1994年12月2日生まれ。福井県出身。イラストレーターとして10代で商業デビューしたのち、「君の膵臓をたべたい」「君は月夜に光り輝く」などで小説の装画を手掛ける。大学の卒業制作として発表したオリジナルアニメーション「夢が覚めるまで」では、監督・脚本・演出・レイアウト・原画・動画・背景と制作のすべてを担当。累計500万回再生超のバイラルヒットを果たした。劇場版『名探偵コナン』、劇場アニメ『ジョゼと虎と魚たち』といったアニメーション作品へのクリエイター参加と並行して、音楽アート集団「CHRONICLE」でのアーティスト活動なども行う。2019年1月には、アニメーションスタジオ《FLAT STUDIO》を設立。イラスト、アニメ、小説、漫画、作詞など表現の活動は多岐にわたる。
『サマーゴースト』loundraw監督インタビュー
気鋭のイラストレーター、26歳でアニメーション映画監督デビュー!
先が見えなかったつらい時期に、1枚の絵に救われた
10代で商業デビューして以来、気鋭のイラストレーターとして注目を集めているloundraw。小説「君の膵臓をたべたい」の装画や劇場版『名探偵コナン』へのクリエイター参加を経て、26歳という若さでアニメーション映画監督デビューを果たした。
初監督作『サマーゴースト』では、それぞれに悩みを抱える友也・あおい・涼の高校生たちが、花火をすると現れる通称“サマーゴースト”という若い女性の幽霊との出会いを通して、自分と向き合っていく姿が描かれている。そこで、原案が生まれた経緯や自身が抱えていた葛藤、そして作品に込めた思いについて語ってもらった。
監督:上京してから2年ほど経ち、お仕事をたくさんいただけるありがたさを感じる一方で、世間から求められる自分に応えようとするあまり、先が見えなくなっていく辛さを感じていた時期でもありました。そんななかで、一番表現したいものを目指して描き上げたのがこのイラストです。あの時期の僕にしては少し変わった色遣いをしているのですが、いい反応が返ってきたので、僕にとってはそれが救いとなりました。
監督:そうですね。最初はやりたいことと求められることが同じでしたが、仕事をしていくなかで、過去の作品に近いテイストを期待されるようになり、先に進んでいこうとする自分とだんだんズレが生じてしまっていたんだと思います。
監督:まずは、単純にスッキリしました。それまで溜まっていたものをすべて吐き出せましたし、やってみたいと思っていたこともできましたから。「この絵が描けるならまだ大丈夫」と自分のなかで確信が持てました。
監督:イラストとして完結していたので、それは一切ありませんでした。そのあと、映画を作ることになった過程で「線香花火で死者に会える」というアイディアを思いついたときに、このイラストを描いたときの気持ちと重なるのではないかなと。その流れで、タイトルも同じものを使用することにしました。
監督:昔から乙一さんの作品は拝見していたので、もともと好きな作家さんでしたが、今回はプロデューサーさんからご提案いただいたのがきっかけです。物語のなかに少し影のある部分もあれば、ユーモアもあり、絶望もあれば救いもある、そんな作風がとても好きだったので、お願いすることにしました。
監督:個人的な部分が一番投影されているのは、周りから期待されるなかで、本当は自分のしたいことがある主人公の友也です。ただ、人生に対する不安や諦め、大人の不条理に対する思いなど、ほかの人物にも少しずつ自分が散りばめられているので、どれも分身のような感覚はあります。
監督:なぜそのキャラクターが現実や生きることに対して疑問を抱いているのか、といった部分は薄っぺらく描きたくなかったので、チーム全体ですごく気を遣いました。それぞれの人物の背景にあるものをきちんと見せるために、セリフや表情などかなり繊細に扱っています。
監督として大事なのは、どれだけ仲間を信じられるか
監督:生きている3人とは少し違うものにしたいけれど、かつて生きていた人間としての人間味も出したいという、相反する2つの要素を表現したうえで、象徴としても特徴的でなければいけなかったので、服装や色味にはかなり悩みました。
監督:重視していたのは、素で話している状態が役に近い方にすること。理由としては、よりリアルであることが大事だと思っていたからです。選ぶうえで、サンプルボイスだけでなく、ラジオやその方が話している動画をチェックさせていただくことも。そのなかで、「このキャラクターと一番近い人は誰か」という目線で選ばせていただきました。
監督:絢音は幽霊ということもあり、ほかの3人とは少し違う存在であって欲しいという思いがあったからです。特に今回は、アニメーションと実写の中間に位置する表現が必要だったので、アニメ側からは声優、実写側からは俳優という意味で川栄さんにお願いしました。
監督:録り方はあまり変わりませんが、少し気の抜けた感じを出すために、みなさんには座ったまま演技をしてもらう方法を試してもらいました。立った状態と座った状態、両方でテストを行い、それぞれがベストな形で録っています。
監督:今回に限らず、僕の作品はセリフのテンポが速く、タイミングにすごくシビアなので、何回もテイクを重ねてしまう現場なんです。僕にとってはすごく楽しい作業ですが、演じられる方からすれば「いつOKが出るんだろう」と不安だったのではないかと心配で……。吐息だけで何テイクも録ることもありましたからね。なので、楽しかったと言っていただけて本当によかったですし、僕のわがままに付き合ってくださって、みなさんには感謝しかありません。
監督:僕のなかでは、クリエイターからアーティストになった3年だったなと感じています。そこに優劣はありませんが、周りから求められるものにいかに応えるかというところから、自分のなかにあるものを提示していく姿勢に変化したというのが一番大きかったかなと。「自分が本当に好きなものは何なのか」と悩むなかで、自分と向き合う時間が多かった3年だったと思います。
監督:もともとは、アニメを作りたいという意志表示を込めてスタジオを立ち上げました。なので、創作意欲が刺激されるほうが大きかったですね。ただ、イラストレーターとして1人でやっていたときとは違って、周りのスタッフに細かいニュアンスを伝えるのが大変なので、意思疎通の難しさは感じています。1人で目指すゴールとみんなで目指すゴールとでは、違いますから。そういう部分での苦労は、1人のときよりも増えたかもしれません。
監督:監督として大事だと感じたのは、どれだけ仲間を信用できるかということ。特に、映画となると、問題が起きたときに僕では手が出せないカットもあるので、そこでスタッフにどれくらい任せられるかという判断はすごく重要でしたし、監督という仕事の大変さを痛感した瞬間でもありました。と同時に、僕だけが知っている設計図の空間がひとつずつ出来上がっていく様子を見ることができる喜びは、何物にも代えがたかったです。
監督:この映画を作り始めた頃は、まだいまのような状況ではなかったですが、社会情勢が変わったことで、この題材をいまの世の中に出すことの意味をより考えました。扱っているテーマを含めて、妥協のないものにしたいと決意を新たにできたと思います。
監督:僕の場合は、「君の膵臓をたべたい」や「君は月夜に光り輝く」など、これまで担当させていただいた小説や物語が自分のなかに色濃く生きていると感じています。作品を読んで想像して生まれた絵を描いたものが評価され、それによってloundrawができていますからね。
監督:実は、イラストレーターになろうと思ったことはありませんでした。最初は、副業としてイラストが描けたらいいかな、くらいにしか考えていなかったので。ただ、大学に在学しているときからお仕事をいただくようになり、就活の時期にいまの事務所から「上京することがあればサポートするよ」と言っていただいたのは大きかったです。作品づくりに専念できるのであれば、そんな機会はあまりないことなので、就活はやめて挑戦しようと上京しました。
監督:まずは、アニメーションという表現をもっと突き詰めたいですね。そのほかは、どんなことでも自分の絵に活かされると思うので、やれるのであれば何でも挑戦したいです。題材については、おそらくこの作品が世に出て、ご覧いただいたみなさんからの反応を見てから、次に自分が何を描きたいのかがはっきりする気がしています。
監督:この物語は、「どうして生きているのか」「どうしてがんばらなきゃいけないのか」といったことをテーマにしています。とはいえ、ひとつの答えが明確に出る作品ではないですし、僕自身も正しい答えを伝えるつもりはありません。ただ、映画を観たあとに、少しでも前向きな気持ちになれる作品になっていればいいなと願っています。
(text/photo:志村昌美)
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