1976年生まれ、東京都出身。モデル、女優。近年の出演作に、『八日目の蟬』、『はやぶさ/HAYABUSA』(11)、『まほろ駅前狂騒曲』(14)、『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(15)、『猫なんかよんでもこない。』、『溺れるナイフ』(16)など。
『青葉家のテーブル』西田尚美、市川実和子インタビュー
できない子だった…と落ち込む市川実和子に、西田尚美「いいんだよー 、そのまんまで」
「青葉家って、不思議な家庭なんですよね」
映画『青葉家のテーブル』は、青春のみずみずしさと葛藤を映し出すとともに、青春の延長にある大人たちの生き方を描く。「北欧、暮らしの道具店」の世界観が作り出す美術、料理、音楽、衣装と、西田尚美(主人公の青葉春子)、市川実和子(春子の友人・国枝知世)、寄川歌太(春子の息子・リク)、栗林藍希(知世の娘・優子)らが展開する映画版オリジナルストーリーは、雑貨店製作の異色の出自でありながら、若い世代と20年前に青春を過ごした世代への応援メッセージが込められた温かい作品となっている。
今回、出演した西田と市川にお話を伺った。
日本の雑貨店に世界中から熱視線! 西田尚美と市川実和子も気負わない姿勢に共感
西田:私は、ほぼほぼ(ECサイト「北欧、暮らしの道具店」店長の)佐藤友子さんを意識しています。今までのWEBドラマ4本を通じて、なんとなく役ができあがっていて。
西田:佐藤さんは現場でもいつも小物を動かしたり一生懸命に動いていらっしゃいますが、私はそこまでマメじゃないですね、ズボラです(笑)。ちゃかちゃか動くのは、子どものために対応するときぐらいですか。自分のことのときはゆったり休んでます。
西田:質素ですよ。言い方を変えれば、ミニマルな暮らし!(笑) なるべくモノを少なくして必要な分だけ手元に置いておけって家族に怒られるんです。でも、うっかり買っちゃうことも多くて、そんなときは、皿とかは消耗品だから、いつ割れるかわからないでしょって言ってます。
西田:春子を演じながら自分の家庭を意識することはあまりないですね。青葉家は、春子とリクの母子家庭に、春子の友だちとその恋人が同居しているというすごく特殊な家庭ですから。でも、それすら成立してしまう環境で、みんながそれを嫌がっていないし、むしろ息子のリクは彼らが居ることですごく助かっている。青葉家は、器は大きいけれど、逃げ場もあるんです。
市川:青葉家って、不思議な家庭なんですよね。
市川:私自身は、今回演じた知世ほど仕事もできないし、ぼーっとしてます(笑)。でも、今回は台本の中に既に強烈なキャラができあがっていたので、とくに役作りをする必要はなかったですね。私にできる範囲で、そんな知世さんをやってみただけです。
市川:知世は、お店「満福」自体もそうですし、木造平屋の自宅もそうなのですが、実は、きらびやかな世界に住むステレオタイプなスターじゃないんです。料理研究家の方などに時折みられるように、ちょっとニッチなジャンルで、オシャレなのかがわかりにくい、どこかふわっとした素敵な世界観を作っている方っていらっしゃいますよね? 90年代を生きてきた人ならわかる、ほかとはちょっと違うのがいいというこだわりをもった、ややもするとひねくれている人。肩の力を抜いたおしゃれなところが知世の魅力だと思います。
「これからの人と人の形をなんとなく見せてくれた」
西田:広島から出て来たときの私にとって、東京は色々なものが眩しくて。それこそ、この映画でもリクが没頭しているようなバンドブームだったし、原宿には歩行者天国もあったりといった時代にいて、服飾の専門学校に入りました。東京に出てきた頃に想像していた自分と今とでは、すごくギャップがあります。今でもこういう世界に自分がいるのが、とても不思議な感じがします。
西田:求められているのかどうかすらわからないけど、何となくそのまま居続けちゃった感じはありますね。でも、取り組んでいるうちにもっともっとやりたくなったから、ここまで続けられたのだと思う。たしかに、最初はわからないでやっていた感はあります。
市川:私も西田さんに同じく、よくわからないままここまで来た感じなんですけど、実は、先週それで落ち込んでいたんです。
西田:えっ、そうなの?
市川:女子の鑑みたいな女優さんに会って。その人、隙がないのよ。自分のゴールを決めて計画して、着実に上がって行っているような人なの。役作りの仕方もきちんとしてて、美容にも詳しいし、同じ女なのに何故こんなに違うんだろうって……。
西田:そっかー、うっそー。
市川:夢がないってことなのかな。私にはずっと理想の自分がいる訳じゃないんです。理想とか考えたことがなくて、いまさらそれに気づいて落ち込んだんです。私、本当に流されるまま、なすがままだな……と。
西田:いいんだよー、そのままで。
市川:そうそう。春子の家って、決めごとがなくて、何でも許されている。今の世知辛い世の中と真逆なのが、とてもいいなと思っているんです。
たとえば、自分のあるべき姿といった、何かを守って生きていたり、ちょっと大きい話で言えば人種差別のような言葉を振りかざして守ろうとして生きていたりといったことが、本当にない。オトナというか、新しい感覚というか、シェアするにしても、気負ってそうするのではなく、多様化を許し合っている関係が素敵なんです。
今は、それが許せなくなっているからいがみ合っている人たちがいますが、いずれそれがなくなって、緩やかに繋がっていくようになる気がしています。優しいし、面倒くさくない。こう生きられたらみんなもっと楽に生きられるという、これからの人と人の形をなんとなく見せてくれたと思います。
市川:家族とはこうあるべき、ということもないし、もちろん、いまそれができない人もいる。せめて今は、この作品の中の、コロナがないパラレルワールドでゆったり楽しんで欲しいと思います。
西田:ドラマ版と製作スタッフは同じなのですが、映画版ではお話自体、日々の暮らしに加えて、生き方といったところまで掘り下げていると思います。春子で言えば、自身の過去に振り返ってみる、今岐路に立たされて迷っている若者たちに対しては、親の思いを押しつけたりせず許容している。迷っているならそれでいいし、やりたいことがあるなら進めばいい、という。
市川:押しつけられていない、自由なところですよね。“ねばならない”というのがない。
西田:実際に親の立場として子どもにそれができるかは難しいところですが、そういう生き方もいいんじゃないかなと思うんです。
市川:私なんか、ねばならない、ができないタイプ。常にできなかった……。
西田:全然いいよ、いいんだよ実和子ちゃん。ほんとうにそのまんまでいいよ……。
(text:fy7d・遠藤義人/photo:小川拓洋)
(ヘアメイク:ナライユミ/スタイリスト:岡本純子)(衣装協力:マッハ55リミテッド、スズキ タカユキ、チェリーブラウン)
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