1973年3月生まれ。スカウトされモデルとしてデビューしたが、『若い男』(94年)で映画デビューを果たすと数多くの映画賞で新人賞を獲得し一気に俳優として注目される。日本でも大ヒットした『イルマーレ』(01年)では不思議な恋に落ちる青年を、『ハウス・メイド』(10年)ではメイドと関係を持つ一家の主を、『10人の泥棒たち』(12年)では組織のボスを、『新しき世界』(13年)では潜入捜査官を、『暗殺』(15年)では裏の顔を持つ警備隊長を、『観相師-かんそうし-』(13年)では逆賊の相を持つ王の弟を、『神と共に』シリーズ(17/18年)では閻魔大王など個性的な役柄を演じ続ける。ファン・ジョンミンとは強い絆で結ばれた『新しき世界』以来の共演となる。その他の出演作は『ラスト・プレゼント』(01年)『黒水仙』(01年)『オー!ブラザーズ』(04年)『タイフーン TYPHOON』(05年)『ビッグマッチ』(14年)『オペレーション・クロマイト』(16年)『代立軍 ウォリアーズ・オブ・ドーン』(17年)『サバハ』(19年)など。また最近では、主演を務めたNetflixのドラマ『イカゲーム』(21年)が話題を呼んでいる。
『ただ悪より救いたまえ』イ・ジョンジェ インタビュー
『新しき世界』のコンビが激突! 暴力と暴力、狂気と狂気をぶつけ合うノワール・アクション
韓国で『新感染半島 ファイナル・ステージ』を超える大ヒットを記録!
元韓国国家情報院の暗殺者インナムは、東京での仕事を最後に引退を決意する。ところが、かつての恋人がバンコクで殺害され、その娘が行方不明だと知らされる。インナムはバンコクに飛び、関係者を次々と拷問にかけて娘の居所を突き止める。しかし、インナムに兄を殺された殺し屋レイも、復讐のためにバンコクに降り立っていた。殺戮を生業に生きてきた2人の男の暴走は、どちらかの息の根が止まるまで終わらない!
今作『ただ悪より救いたまえ』が長編第2作となるホン・ウォンチャン監督は、ナ・ホンジン監督の『チェイサー』(08年)『悲しき獣』(10年)などの脚本を手がけてきた鬼才。インナムが抱えるやるせない苦悩をぶっ飛んだ暴力描写とスタイリッシュなアクションで包み、センチメンタルでありつつもドライという独自の美学を追求する。
生き別れた娘を探す主人公インナム役は、韓国が誇る名優ファン・ジョンミン。その命を狙う無慈悲な殺し屋レイには、『新しき世界』(13年)ではジョンミンと義兄弟の絆で結ばれていたイ・ジョンジェ。互いに気心の知れた2大スターが、暴力と暴力、狂気と狂気をぶつけ合う。
ジョンミン演じる主人公を執拗につけ狙い、行く先々で死体の山を築き上げる凶暴な殺し屋レイを演じたイ・ジョンジェにインタビューした。
・世界がドハマりした『イカゲーム』熱演の記憶も新しいイ・ジョンジェの他インタビュー写真、最新作『ただ悪より救いたまえ』場面写真はこちら!
イ・ジョンジェ:言うまでもなく、すごく息が合いました。共演は7年ぶりですが、実は普段からよく会う間柄なんです。『新しき世界』とはまた違った、追いつ追われつのキャラクターだったので、とても新鮮な感じがしました。先にファン・ジョンミンさんがキャスティングされていて、あとから私にオファーがあったんですよ。シナリオを読んでからジョンミン兄さんに電話しました。「ジョンミン兄さん、本当にこの役やる?」「ああ、やるよ」「じゃあ僕もやるよ」と(笑)。とても良いシナジー効果が生まれたと思います。
イ・ジョンジェ:現場ではお互いに役作りに集中していました。特にアクションが多い映画だったので、ホテルに戻ってからも各自アクションの練習に余念がありませんでした。そういえば、一度タイでの撮影の時に、ホテルで夕食を終えてから散歩がてらナイトマーケットに一緒に行ったことがありました。
イ・ジョンジェ:私は実質3、4日くらいしか日本ロケに参加してないのですが、先に日本に来ていたファン・ジョンミンさんが連日“食担当”のガイドさんみたいになって、あちこち美味しいお店に連れて行ってくれましたよ。お寿司や焼き肉など、しっかり事前リサーチされていたので、とても美味しい思い出です!
イ・ジョンジェ:まず韓国ではフェッチプ(刺身を出すお店)のシーンがあったのですが、夕日がとってもきれいで「韓国にもこんな場所があるのか」と思ったほどです。よくこんな場所を探してきたなあ、と感心しました。
日本のロケでは、日本の伝統的な葬儀のセットで撮影をし、建築物なども見物できました。東京での撮影では真横を赤い電車がずっと走行しているシーンがあったのですが、すごく異国的な感じを演出できてよかったと思いました。
タイは昔『タイフーン/TYPHOON』(05年)の撮影で来たことを思い出しました。今回レイの首にはタトゥーが入っているのですが、タイは暑い国なので汗でそれが消えないかと心配してたら、ヘアメイクさんたちが工夫して消えないようにしてくれたんです。おかげで安心してアクショーン・シーンに取り組むことができました。幸にも冬だったので、そこまで暑さに苦しむことはなかったです。
凶暴な殺人鬼レイと『イカゲーム』で演じた冴えない主人公とのギャップ
イ・ジョンジェ:私は前の作品とは全く違うジャンルや役をやってみたいと思う方なんです。本作の前はすごく正義感に満ちた役をやっていたので、その反動もあってレイというキャラクターを選んだ部分がありますね。キャラクターについては、どう作り上げていけばいいのか、かなり悩みました。どんな生き方をしてきたのか、どんな性格なのか、見た目でもある程度説明できるように工夫したつもりです。物語の軸からぶれないようにしながらも、そういった要素を入れ込んでレイを完成させました。
イ・ジョンジェ:なぜそこまでインナムに執着するのかという問いに対して、レイは「覚えていない。理由など重要ではない」と言いますよね。兄を殺されたことは単なる最初のとっかかりでしかないのだと思います。自分がインナムを捕まえて殺そうと決意したことが重要であって、理由は重要ではないのでしょう。そこにはレイの育ってきた環境や複雑な性格が影響していると思いますね。
最後の方でインナムがレイに「どうしてここまでするんだ」と聞きます。そこでレイが本音を話しますよね「お前が死んでいくさまが見たいからだ」と。観客の皆さんはそんなレイに「こいつは一体何者なんだ?」と思うでしょうね。
イ・ジョンジェ:実は最初にこの役をパク・ジョンミンさんにオファーすると決まった時、周りの人たちの間では「彼がこの役をやると思うか?」という反応が一番多かったんです。でも、私はなぜかパク・ジョンミンさんがやると言う気がしたんですよね。
これまでの作品でパク・ジョンミンさんが演じてきたキャラクターは、どれもパク・ジョンミンさんでなければ成立しなかったと思うんです。今回もとても独特なキャラクターですし、パク・ジョンミンさんはユイというキャラクターに興味を抱いて挑戦したいと思うのではないかという気がしました。
最初にユイの姿で登場したジョンミンさんを見たときは驚きました。美しく着飾ってくるのかなと思ったら、すごくお腹がでていて、しかもへそ出しのTシャツだったので。普通だったらそのお腹は隠したいと思うんじゃないかなと(笑)。でも、ユイというキャラクターが、ジョンミンさんによってとても人間的なキャラクターになったと思います。素晴らしかったです。
イ・ジョンジェ:シナリオ作家として長らく活躍されていたこともあってか、臨機応変に現場でセリフを変更することに長けています。そしてスタッフや役者を信頼して多くの部分を任せるというのがホン・ウォンチャン監督のスタイルだと思います。スタッフ、俳優と監督で1カットごとにたくさん話合いをしながら撮影しましたね。
イ・ジョンジェ:ナイフを使ったアクションに関しては、どんなナイフで、どんな模様のものがレイに似合うかというところから悩みました。そのあとでレイの手慣れたナイフの動きなどを作り上げていきました。そこにナイフを振りかざす直前のレイの心理、アクション後の感情、行動が入ってくるわけです。今回はその一連の過程がすごく大切だったと思います。
イ・ジョンジェ:白竜さんは、とても重みのあるセリフまわしで臨場感を出してくださったと思います。ありがたかったです。
イ・ジョンジェ:『イカゲーム』のギフンが日常的に目にするようなキャラクターだった反動もあって、次回作には韓国の国家情報院を演じたスパイ映画『ハント(原題)』という作品が控えています。自分で監督・出演しました。先日クランクアップしたばかりなのですが、ぜひこちらも楽しみにしていてください。
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