トランプ再選か、バイデン奪取か。米大統領選を知るための3本
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11月3日に行われるアメリカの大統領選挙は、共和党のトランプ大統領の再選となるか、民主党のバイデン前副大統領が政権を奪い取るのか、に注目が集まっている。選挙期間中に行われた討論会では、激しい非難の応酬を繰り広げたり、新型コロナウイルス(COVID-19)を軽視する発言を行ってきたトランプ大統領がコロナに感染してしまうなど、4年前と比べても混迷の度合いがいっそう増している。そこで今回は大統領選挙を題材としたいくつかの劇映画、ドキュメンタリー作品などを通じて、大統領選挙の裏側を見てみたい。
大統領選期間には、2月から3月の第2火曜日に予備選挙や党員集会が一斉に開かれる日があり、その日は「スーパーチューズデー」と呼ばれている。ここで絞り込まれた候補者が、党から指名を受け、大統領本選を戦うことになる。ジョージ・クルーニー監督、ライアン・ゴズリング主演の映画『スーパー・チューズデー 正義を売った日』は、アメリカ大統領選の裏側にある不正、陰謀、裏取引、そして裏切りを描いたサスペンスドラマ。選挙に勝つためには狡猾で、野心が強い、優秀なブレーンの存在が必要であるが、彼らがいかにして選挙を戦おうとしているのか。実際に民主党候補の選挙キャンペーンスタッフだった原作者が実体験をベースに描いたドラマなだけに、見応えがある。
ジョージ・クルーニーをはじめとしたハリウッドスターは、民主党支持を表明する者が多い。それゆえに共和党のトランプが大統領になったことに理解が追いつかないと公言する者が多かった。映画『アメリカン・カオス』は、多数のトランプ支持者に「なぜトランプなのか?」と聞いてまわるドキュメンタリーだ。本作がユニークなのは、インタビューを行うジェームズ・D・スターン監督が熱狂的な民主党支持者であるということ。それゆえ、インタビューの際は「相手と議論しない」「相手の話に耳を傾ける」といったことを自分に課して、トランプ支持者たちと対峙する。最初こそ、あまりの思想の違いに「まるで外国に来たようだ」と嘆くスターン監督だが、トランプ支持者たちの言葉に耳を傾けるうちに、「これはトランプが選挙に勝つかもしれない」と脅威を感じるようになる。「彼らは思想が違うから」と突き放すのではなく、「なぜ彼らはそのように考えるのか」と相手に思いを馳せること。なかなか難しい問いかけだが、作り手の誠実さを感じられるドキュメンタリー作品だ。
日本でも著名なマイケル・ムーア監督の『華氏119』は、ドナルド・トランプの大統領就任を受けて公開されたドキュメンタリー作品。ムーア監督は、トランプ政権誕生の下地を作り出したのは、彼が支持する民主党のオバマ元大統領や、ヒラリー・クリントンが政治不信をもたらしたからであると指摘する。政治不信が蔓延する中で、彼が期待を寄せるのは若者たちだ。社会の矛盾にカメラを使って突撃してきたムーア監督は、「君たちが行動しないと大変なことになってしまうよ」と警鐘を鳴らしている。(文:壬生智裕/映画ライター)
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