2005年12月6日生まれ。神奈川県出身。4歳でモデルデビューを果たし、その後は子役として活動を始める。主な出演作は、TVドラマ『私を離さないで』(16年)、大河ドラマ「おんな城主直虎」(17年)など。映画では、『ヒロイン失格』(15年)、『アイネクライネナハトムジーク』(19年)、『浅田家!』(20年)をはじめとする話題作に数多く出演。主要人物の幼少期や少年時代を担ってきた。21年は本作のほかにTVドラマ『青のSP(スクールポリス)-学校内警察・嶋田隆平-』や『ひきこもり先生』、映画『Arc アーク』などに出演している。
中学生の自分にしか出せない表情が映し出されている/中川
まもなく公開を迎える注目の1本は、CMディレクターとして600本もの作品を手掛けてきた成田洋一が映画初監督に挑んだ『光を追いかけて』。監督の故郷でもある秋田県を舞台に、豊かな田園風景が広がる一方で、少子高齢化に見舞われる架空の町が描かれている。
両親の都合で父親の故郷に引っ越してきた中学2年生の彰。転校先で孤独を抱えているなか、不思議な魅力を放つ不登校のクラスメート真希と出会う。2人は空に浮かぶ謎めいた“緑の光”を目撃し、田んぼにミステリーサークルを発見。本作では、共通の秘密を持った2人が距離を縮めながら、それぞれの悩みに葛藤する姿が描かれている。そこで、彰を演じた中川翼と真希役でヒロインを務めた長澤樹の2人に、現場での思い出やお互いの印象について語ってもらった。
中川:僕は前からSF要素のある作品が好きだったので、お話をいただいたときは「UFO」や「ミステリーサークル」というキーワードが書かれているのを見て、すごくうれしかったです。
中川:秋田に行ったことはありませんでしたが、読んでいるだけで秋田の美しさが自然と想像できて、頭のなかで綺麗な画が思い浮かびました。
長澤:私も翼くんと同じで、秋田の魅力が詰まったすごく美しい映画になりそうだなと思いながら何回も脚本を読み返しました。あと、UFOや宇宙人の存在は信じているほうなので、どういう映画になるのかなとワクワクする気持ちも大きかったです。
中川:思い描いていた以上に壮大で、全てのシーンを秋田で撮ったとは思えないくらいにいろんな場所が映っていたので、すごく感動しました。
長澤:私が印象に残っているのは、田んぼで追いかけっこしているシーン。特にセリフもなく、振り返って微笑むくらいでしたが、きれいなシーンなのですごく好きです。見るたびにいろんな発見もあるので、何回も見たい映画になっていると思いました。
長澤:それは、全部そうかもしれないですね。
中川:確かに、僕も13歳のあのときの自分だから、あの表情やあの感情の出し方ができたんだろうなと感じました。
中川:初めて会ったときは、ほとんど言葉を発してなかったかなと。
長澤:それはお互いにだよね(笑)。
中川:僕が人見知りなうえに、長澤さんがミステリアスな雰囲気をまとっていたので、同じ部屋にいても全然話しかけられなくて。役のことを考えたら、仲良くならないといけなかったんですが……。
長澤:お弁当を一緒に食べてるときも、最初はまったく話さなかったので、大丈夫かなと思ったこともあったほど。仲良くなるまでに、結構時間がかかってしまいました。
中川:役を通して、会話のキャッチボールをしていくなかで距離が縮まって、休憩中も話せるようになりました。
長澤:「この話をして仲良くなった」とかではなく、本当に徐々にでしたね。役の話から始まって、だんだん他愛のない話ができるようになっていきました。
中川:ミステリアスな雰囲気なのは変わっていませんが、より大人っぽくなったなと。2年も会っていないと、雰囲気は結構変わるものだなと思いました。
長澤:私は、まだ2年しか経ってないんだなという感じですね。もっと前のことのような気がしています。
長澤:まさにその通りで、すべてにおいて支えてもらっていたと思います。演技面でも勉強になりましたし、監督と話している姿が絵になっていたので、憧れていました。
中川:いえいえ、そんなことないです(笑)。長澤さんは、最初から完璧でした。
長澤:あと、今回は親元を離れて秋田に長期で滞在していたので、ひとりで不安もありましたが、いろんな話をしているうちに安心することができたので、翼くんがいなかったらどうなっていたことか……。
中川:それは僕も同じですね。中学生で1ヵ月もひとりで地方に行くのは初めてだったので、すごく心強かったです。
役を探っていく達成感と楽しさを味わうことができた/長澤
中川:最初に会ったときから思っていたのは、相手を魅了するような目力。奪えるものなら奪いたいと思ったくらい。うらやましかったです。
中川:いや、無理でしたね(笑)。そういったところが、ミステリアスな魅力にもつながっていると思いました。
中川:僕の場合は、監督から「ありのままでいてほしい」と言われていたので、そこは意識していました。ただ、自分らしくいることを一番大切にして演じるというのが初めてだったので、最初は少し戸惑いました。自然に発信していけばいいんだと気が付いてからはあまり苦労することもなかったです。ドキュメンタリーを撮っているような感覚に近かったと思います。
長澤:私もああしようとか、こうしようと決めることなく、その場で自然に出たものを大切にしました。
中川:そうですね。ほとんど役と一心同体でした。彰が成長するのと同時に僕も成長できたので、絵が上手いこと以外は、ほぼ一緒だったと思います。
中川:僕としては苦手だと思っていないんですが、周りからの評価を聞くと得意とは言えないんだろうなという感じです(笑)。
長澤:実は、最初に真希のことを知ったときは、自分とは正反対の子だという印象を受けたので、ちゃんと演じられるのかすごく不安になりました。でも、演じて行くにつれて、少しずつ真希のことがわかるようになり、自分との共通点も見えてきたので、思っていたより難しい子ではないんだなと。自分の感情に素直な子なんだなと気が付いてからは、自分と似ているかもしれないと思うようになりました。
長澤:自分探しにもなりましたし、役を探っていく達成感も味わえたので楽しかったですね。最初に監督から「真希のことを一番わかっているのは、自分だよ」と言われたときは、意味がわからなかったんですが、撮影の最後には「私が真希です」と自信を持って言えるようになりました。
中川:家の中で、真希に振り払われてドンと壁にぶつかってほしいと監督に言われたとき、どういうアクションをしていいのか困っていたら、柳葉さんがアイディアをくださったんです。そのおかげですごくうまくいったので、感動しました。
長澤:私はずっと「NGを出しちゃいけない!」という気持ちが強かったんですが、柳葉さんとのシーンでNGを出してしまったら、「ドンマイ」と声をかけてくださったんです。その言葉ですごく安心しましたし、セリフを追うことばかりを考えて撮影に挑むのは逆に失礼なことなんじゃないかなと。そこからは真希としっかり向き合い、理解することに時間を使うことができました。柳葉さんは、わかりやすい言葉で教えてくださるので、ありがたかったです。方言なども教えていただきました。
中川:それから、稲庭うどんのキッチンカーを差し入れしてくださったこともありました。初めて食べたので、すごくおいしかったです。
中川:生駒さんは、アイドルをされている姿をずっと見てきたので、その方が隣にいると思うと緊張しましたが、一緒の空間でお芝居ができて感激しました。
長澤:あと、生駒さんが現場に入られると、みんなの笑顔が増えますし、その場がすごく華やかになるんです。それは生駒さんの魅力でもあるので、私もそういう人になりたいなと憧れました。
中川:僕は、比内地鶏の親子丼です。3回食べたのですが、また秋田に行ったら一番に食べに行きたいと思っているほど。とにかくおいしかったです。
長澤:食べ物は、本当にどれもおいしかったよね。あと、秋田の景色が想像以上にきれいで驚きました。私は屋根の上に登るシーンが結構ありましたが、そこからの景色も素敵で、見えなかったものが見えるような感覚がすごく好きでしたね。あそこは、私にとっても真希にとっても、自分の居場所だったと思います。
中川:本当に自然豊かで居心地が良くて、風が通るだけでリラックスできました。ぜひみなさんにも行って体感してほしいですね。
長澤:確かに、実際に行かないとわからないことも多いからね。
中川・長澤:はい、行きたいです!
長澤:食べたいものもたくさんありますし、行きたい場所もたくさんありますから。
中川:今回は秋の秋田でしたが、春も夏も冬も味わってみたいので、季節ごとに訪れたいです。
中川:人が作ったようには見えなくて、本物なんじゃないかと思ったくらいでした。
長澤:あそこまできれいにできると思わなくて、びっくりしたよね。実際に、UFOが作ったものではないと知りつつも、感動しました。しかも、ミステリーサークルのなかに寝っ転がれることなんて絶対にない経験なので、うれしかったです。
中川:本当に楽しかったね。
中川:僕は、テレビでUFOや宇宙人を検証している番組を見てから興味を持つようになりました。いまも存在していると信じています。
長澤:私は特にきっかけはないですが、あるとき「宇宙人からしたら、私たち地球人が宇宙人なんじゃないかな?」と気が付いてから、別にいても不思議じゃないなと。なので、私も信じています。
長澤:そうですね。本当に見ることができたら、すごい思い出になるだろうなとは思ってました。不安はありますが、実際に見てみたいなと。
中川:僕も同じことを思っていました。もちろん、ちょっと怖いですけどね。
中川:僕ではないんですが、お母さんが子どもの頃にUFOを見たと言っています。本当かはわかりませんが(笑)。そういう話を聞いていたこともあったので、この映画と縁を感じた部分はありました。
長澤:「あれ?」と思うことはありますが、私が忘れていることが原因で起きている場合がほとんどですね(笑)。なので、いつかUFOは見れたらうれしいです。
中川:僕はサッカーです。プレーするのも好きですが、見るのも好きです。日本だけでなく、海外リーグの試合を観戦するほど夢中になっています。
長澤:私がハマっているのは、料理。5人家族なので、朝・昼・晩と全員分の料理を作っています。まだあまり上手くはないですが、お父さんやお母さんから教えてもらったり、自分で調べたりして作るのが楽しいです。
中川:撮影現場にいると、周りの景色が輝いて見えるんです。それを感じたくてお芝居をしているところがあるかもしれないです。これまでももちろんお芝居は好きでしたが、この作品を通して、改めて現場の楽しさに気付かされました。それが僕にとっては、俳優としてのやりがいになっています。
長澤:私が好きなのは、現場に行く前に準備をしている時間。現場でしか作れないものや新しい発見もいいんですが、その前にいろいろと考えたり、人と話したりする時間が楽しいんですよね。あとは、新しい人と出会って、新しい作品を作れるところもこの仕事の好きなところです。
中川:最近は、勉強をするのが楽しくて、なかでも数学が好きなので、いつか数学の先生の役を演じてみたいですね。そのために、学校でもいつも先生を観察しています。
長澤:私はオードリー・ヘプバーンがすごく好きなので、女優としても人としても、ああいう素敵な方になりたいです。『ローマの休日』から始まって、最近は少し大人な映画『噂の二人』を見たりしています。
中川:中学生だから感じられたや寂しさ、大人に対する怒りなど、そのときだから生まれた感情が自然と映し出されているような作品になりました。僕も等身大の自分で全力で挑んだので、そういったところを見ていただきたいです。
長澤:秋田の魅力や雰囲気はもちろん、音や匂いにいたるまでギュッと詰まった映画になっているので、ぜひみなさんには映画館で見ていただきたいと思っています。
(text:志村昌美/photo:谷岡康則)
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