エンディングは「主人公の死」と決まっていた『愛について語るときにイケダの語ること』
四肢軟骨無形成症(通称コビト症)で身長100センチ、スキルス性胃がんステージ4…今は亡き一人の青年・池田英彦があの世から問いかける問題作『愛について語るときにイケダの語ること』の劇場公開が決定し、このほど、メインビジュアルや場面写真が解禁され、あわせてプロデューサーの真野勝成、映画監督の原一男、エッセイスト・漫画家の能町みね子からコメントが寄せられた。
『愛について語るときにイケダの語ること』ポスタービジュアル・場面写真はこちら
“余命宣告”を受けたイケダ(池田英彦)は、「生きているうちにセックスをたくさんしたい」と考え、その過程でカメラを回し始める。その楽しみを覚えた彼はある企みを思いついた。「僕の本当の姿を映画にして見せつけてやる!」。そして、脚本家・真野勝成を巻き込み、虚実入り乱れた映画の撮影を始める。イケダは2年間の闘病後、2015年10月25日に他界。後にはイケダが「作品」と呼んだ不特定多数の女性とのセックスを記録した映像をはじめとする60時間を超す素材が遺された。
イケダのなど意思を受け継ぎ映画を完成させたのは、彼の20年来の親友にして、『相棒』『デスノート Light up the NEW world』などヒット作の脚本を手がけた真野勝成。編集をつとめたのは『ナイトクルージング』『マイノリティとセックスに関する、極私的恋愛映画』などの監督作がある佐々木誠。膨大で、なおかつ断片的な素材を58分間に見事にまとめあげた。
初主演にして初監督…加えて「遺作」
解禁されたポスタービジュアルには、おしゃれをして渋谷の街に繰り出すイケダのポートレートが使用され「僕の最期、映画にしちゃう?」とカメラを持っている真野に語りかける姿が写し出されている。また、エッセイスト・漫画家の能町みね子に加え、自身も脳性麻痺患者の姿を赤裸々に捉えた『さようならCP』などの数多くのドキュメンタリーを監督した原一男も、障がい者自ら、命をかけてリアルな「愛」を描いた本作を称賛する声を惜しまない。
本作で脚本も手がけたイケダの親友・真野勝成は「映画の内容はセックスと愛をめぐるもの。なぜ自分の性愛を映画にしたのか? 池田は最後に何を遺したかったのか? 池田は自分に対する人の優しさに対して、どこか苛立っていたようです。善意と偽善の境界線は曖昧で、池田はそれを問い詰めたりしたことはありませんが、自分を『善なるもの』に押し込めようとする何かに対して、自分の闇を叩きつけたいという衝動が人生の最後に爆発したのだと思います。本作は“こんな奴も生きていた”という本当の意味の多様性を見せてくれたんだと思います」。
我が身をさらして撮る…それが「生きた証」
映画監督・原一男は「いわゆる『コビト』の彼が自らのセックスを我が身をさらして撮ると決める。一見スキャンダラスに見えるが、実は知的冒険心に満ち、精神の働きの充実さを示す、生きた証なのだ」と評し、エッセイスト・漫画家の能町みね子は「いかんともしがたい醜さや、かわいさが体というものから濃密に匂ってくる。心と体を分けて、体はただの入れものだとするという考え方、私はあまり好きじゃない。厄介な奴だけど、体は切り離せない自分の一部だ」と語る。
これまでにない骨太、かつポップな多様性を捉えたこの問題作は、奇しくも東京パラリンピックとほぼ同時期に上映される。
『愛について語るときにイケダの語ること』は6月25日よりアップリンク吉祥寺で公開。
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