1976年10月31日生まれ、東京都出身。1987年にミュージカル『レ・ミゼラブル』の日本初演でガブローシュを演じて舞台デビュー。子役としてドラマや映画に出演し、1993年にドラマ『ひとつ屋根の下』で注目される。NHK大河ドラマ「新選組!」(04)で土方歳三を演じ、2006年には続編となるスペシャルドラマ、NHK正月時代劇『新選組!! 土方歳三 最期の一日』に主演。現代劇、時代劇を問わず数多くのドラマに出演するほか、舞台でも活躍し、2015年に『メンフィス』で第23回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。
映画出演作は『それでもボクはやってない』(07)、『最後の忠臣蔵』(10)、『ギャラクシー街道』(15)、『劇場版 きのう何食べた?』(21)、『シン・ウルトラマン』(22)など。2023年は宮藤官九郎と大石静が脚本を手がけるNetflixシリーズ「離婚しようよ」が配信予定。
プスはすごく誇り高いし、かっこいい愛すべきキャラ
おとぎ話の世界に住む緑の怪物が主人公のアニメ『シュレック』シリーズから飛び出し、主役のスピンオフ作も作られた人気キャラクター、長ぐつをはいたネコのプス。待望の続編『長ぐつをはいたネコと9つの命』が完成した。愛くるしい容姿ながらも剣の名手で、多額の懸賞金をかけられたお尋ね者のプスだが、いつの間にか猫が持つ9つの命うち8つを使い果たしていた。プスは猫に変装している人懐こい犬の「ワンコ」、かつて結婚をドタキャンした元カノのキティと共に最後の命をめぐって、なんでも望みを叶える「願い星」を探す旅に出る。「願い星」を狙うゴルディと3びきのくま、プスを執拗に追う最恐の賞金稼ぎのウルフらとの攻防を通して、生命や恐怖といったモチーフも描かれる。
日本語吹替版で、モフモフの外見にワイルドかつダンディな心を持つ伝説ネコの声を担当するのは山本耕史。プライドが高くカッコつけたがるプスというキャラクター像を介してパートナー観、死生観まで語ってもらった。
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山本:ありがとうございます。本当に声のお仕事はいつも大変ですね。僕ら、いつも顔と動きでも芝居しているから、声だけっていうのは何度やっても難しい。大丈夫なのかなって。自分で判断できないんです。
山本:今回はオリジナルの英語の音声に対して、「こんなニュアンスかな?」と当てるので、そういう難しさもありました。演じることはもちろんキャッチボールではあるんだけど、収録では相手役の声が入っていない部分もあって、ある程度は自分の中で作っていかないといけない瞬間もありました。キティに関しては入ってなかったし、……ワンコも入ってなかったかもしれない。そういう意味では、本当に1人だったかな。
山本:いやいや、ディレクターの方に「こうやってください」と言われて「わかりました」とやってるくらいです(笑)。僕はゲームソフトで自分の顔をしたキャラクターの声を当てたこともあるし、実写作品の吹替もやったことがあるんだけど、それぞれやっぱり違うんですよ。普通にお芝居する時はそんな抑揚をつけて喋らないけど、声だけの場合は抑揚をつけないと、棒読みに聞こえたりする。ただ、それも物によってなんですよね。今回は役が人間じゃないので、そこもちょっと難しかったかな。(テーブルに置いてあるプスの人形を指して)こんなビジュアルだけど「声は低く」という注文もありました。オリジナル版の声を聞くとかなり渋い感じなので、そこはちょっと意識したかな。
山本:はい。見ていました。すごく誇り高いし、かっこいい愛すべきキャラですけど、今回はそれをさらに掘り下げているという気がします。
強いものが弱くなる瞬間、弱いものが強くなる瞬間というのが、物語を引きつけると思うんですが、プスというキャラクターには、それがふんだんにあると改めて思いました。
山本:どれが敵なんだろう? みたいな作りでもありますよね。本当の敵は自分自身かもしれない、というところがすごくうまく描かれているし、最後は胸がぎゅっと熱くなるというか。話が戻るけど、誇り高いところも猫らしいじゃないですか。ちょっとわがままなところもあるけど、その彼がプライドを捨てて、一所懸命生きようとするのも、また猫らしい。
山本:プスは英雄だったわけですけど、例えば、俳優でお仕事がたくさんあったのが無くなってきて……みたいな風にも置き換えられるし。保護猫ホームに預けられたけど、やっぱり俺はこんなところにいる猫じゃない、と冒険に出て、自分やウルフと向き合って。一度は逃げるけど、やっぱり最後は立ち向かっていく。非常にシンプルだけど、気持ちのいい話ですよね。共感もですが、見ていて普通に楽しめました。
昔から、女性の方が男性よりも何倍も強いと思う
山本:仲間は少なくはない方かなとは思います。
山本:友情というか、愛情は大切ですよね。愛情はどうでもいいけど、友情だけは、と言う人っていないじゃないですか。 “情”というものだから、相手が誰であれ、大切にはしますよね。誰だって友だちは大切にするだろうし、その一方でプスみたいに、1人の時間も大切にする瞬間もそれぞれあります。
山本:それはもう女性の方が何倍も強いと思いますよ。今、女性が強いみたいな描き方をする作品もあるけど、昔から女性は強いから。特に変わってきたなとは思わないし、むしろ、男の人は最後は女性に助けられたりしている。男性にとって女性が大切なように、持ちつ持たれつの生物……人間なんだなと思います。
今回はキティも果敢に攻めていくキャラクターだし、ゴルディもそうですけど、最終的にみんなが求めるものは男女問わず、すごく近いような気はします。
山本:そうですね。描き方がそこはかとなくて、良かったですよね。人間……じゃないけど(笑)、共感できる“らしさ”みたいなものも盛り込まれていて。
パートナーということについて、ずっと1人で生きていく方もいるから一言では言えないけど、僕の場合はパートナーがいることで色々なんか見えるものも変わってきたし、1人でいる時よりやっぱり見る方向も変わったし。もちろん、その良し悪しは人それぞれなんだろうけど。だからパートナーというものについても一概に「絶対良い」とはちょっと僕も言い切れないとは思うんです。ずっと一緒にいれない人たちもいますから。ただ、僕にとってのパートナーは今のところ、人生にとっての1番というか、必要な存在になっています。
山本:ウルフとかがちょっと怖いから、どうかなと思ってるんですけど、上の子はもう大丈夫かな。やっぱり見せたいですよね。ただ、パパの声だとわかると……(笑)。最近もこういう仕事があって、見せたら、「パパだから」と言って意外とハマらないですよね(笑)。照れくさいのか、「パパの声じゃん!」みたいに言うから、それは黙って見せようかなと思います(笑)。
山本:すごい難しい質問ですね(笑)。9つ? みんな9つあるんだったら9つ欲しいけど、みんな1個だから1個でいいかな(笑)。
寿命が来て、周りの人たちもみんないなくて、また1から関係を構築して、と思うと……俺はいらないかな。ただ、生死を彷徨って復活した人がいるじゃないですか。それは2つ目の命ですよね。そういう人は実際いるし、もう1回与えられた命は大切に生きようと、みんなしてますよね。今生きてることをありがたく思っている。
僕らもプスと似たようなもんですよ。「空が綺麗だな」とか「桜が綺麗」とか、毎日思わないじゃないですか。でも1回そういう経験したら、それはもう綺麗に見えるだろうし。ただまあ「喉元過ぎれば」だと思いますよ。人間って、そこがいいと俺は思うけど。ありがたみを毎日全てのものに感じすぎると耐えられない。やっぱり忘れていく生き物だから、それでいいと思う。だからこそ楽しく生きていけるんじゃないかと思うし、もちろん感謝することはするけど、そんなに丁寧に生きようとは、あんまり思ってないかもしれないですね。9つはいらない。うん、1つでいいです(笑)。
(text:冨永由紀/photo:小川拓洋)
(スタイリング:笠井時夢/アメイク:西岡和彦[PARADISO])
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