1962年6月19日生まれ、東京都出身。1984年のTBSドラマ『スクール☆ウォーズ』で本格的に俳優デビュー。以後、『SCORE』『太陽が弾ける日』など、多くの映画やドラマで強面の個性を発揮。スタントマンをほとんど使わないアクション俳優としても知られている。“顔面凶器”“Vシネマの帝王”などの異名を持ち、その出で立ちから数々の悪役を好演。OZAWA名義で監督や企画、脚本をも担当。 近年では活動の場をバラエティ、YouTubeなども始め、更なる活躍が今注目される存在。
俺はジェットコースターとか絶叫系がダメだから
“顔面凶器”“Vシネマの帝王”など、数々な異名を持ち、映画やドラマ、そしてバラエティなど数々のフィールドで活躍する俳優・小沢仁志が”還暦記念映画”として、生きざまのすべてをぶつけ、「俳優人生で最後の無茶」を繰り広げる怒涛のアクション映画『BAD CITY』が完成した。小沢仁志によるオリジナル脚本(製作総指揮・脚本はOZAWA名義)となっている。
そこで今回は、本作の製作総指揮として、映画の企画段階から撮影のコーディネートまでこなし、60歳になろうとしている男とは到底信じられないほどの動きで、息つく間もない肉弾戦を披露している小沢仁志に話を聞いた。
・[動画]【前編】小沢仁志インタビュー/ガチンコアクションの撮影「もはや総合格闘技」
・[動画]【後編】小沢仁志インタビュー/役所広司とヤクザ映画共演を熱望
・Vシネ帝王・小沢仁志に戦々恐々 100人超を相手に壮絶死闘『BAD CITY』
小沢:なんか還暦のお祝いみたいな冠がついちゃってるけど、今までやってきたことの集大成みたいな感じだよね。60で線を引くなら、そこで何かやりたいなと思ったということだね。
小沢:別に引退するわけでもないんだけど、自分で脚本を書いていても、これはキツいだろうなと思ったからね。しかも監督の園村(健介)は長回しが多くて、アクションも(カットを)刻まないから。それで結構やりきったつもりだったんだけど、終わってみたら意外に余力があってね。打ち上げなんかも朝までいたくらいだし。ヤマ(山口祥行)は途中で帰っちゃったけどね。
小沢:今の世の中、映画でもコンプライアンスがあってさ。安全管理が大事ということで、がっつり堅くなっちゃってるじゃない。実際問題、企画として還暦を迎える男にこれをやらせるかといえば、そういう判断は絶対にないと思う。普通に考えたらそこで終わりかなと思うじゃん。でもホンを書いているのも、製作総指揮も俺だから。だからやり続けなきゃなと思ったんだよ。
小沢:年齢は一緒だけど、でも俺は戦闘機には乗れないから(笑)。だいたい俺はジェットコースターとか絶叫系がダメだから。俺はカネをもらって危ないことをやってるわけだけど、なんでみんなカネ払って危ないことをやろうとするのかね?
でもこれからの日本映画は海外を視野に入れた方がいいと思っていてさ。やっぱり今、『SCORE』(1995年公開のプロデュース・主演作)みたいな銃撃戦をやったとしても韓国やアメリカには叶わないわけじゃない。あっちは半端ないからね。でもアクションの吹き替えなしでこれだけボッコボコにやっている映画はなかなかないと思う。それなら日本映画でも勝負できると思うんだよね。
小沢:そう、一緒。形が変わっているだけで何も変わってない。とにかく『SCORE』の時はドンパチに終始してたからね。あんだけアホみたいに撃ちまくる日本映画もあんまりなかったよね。だから今度は全く逆の、フルボッコみたいな。基本に戻ってそういうのをやった方がいいんじゃないかなと思ったということだね。
小沢:この作品ってどこか韓国テイストが入っているんだよね。(韓国のドラマ)『バッドガイズ-悪い奴ら-』みたいなものを日本人でやるとしたらどうなるんだろうというようなね。例えば現代の日本では財閥という呼び方はしないじゃない。でも韓国では財閥という呼び方をするし、昔の日本にも財閥という呼び方があったからそうしている。アクションもストーリーも、あまりにも今の日本に寄せてしまうとやりづらいんだよね。この映画に『SCORE』みたいな無国籍な匂いを感じるというのはそういうところだよね。
小沢:俺も完成版を見ていて、ラスト40分なんか現場でやってるときよりも疲れたもん。まだやってるよというね。
小沢:そういうことだね。こういう映画って日本にあまりないじゃない。カネをかけたり、大がかりな仕掛けを作ったりCGを使ったりというのは、どうしても予算がある映画に負けてしまうし、「で?」という感じになってしまう。でもこういう切り口なら「すげえなこいつら。アホじゃないの?」と驚かれるんだよね。海外のいろんな映画祭に呼ばれたんだけど、みんなそういうところに引っかかってるんじゃないかな。
小沢:やっぱりあんだけ切羽詰まったヤマはなかなか見られないと思うよ。「今日は撮影も最終日だから何やってもいいよな」ということで、本気で殴りにいってるから。アッパーの予定だったのがフックに変わったりするし。ヤマも自分がやらなきゃやられる、ということで、マジで当てにいく。本当にギリギリのところでやってたから。しかもそれを12時間だからね。ヤマが打ち上げの途中で帰ったというのもそういうこともあるわけ。俺は朝までいたけどね(笑)。
小沢:俺らの時代は(殺陣の振り付けだけする)殺陣師だったけど、谷垣(健治)、下村(勇二)、(本作監督でもある)園村といった(アクションシーンの撮影の仕方も担当する)アクション監督が出てきて、新しいアクションを生み出そうとしているわけだよ。やっぱり彼らから教わると手法が全然違っていて。新しいおもちゃに触れたみたいでワクワクするわけ。稽古の時には園村から無駄なく疲れない動き方とかよけ方を教えてもらったんだけど、本番になると入りこんじゃって、そういうのを無視して、ぶん回しちゃう。でも逆にそれが良かったんじゃないかと思うんだよね。
「なんでAVコーナーの前にVシネマを置くんだ」と社長に文句!
小沢:アクション監督だから、全編バーッとしたエンターテインメント系かと思ったら、意外や意外。静かなところもあるようなスタイルだったよね。まあでもやっぱりアクションを撮っている時は生き生きとしてたけどね。
ただ俺も監督とかもやっているけど、これからは若手がどんどん出ていってやるべきだよ。アクションチームだけで撮るような低予算映画じゃなくてちゃんとメジャーでやっていかないとダメだよね。それなりの予算で、ちゃんと役者を演出して。その中でアクションを活かしていくようにしないと。最初に「こんなものできるの? 大丈夫?」と思うくらいがちょうどいいんだよね。園村も脚本を読んだ時には「これはアクション監督としてだけでも大変なのに、監督もなんて大丈夫かな」と心配してたけど、「できるかなじゃない。やるんだよ」と言ってやった。そこからじゃないと何も生まれないわけだからね。
小沢:これはやっぱり福岡県の中間市や北九州市といったところが協力してくれて。普段借りられないようなところをロケ場所に使わせてもらったことが大きいよね。クライマックスの舞台となったショッピングモールも、ちょうど解体中のショッピングモールがあったんで、中間市長に頼んで、撮影場所だけは壊さないように残しておいてもらったんだよね。
小沢:そうだね。そういうところでロケができるのも市の協力がないとできないわけだから。検事長室なんかも、中間市役所の副市長室だし。刑事の部屋なんかも役所を使わせてもらっている。土日の休みは使い放題だったし、なんなら議会まで使ってもいいと言われたくらいだから。リリー(・フランキー)さんが記者会見を行うシーンも、中間市のハーモニーホールの会議室を使っている。
小沢:そう。警察署の中のシーンも、そりゃ実際の役所で撮る方が本物になるよね。だけどあれを最初から飾り付けて作るのはものすごく難しい。カネがあれば美術部が書類の山を作ったり、いろいろとやるけどさ。でもそこまでのカネがないなら、役所でやるのが一番。それは助かったよね。
小沢:それはやっぱりパッケージよりも配信がメインになったからというのはあると思うよ。俺、レンタルチェーンの社長に文句言ったことあるもん。なんでAVコーナーの前にVシネマを置くんだと。あれじゃ女の子は借りられないよ。さんざん文句を言ったけど変わらなかったね。でも配信になれば気軽に見られるからね。
ただもうVシネという言葉すら死語だとは思うんだけどね。こんだけレンタルショップがなくなってくるとね。『日本統一』なんかも、テレビに出ているような役者はあんま出てないじゃん。あれ、韓流ドラマと一緒の感覚なんじゃないかね。新鮮じゃん。
小沢:こいつ、いいなとか、かわいいなとか。そういうのを再発見するのと同じなんじゃないかね。だから俺らにとってもとてもいい機会だよね。そこでしか見られないわけだから。昔は、うちはVシネマには出しませんという事務所があったからね。でも今は配信だから、その垣根もなくなってきているし、プロデューサーはそこを意識してほしいよね。基本、役者に境界線はないわけだから。例えばヤクザ映画で、俺と役所広司さんの戦いなんてあったら最高じゃない? そういうキャスティングのシャッフルはあってもいいと思うんだよね。そういうのが観客はワクワクするわけじゃない。そういうワクワクを失わないでほしいよね。それが日本映画を活性化させることにつながると思うんだよ。
小沢:そういうのが映画の本来あるべき姿じゃないかと思うんだよ。テレビじゃないんだから、プロデュースする側のアイデアで日本映画を活性化させていくことが必要だと思うんだよね。
(text&photo:壬生智裕)
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