリアも60年代感が満載。折しも北欧インテリアの絶頂期だ。
全般的に言えるのは、グレーを基調に、北欧らしいペールトンが支配的なこと。すこしくすんだ薄いブルーやイエロー、パープルは、スウェーデン人の白金の髪と白い肌が相まって、クールな印象だ。モニカのために「In New York」にスウェーデン語の歌詞を付けた大物詩人のベッペ・ヴォルゲシュの家では、庭を飾る薄紫のアジサイや、アーチに細い柱があるテラスまでもがこのトーンである。
一方、キッチンは概ねホワイト。造り付けの食器棚も白くペイントされ、ブルーのデイジー柄などが入ったシンプルな白磁が見える。
一番印象に残ったのは、後にモニカの恋人になるシェーマン・ヴィルゴット監督の家のインテリア。レトロチックなオーディオでワーグナーの「ワルキューレの騎行」を掛けながらモニカを口説く場面では、手すりが美しいフィン・ユールのチェアが種類の異なるギャッベの上に置かれ、北欧らしいシェードのテーブルランプと合わせて飴色に輝いていた。
バリエーション豊かなコーディネート
成功を収めたモニカの自宅も、回り階段などゴージャスでカラフルなのだが、どこかあたたかみがあって落ち着いたトーン。北欧は夜が長く一日の大半を家で過ごすことも多く、ルイスポールセンのようなテーブルランプが発達した。そこで照明の明かりが映えるように、白やグレーを基調として、ナチュラルな木やファブリックを多用することで自然で落ち着いた空間にすることが求められたのだ。
各部屋への入口はアーチになっており、部屋ごとに異なる柄物の壁紙があてがわれている。要所要所にインテリアとして置かれたチェアや階段の踊り場のベンチが、単調になりがちな広い家にバリエーションを持たせている。
棚や収納は、薄い柄の壁紙を施した壁付けされ、スッキリした印象。リビングの床はヘリンボーンでクドくなりそうなところ、高い天井と床を広く覆うラグや、くすんだブルーのカーテンやソファで穏当にまとめている。
娘の部屋は花柄でピンクだが、ペールトーンなので子供部屋とはいえとても上品だ。
手本にしたい北欧インテリアのエッセンス
モダンなインテリアというと白基調で無機質になりがちだが、北欧インテリアに学んで自然を感じさせるグリーンやアースカラーを取り入れれば、ぐっとあたたかみのある空間になる。本作を見て、和の侘び錆びテイストにも通じるペールトーンを積極的に採り入れてみては。(文:fy7d)
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