映画初主演となった『“隠れビッチ”やってました。』が第32回東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞するなど、女優として着実にキャリアを積んできている佐久間由衣。そんな彼女の最新作が、芥川賞作家・津村記久子の小説を映画化した『君は永遠にそいつらより若い』だ。
佐久間が演じるのは、やりたいことと自分のできることの狭間で思い悩む大学4年生・堀貝佐世。不器用でお人よし、処女であることを自虐し、欠落感や劣等感を抱える、一癖も二癖もある女性だ。「私は基本的に超ポンコツだと思っているので、共感ができる部分は多かった」と語った佐久間は、本作でホリガイを演じ、どんなことを思ったのだろうか――。
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佐久間：先に原作を読ませていただいたのですが、私が演じたホリガイも、奈緒ちゃんが演じたイノギさんも、他人から見たら、普通の日常と一括りにされてしまうかもしれませんが、本人にとっては、もがき、苦しみ、喜びなどいろいろな気持ちがあるわけで……。そういう感情を、とても丁寧にフォーカスしている作品だなと感じました。
佐久間：普段から小説を読むのが大好きなのですが、小説ならではの表現の仕方を、2時間という時間で映像化するのは、とても難易度が高いだろうなと思っていました。実際、脚本をいただいたとき、すごく大切な言葉が凝縮されていました。これをしっかりと私たちが体現していく責任みたいなものは、強く感じました。
佐久間：作品に入る前に、吉野（竜平）監督と、役についてかなりお話をさせていただいたので、現場では、ホリガイとして感じたことを、そのままストレートに表現することを大切にしました。だから、共演させていただいた奈緒ちゃんとか、他の共演者ともすごく自然でいられました。
佐久間：奈緒ちゃんはイノギさんとしてそこにいてくださったので、抱きしめたら折れてしまいそうな儚い存在として、ホリガイとしてもすんなりと接することができました。いろいろと話す時間もいただけたので、信頼関係みたいなものも築けましたし、やっぱりすごく素敵な女優さんだなって、毎日感じていました。パーソナルな部分でも、とてもユーモアのある方で、ボソッとつぶやくことがとても面白くて、現場を和ませてくれる存在でした。
佐久間：特に主演だからと意識していたことはなかったんです。とにかく明るくて和やかで平和な現場だったので、その場にいられて幸せだな～という気持ちでいたら、時間が過ぎていたという感じでした。私が言うのも変ですが、吉野監督がとても可愛らしい方で、自然と監督について行っていました（笑）。
佐久間：私は基本的に好奇心がとても旺盛で、できることならなんでもやりたいと思ってしまうタイプなんです。とりあえず飛び込んでみる。そこで失敗したら反省して……という繰り返しかなと。
佐久間：そんなこともなくて……。いまって、なにかにチャレンジする前にいろいろな情報が入ってきてしまうので、どうしても躊躇してしまうことが多いじゃないですか。そういう部分は理解できます。あと、私は自分自身、超ポンコツだと思っているので、あまり自分に自信を持っていないですね。ただ、日々生きて、誰かと関わっているだけで、誰かを救っているかもしれないというのは、この作品を通じて感じたことではあります。
佐久間：もちろん、見ていただいた方の声というのは、すごく励みになっていますが、作品を作ることって、スタッフや共演者をはじめ、とても多くの人が関わっているので、その分、出会いも多いんですよね。すごく魅力的な人が多く、いろいろなパワーをもらえる。それが大きなエネルギーになっていると思います。周りで支えてくれる人がいて、その人たちの期待に応えたいという思いは強いです。
佐久間：ハマっているというわけではないですが、自分のベストの状態ってどういうときなんだろうというのは、すごく興味があります。それが分かれば、ベストの状態じゃないときの対応もできるし、必要なものと必要ではないものの取捨選択もしやすくなると思うんです。そのためには、やっぱり睡眠や食事などの生活もしっかり気にしていきたいなと思っています。
佐久間：日々を過ごしていて、楽しいこととか、大変なこととか、いろいろあると思うのですが、そんななかで、できない自分を否定も肯定もせず、ただ見つめる気持ちや、同じように誰かを助けると意気込むことなく、自然と誰かを助けていたりすることがある。そういうことを気づかせてくれる映画だと思います。
（text：磯部正和／photo：小川拓洋）
1995年3月10日生まれ、神奈川県出身。映画『人狼ゲーム ビーストサイド』（14年）で女優デビュー。その後、17年放送の連続テレビ小説『ひよっこ』で、主人公の親友・助川時子を演じ注目される。『"隠れビッチ"やってました。』（19年）で映画初主演を飾り、同作で第32回東京国際映画祭・東京ジェムストーン賞を受賞。ドラマ『彼女はキレイだった』（21年）にも出演し、若手実力派女優として注目されている。
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