2000年代以降の北野映画を支えるミュージシャン・鈴木慶一

#アウトレイジ#北野武#座頭市#映画音楽家#鈴木慶一#龍三と七人の子分たち

鈴木慶一
ミュージシャン生活50周年を迎えた、鈴木慶一
鈴木慶一
鈴木慶一『MOTHER MUSIC REVISITED』アルバムDELUXE盤(CD2枚組)
発売元:日本コロムビア/BETTER DAYS

長寿ロックバンド・ムーンライダーズをはじめ精力的に活動

【日本の映画音楽家】鈴木慶一
2017年の『アウトレイジ 最終章』以来の新作映画の発表を、世界の映画ファンが待ち望んでいる北野武監督。北野映画といえば、音楽は『あの夏、いちばん静かな海。』(1991年)から『Dolls』(2002年)までの7作品を担当した久石譲がよく知られているが、2000年代以降は鈴木慶一が多くの作品を担当している。具体的には『座頭市』(2003年)、『アウトレイジ』(2010年)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)、『龍三と七人の子分たち』(2015年)、『アウトレイジ 最終章』(2017年)の5作だ。

・『ゴジラ』の単純でいて強烈なメロディーを生み出した伊福部昭

鈴木慶一は、日本最長寿ロックバンドのひとつ、ムーンライダーズの中心人物。多作家として知られ、ムーンライダーズのほかにも自身のソロや高橋幸宏とのTHE BEATNIKS、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)とのNo Lie-Sense、ベテランと若手の混合ロックバンドであるControversial Spark、『MOTHER』『リアルサウンド~風のリグレット』などのゲーム音楽、ドラマ『ゲゲゲの女房』やアニメ映画『東京ゴッドファーザーズ』『若おかみは小学生!』のサウンドトラックなどなど、50年のキャリアにブランクというものがほとんど見当たらない、正真正銘のワーカホリックである。

『座頭市』で北野武監督と初タッグ、興味深い映画音楽家としてのスタンス

そんな鈴木慶一が初めて関わった北野映画は、2003年の『座頭市』。北野監督にとっては初の時代劇であり、エンタテイメント方向に振り切った作品でもあり、自身の役者としての名義を「ビートたけし」にするなど、従来とは異なる試みがいくつか行なわれている。その一環として、というわけでもないだろうが、とにかくこの『座頭市』から鈴木慶一と北野映画の関わりは始まった。

以前、細野晴臣のラジオ番組に鈴木慶一が出演した際、映画音楽の話題になり、細野は是枝裕和監督の『万引き家族』、鈴木は北野監督の諸作品について、いくつか言及。映画音楽家としての鈴木慶一は、基本的に「映画は監督のもの」というスタンスのようだ。北野映画では、渡した楽曲が換骨奪胎されることが多く、ある曲ではリズムが抜き取られたり、ある曲では和音を鳴らすキーボードが抜き取られたりと、限界まで音が削ぎ落とされる傾向にあるという。このように音をいじられることに抵抗を覚える音楽家は少なくないと思うが、鈴木慶一はむしろその変化を楽しめる人なのだろう。

そして北野監督は、長くミニマルミュージックをルーツとする久石譲を起用してきた人だけに、やはり音楽は必要以上に主張しないものを好むのだろう。特に『座頭市』では、実験的と言ってもいいほどにサウンドトラックの音数は少ない。現代の耳で聴いてもその響きは十分に刺激的だ。いっぽうで、ラストのタップダンスのシークエンスで鳴らされる「Festivo」は、洋邦の様々なリズムパターンが詰め込まれたハイブリッドなトランスミュージックに仕上がっている。このあたりのバランス配分は『アウトレイジ』シリーズでも同じで、音による“静”と“動”の表現には北野監督の意向も多分に反映されているに違いない。

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ミュージシャン生活50周年を迎え、サントラのセルフ・リメイク作を発売

2021年1月27日、ミュージシャン生活50周年を記念して1989年の人気ファミコンゲームのサントラ『MOTHER』のセルフ・リメイク作『MOTHER MUSIC REVISITED』をリリースしたばかりの鈴木慶一。各種サントラやソロもいいけれど、そろそろムーンライダーズとしての活動再開にも期待したいところだ。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)

鈴木慶一『MOTHER MUSIC REVISITED』

鈴木慶一『MOTHER MUSIC REVISITED』アルバムDELUXE盤(CD2枚組) 発売元:日本コロムビア/BETTER DAYS

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