1984年、アメリカ、ワシントン州生まれ。幼少期から教会で歌い、ビリー・ホリデイに魅了され、ビリーの通称“レディ・デイ”から“デイ”をもらう。スティーヴィー・ワンダーに歌声を気に入られ、2015年にメジャー・デビュー。デビューアルバム「チアーズ・トゥ・ザ・フォール」でグラミー賞最優秀R&Bアルバム賞にノミネートされる。アニメーション映画『カーズ/クロスロード』(17年)に声の出演をし、コモンと共に歌った『マーシャル 法廷を変えた男』(17年)の主題歌「Stand Up for Something」がアカデミー賞歌曲賞にノミネート。『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』で、第78回ゴールデン・グローブ賞〈ドラマ部門〉主演女優賞を受賞、第93回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされる。
『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』アンドラ・デイ インタビュー
憑依したような演技と歌声で、黒人女性2人目のゴールデン・グローブ賞に輝く
これは美しい曲ではなく、きれいな歌でもない。痛々しくて醜い歌なんです
「ビリー・ホリデイを止めろ! 彼女の歌声が人々を惑わせる」。1940年代、人種差別の撤廃を求める人々が、国に立ち向かった公民権運動の黎明期。アメリカ合衆国政府から、反乱の芽を叩きつぶすよう命じられたFBIは、絶大なる人気を誇る黒人ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイにターゲットを絞る。大ヒット曲「奇妙な果実」が運動を扇動すると危険視し、黒人の捜査官ジミー・フレッチャーをおとり捜査に送りこんだのだ。だが、逆境に立てば立つほど、ビリーの華麗なるステージは輝きを増し、肌の色や身分の違いを越えて全ての人を魅了する。やがてジミーも彼女に心酔し始めた頃に、FBIが仕掛けた罠とは? そしてその先に待つ陰謀とは──?
1959年に44歳で亡くなったビリー・ホリデイとアメリカ合衆国の対決、その真相を明かす『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』が2月11日より公開される。
ビリー・ホリデイを演じるのは、本作が演技初挑戦となるアンドラ・デイ。スティーヴィー・ワンダーに見出されたシンガーで、ブラック・ライヴズ・マター運動のデモでも歌われた逆境の中で立ち上がることを応援する楽曲「ライズ・アップ」で、グラミー賞にノミネートされた。ビリー・ホリデイが憑依したかのような圧巻のパフォーマンスで名曲を歌い上げ、黒人女性の中では史上2人目のゴールデン・グローブ賞を受賞。世界にその名を知らしめたアンドラのインタビューをお届けする。
・『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』リー・ダニエルズ監督インタビュー
デイ:ビリー・ホリデイとの出会いは、11歳のときです。私の通っていた教室の先生に、聴くべき歌手について質問していたんです。私はホイットニー・ヒューストンやアレサ(・フランクリン)のファンだったので、新しい女性シンガーを勉強したいと思っていたんです。彼はビリー・ホリデイを勧めてくれたんですが、私は“誰だ、こいつは?”という感じでした(笑)。でも彼女の声にまるで催眠術をかけられたように、聴くことを止められませんでした。当時は、自分の歌声やトーンが嫌いだったのですが、ビリーのおかげで自分自身の音を持つことができたのです。彼女は独特の声を持っているのに、きちんと自分自分のスタイルを持っていました。そのおかげで、私は自分のやり方を見つけることができたのです。
デイ:実は、最初の頃は勇気がありませんでした。「とんでもない。やりたくない」と思っていました。怖かったんです。ひどい目に遭いたくなかったんです。彼女は私の最大のインスピレーションの源だから、ビリー・ホリデイが遺した功績に汚点を残すようなことは絶対にしたくなかったんです。だから、何度も断ろうとしたのですが、最終的に監督のリー・ダニエルズと会うことになって。そうしたら、リーも「彼女は女優ではない。なんでこんなことになるんだ」と言って、私との仕事を断っていたと(笑)! マネージャーが私たちを強制的に引き合わせたんです。こうやって私たちは出会ったんですが、それは、ビリーとも繋がったということ。彼は、彼女の物語を忠実に伝え、彼女を美しく人間らしく描きたいと心から願っていたのです。映画が彼女の薬物中毒などの負の遺産の正当性を証明するということで、一気に私の心は傾きました。なぜなら、はじめ「麻薬戦争」は、完全に人種問題に根ざしていたということ、世間が知らない真実を明らかにして、彼女の真の姿、つまり公民権運動のゴッドマザーとしての姿を、私たちはようやく目にすることができるようになるわけですから。そのアイデアには本当に感動しました。
デイ:すべてが大変でした(笑)。毎日が緊張の連続で、毎日が切迫していて、毎日が重要だった…。最初のうちは、自分の感情を奮い立たせるのが大変でした。私は、トラウマになるようなことがあれば、記憶から消して、何もなかったかのように振舞ってしまう人間だから、俳優のように感情をだしていくにはトラウマやその感情の根底にあるものを引き出してそれと一緒に過ごし、一日中抱えていく、その上で喜んだり、カリスマ的に振る舞うということは本当に大変なことでした。でも、実はこの役を落ち着いて演じられるようになった時、役が大好きになったんです。だから、私にとって一番大変だったのは、撮影現場を去る時でした。全く予想もしていなかった、そして気構えてもいなかったので、途方にくれてしまいました。本当に帰りたくなかったんです。共演者たちとも別れたくなかった。監督やプロダクションの元を離れたくなかった。そして、ビリーに私の元を離れて欲しくなかった…。私の目的全てが、この映画とこの役に包まれてしまった。だから、一番つらかったのは、ありきたりに聞こえるかもしれないけれど、別れを告げることだったんです。どうすればビリーを完全に手放すことができるのか、まだ考えているところです。
デイ:この映画の準備のプロセスは、このスピリチュアルな人物になるために、ひたすら神に祈って懸命に取り組むしかありませんでした。と言っても、私はその過程を楽しみました。仕事と言うことでもなく、ビリー・ホリデイという人物に浸ることを楽しみました。私たちの魂が融合しているような感じがして、いまだにこの感じが好きなんです。演技指導をしてくれたターシャ・スミスや方言指導のトム・ジョーンズと一緒になって、彼女を見つけだし、自分の経験を彼女に伝える方法を編み出し、その2つの行為を融合させるにはどうしたらいいか考えました。そして、リー・ダニエルズ監督の演出は本当に素晴らしいものでした。彼は、どんなに時間がかかっても、本物でないものは絶対に見過ごしません。素晴らしい才能だと思います。ですから、作業は大変手間がかかっています。あらゆる本、あらゆる記事を読み、彼女の香水、始めの頃は「エメロード」と「ナイト・イン・パリ」で後期になると「ティグレス・&・ツイード」を愛していたことを学びました。ジュエリー、コート、眼鏡、も調べ上げ、彼女のように話し、彼女のように髪を結い、髪を切って(笑)…体重を大量に減らして、タバコを吸ったり、私は飲めないけれど彼女のようにお酒を飲んだり、私は絶対にやらない罵倒をしたりするのもやる必要があったので、すべての本、すべてのインタビュー、すべてのディテールを通じてビリーを完成させていきました。そして、それは、とても楽しい研究の連続でした。
デイ:彼女のように歌うためには、完璧に変えないといけませんでした。私たちの声のトーンは、全く異なっているんです。彼女の声は、もっと喉の高いところにあって、バラバラにして出している。ビリー・ホリデイの声を出すには、この辺りから、高いところへ上がっていって、声になるまで重苦しい道を通って発せられるような感じなの。だから、私は完全に変身する必要があって、それは、私の本来の歌声とはまったく違うものなんです。
デイ:はい、歌いました。そして何年か前に、The Equal Justice Initiative(受刑者に法的代理権を提供する非営利団体)と何かできないかと思い、ブライアン・スティーブンソン(同団体の創設者)がアラバマ州モンゴメリーでリンチの犠牲者の記念碑を建てたときにも歌いました。でも、これは彼女が行ったパフォーマンスのそれとは全く違うと気づきました。これは美しい曲ではありません。きれいな歌でもない。痛々しくて醜い歌なんです。座って楽しむのではなく、聴いて吸収してほしい、この言葉を聴いて理解してほしいという願いが込められているんです。
デイ:歌手の時は歌手としての魂をさらけ出すわけですが、この映画ではそのレベルが違っていて、より深かったと思います。自分の魂をさらけ出すと同時に、ビリー・ホリデイの魂もさらけ出す、そこが違うところです。私たち2人の魂が交差し経験を重ね合わせる。私に関しては、私は私でやっている、私は私を演じることもできるし、私が見せたいように皆さんに見せることもできる。でも、映画の場合は…自分自身にもビリーにも100%本物でなければ、彼女を得ることはできませんでした。彼女を尊重し、彼女の物語を正しく伝えるという、本当の意味での責任がある…この映画は、私の人生で最も困難なことではありました。でも、幸いなことに、私にはリー・ダニエルズがいました。ターシャ・スミス、トム・ジョーンズ、そしてトレヴァンテ・ローズ、タイラー・ジェームズ・ウィリアムズ、ギャレット・ヘドランド、レスリー・ジョーダン、ローレンス嬢という素晴らしいキャストのおかげで乗り越えることができました。
デイ:日本の方々とこうして話しているのがとてもうれしく、素敵なことだと思います。というのも、日本の方々が音楽を心から愛しているというのを知っているから。特にジャズ、そしてビリー・ホリデイのことを、日本のファンの方が本当に愛してくれているのを自分が知っているから。ブルーノートでパフォーマンスをしたんですが、その時のパフォーマンスが人生ベストと言えるくらいの素晴らしい経験でした。理由のひとつは、音楽に対する知識、音楽を大事にする心、音楽に対しての愛というのをどの観客もすごく持っていて、それを感じることができたから。ジャズ、ソウル、ミュージックに対しての愛が溢れているような、そんなパフォーマンスでした。日本に来て歌を歌っているのに、まるでホーム、自分のふるさとに帰ってきたかのような感覚がそのパフォーマンスではあったんです。すごく面白いですよね。音楽への愛以外にも、日本食、ファッションは勿論でしょ! 空のスーツケースを持ってきて全部詰めて帰りたいくらい好き。日本の文化、それから音楽に対する愛、こういったもの全てが私にとってすごくインスピレーションを与えてくれる。特に日本の音楽ファンの音楽に対する姿勢や愛にインスピレーションを受けました。
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