2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。2011年に開催された「ちゃおガール☆2011 オーディション」でグランプリを受賞し、デビュー。『ミスミソウ』(18年)で映画初主演。『小さな恋のうた』(19年)で第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。ドラマは『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(20年)でW主演を務め、『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』(21年)などに出演。映画は『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20年)、『樹海村』(21年)にW主演し、『名もなき世界のエンドロール』(21年)、『哀愁しんでれら』(21年)、主演作『ひらいて』(21年)に続いて『彼女が好きなものは』(21年)にヒロイン役で出演。2022年は5月に放映開始のNHK総合 土曜ドラマ『17才の帝国』、WOWOWオリジナルドラマ「早朝始発の殺風景」に出演。
『HOMESTAY(ホームステイ)』山田杏奈インタビュー
なにわ男子・長尾謙杜と幼なじみ役で共演
現場は、キラキラした目の長尾くんを中心として成り立っていた
Amazonが製作する初めての邦画作品『HOMESTAY(ホームステイ)』。森絵都の小説「カラフル」を原作に、長尾謙杜(なにわ男子)が、高校生・小林真の身体に乗り移り、家族との葛藤やほのかな恋を経験しながら命を見つめ直す“死者の魂・シロ”を演じる青春映画だ。
シロは「管理人」と名乗る謎の人物から、自分と同じく死んでしまった真の身体を借りて100日以内に真が死んだ原因をつきとめるよう命じられる。真の身体への100日間のホームステイ中に見つけなければ、またシロという正体がバレてしまったら本当の死が訪れる。そんな条件で真として生活し始めたシロにかすかな違和感を覚える幼馴染・晶を演じるのは山田杏奈だ。
本作の瀬田なつき監督の『ジオラマボーイ・パノラマガール』(20)への主演に続いての出演、長尾との共演、21歳になった今後の展望などを語ってもらった。
・なにわ男子・長尾謙杜、ひとり2役の鮮烈な演技が世界に衝撃を与える!?
山田:私は中学生ぐらいのときに、原作の「カラフル」を読みました。みんなが読んでる課題図書みたいな本だったので、このお話をいただいて最初に「あ、懐かしい!」と思って。『HOMESTAY(ホームステイ)』という形で映画化することになったこと、あと、Amazonさんが初めて日本で映画を作るということについても、すごく楽しみでした。
山田:この作品は、誰かそばにいて、ずっと見守ってくれてる人がいる。それに気づくっていうのがキーワードというか、すごく大事なテーマになってるんですけど、晶は本当にその役割というか。真の幼なじみとして、ずっと小っちゃいときから一緒に過ごしてきています。その空気感もそうですし、晶がどういう感じで真のことをずっと見ていたのか、というのを大事に演じようと思いましたね。
山田:共通点というか……晶は1本芯が通っているというか、自分がこうと決めたら「私はこうだと思う」というのを割とまっすぐに伝える子だと思っていて。そういうところは似ているのかなと思います。
山田:本当にそこが一番大変でした。視聴する側は「シロが真の身体に入って、真がどういう人生だったのかを探っていく。その中で晶という女の子が出てくる」という目線で見ている人が多いと思うんですけど、晶としては「ずっと一緒にいた真が、なんかおかしい。でもなぜなのかよく分からない」という感じで進めていかなきゃいけなかった。ただ、そこを「分からない」だけで進めてしまうと、見ている人の視点とずれてきてしまうところもあるのかなと思って。そこのバランスもすごく難しかったです。真をどういう目線で見てるんだろうというのは、撮影してるときもずっと考えてました。
──そのバランスは最初からできていたんですか?
山田:以前の真にもシロが入ってるときの真に対しても、晶自身は揺らがないで真っ直ぐでいてあげた方がいいのかな、というのがありました。晶としても、たぶん真がちょっと危うい状態のときがあっても、いつも母の様な目線というか、そういう立場でいてあげるところがあって。真は記憶喪失のようではあるけど、晶自身の性格というか、真との付き合い方として一貫してやろうと思いました。
山田:そうですね。途中で真への思いに気付いたりとか、どういうふうに幼馴染であり母みたいな感じから、女の子として映るようになるんだろうとすごく考えました。晶っていう子をどういうふうに作っていこうか、ずっと考えていました。
山田:今回はタイで2010年に作られた映画(『ホームステイ ボクと僕の100日間』)を見たのですが、それは本当に新しい感覚でした。
原作を中学生の頃に読んだ印象は、やっぱり私自身が感覚的にまだ若かったというか、真についても当時はもっと若い目線で見ていたんだなと思い出しました。でも、実際あの中でお芝居するとなると、そういう若々しさみたいな、今しかない時間を生きている感じがすごく大事かなと。ここは大切にやっぱりしないとな、と思うんです。
山田:初めて今回お会いしたんですけど、キラキラした目をして現場にいらっしゃって。なんかそこは子犬のような感じで、本当に長尾くんを中心として現場が成り立っているっていう感じがすごくして、やっぱりそういう力がある方だなってすごく思って。
映画として繋がったのを見たら、真の過去を演じている時のその目が全然違っていて。覇気がなくて……そういう姿は共演するシーンで私は見ていなかったので、すごいなと思いました。
長尾くんが「当ててください」と言ってくれて、ビンタはしっかり
山田:すごく嬉しくってやっぱり。今回も前回も高校生の話なんですけど、やっぱり瀬田さんの感性で作る世界に参加させてもらえるんだっていうのが嬉しくて、1度瀬田組に参加しているので、こういう感じで作ってもいいですか、というような話もすごく詰めさせてもらえました。本当に安心感があって、さらに新しい発見もありつつ。瀬田さん自身が本当に素敵な人で、私も大好きなんで、現場では本当に楽しかったです。
山田:そうですね。そこまでキャラクターに関して、こうしてくださいというお話はなかったですが、女の子感みたいなものは、『ジオラマ〜』のときよりはあったかな。恋愛作品のキャラクター感みたいなのは意識してやってたかもしれないです。やっぱり真の前で、ちょっと女の子らしくなったり、それ以外のところ私は逆にちょっと声を低めにして、当たり前に真のそばにいる人になろうと思ってやっていました。真への思いにしっかり気付いた後の女の子らしさみたいなものについては話したかもしれない。
山田:真から初めてああいう尖った言葉を投げかけられて、というのはもちろんなんですけど……晶としては、真と話してるつもりなのに、真はシロなんで。晶からしたらちょっと「え?!」って思うような言葉を言われてるんですよ。そこの困惑とリアルタイムにショックを受ける感じをどの塩梅でやればいいんだろうっていうのがすごく難しくて。
でもあそこでガツンと食らわないと、また成立しなくなってしまうっていうのもあって、そこはすごく難しくて。あと真をビンタするところは長尾くんが「当ててください」って言ってくれたので、しっかり叩かせてもらいました(笑)。
山田:確かに。長尾くんは確かずっとヘッドフォンを持って現場にいて、音楽の話をしました。「どんなの聞くんですか?」と質問してくれて、そういう本当に他愛もない話ですけど。実際の年齢が長尾くんはちょっと下なので、そこに何か、あと1枚ある距離感がちょうど良かったのかな、と思います(笑)。
山田:マスゲームを見ているシーンが印象には残っていて。撮影自体も本当に広いスタジアムでやらせてもらったんですけど、実際あの時はマスゲームのパフォーマンスはなかったので、完成作で初めて見て「すごい!」と思って(笑)。こんなすごいことになってたんだっていう驚きもあります。
そして何より、あそこは今までうまく合ってなかった真と晶の感情がお互い素直になって話せているところなので、そこはやっぱり見ていても素敵だなと思いました。
山田:そうなんですよ。スタッフさんから「変わりました!」って(演技のタイミングを知らせる)声をかけてもらって(笑)。
山田:原作のタイトルが「カラフル」ですが、映画の中の色の表現がすごく素敵だなと思っています。CGなので、撮影現場では見られなかったものを完成作で見てみると、日本で作った映画で、こんなに視覚的に綺麗な作品はなかなかないな、と思います。
それが海外で見てくださる方々にも伝わる要素だろうなというのがありつつ、でも、登場人物のキャラクターとかはすごく日本的だとも思うので、そのバランスがやっぱり面白いなって。
日本的な表現のどっちも取ってる作品がいろんなとこで見られることは素晴らしいし、どういう反応が来るんだろうというのが逆に楽しみです。
山田:やっぱり学生だけじゃなくて、社会人の役もやってみたいですね。いま動いている作品で、私は高校生の役なんですが、メインの大人のキャストの方たちが居酒屋で喋ってるシーンがあって。こういうシーンはもちろんやったことないし、監督が「いや、めちゃ楽しかったんだよ」と話していて、そういうシーンでまた違う良さがあるんだろうなと思って。そういうシーンもこれからはできるのかなと思うと、すごく楽しみです。
山田:全然。見た目的には大丈夫って言ってくれる方が多いし、自分でもまだいけると思ってるんで、学生のこの役を私で、と思っていただける限りはやりたいです。ただ、どうしても高校時代のことを忘れてきちゃうので、その感覚をずっと保つという方が、逆に、課題だなと思います。
山田:難しいですね。例えば『ひらいて』は、映画が好きな方が「こういうものを見るぞ」と思って劇場に足を運んでくれたり、いいなって思ってくれる要素が強いと思うんです。私自身もそういう感じで作っていました。でも今回『ホームステイ』で言うと、ちょっとテレビをつけて「あ、これ面白そう。見てみたいね」という感覚に近いというか。例えば「キャストの全員を知らない」という人がいるかもしれない。例えば小学生、中学生が見るかもしれないって考えたときに、そこで出していく芝居の方向もちょっと変えていけないのかな、とか。もちろん根本は変わらないんですけど、見せ方をちょっと変えた方がいいのかなと、撮影するときは思っていました。例えば『ひらいて』などよりは、いい意味ですごく普遍的な入り込みやすいキャラクターで、お芝居的にも感情移入しやすいというか、晶ってこういう子なんだなっていうのがスッと入ってくるお芝居を心がけてやってました。
山田:そうですね。全体を見て、どういう役割で作っていこうというのはいつも考えてるんですけど、やっぱり今回はシロがメインに進んでいく話なので、その中で晶という子がどう見えたら一番映画にとって良くなるだろうということは、いつも以上に考えていました。
あとは「映画を見るぞ」と集中して見てくれる人もいると思うんですけれど、例えばご飯を食べながら見るとか、スマホの画面で見るという人もすごく多いだろうな、と思って。
なので、わかりやすさではないけど、役割を見せるお芝居でもあって、そういうものとして楽しく現場で演じていました。
山田:「この作品を見て救われる人がいるといいな」みたいな。大きいことは言えないんですけど、やっぱり映画を見ることで、ちょっとその後の行動が変わるぐらいの話でもいいんですけど、そういうことってやっぱりあると思って。
今回の晶は最終的に「いつもいてくれたんだ」と分かってもらえるけど、押し付けがましくならない子にしようとずっと考えてたんです。お話としても、そこまで道徳っぽくしていなくても、「ちょっと元気出るな」と思ってもらえる映画になったらいいなと思いましたし、実際見てみても、何かそういう強さ、長尾くん演じる真をはじめ、みんなのそういう芯の部分の強さにすごく元気をもらったので、そういうものが影響を与えたらいいなと思います。
山田:はい、そうですね、すごく自分の中で、大事な作品です。
(text:冨永由紀/photo:谷岡康則)
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