『ドラゴンエイジ −ブラッドメイジの聖戦−』曽利文彦監督インタビュー

国際的注目を集める曽利監督が、栗山千明はじめ声優キャストを絶賛!

#曽利文彦

アメリカからオファーを受け、最初から英語作品として制作

全世界で600万本を売り上げた海外の大人気RPGゲーム「ドラゴンエイジ」の世界観をCGアニメーションで映画化した『ドラゴンエイジ −ブラッドメイジの聖戦−』。この作品の監督をつとめたのが、『APPLESEED アップルシード』(プロデュース)や『ベクシル 2077日本鎖国』などで国際的に注目を集める曽利文彦監督だ。

本作は巨大な陰謀に気づいた騎士カサンドラ(栗山千明)が、魔法使いガリアン(谷原章介)と共に、邪悪な魔法使いとの戦いを展開する、原作ゲームの持ち味である激しいアクションとバイオレンスが満載の作品。

曽利監督に演出面でのこだわりや、豪華声優陣の印象などについて語ってもらった。

──今作はゲーム原作ですが、映画化を依頼されたときの感想は?

監督:まず、アメリカからのオファーというのが大きかったですね。CGアニメーションはいろいろ作ってきましたが、英語圏の方々のファンがとても多いので、最初から英語作品として制作してみたかったんです。
 あとは、今までずっとSF作品を制作してきたのですが、未来をモチーフにした作品はCGとの相性が非常に良いんですよ。ただ、今回の作品は中世を彷彿させる世界観で、それは初めての挑戦でした。

──演出面などでこだわった部分は?

監督:演出手法は実写のときと変わらないですね。最近、スピルバーグがCGアニメーションで『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』を監督していたりと、こういう形のアプローチは増えてきていると思うんですね。自分自身も実写とCGアニメ作品を両方やってきましたが、感覚的には一緒です。逆に一緒だからこそできるというか、実写のように演出できるCGアニメのスタイルっていうのがしっくりきますね。
 あえて違いを言うと、実写では出来ないスケールをCGでは表現できます。今回もダイナミックなアクションシーンが多くありましたが、もちろん、キャラクターの細かい感情表現にもいつも以上に力を注ぎました。

GACKTさんに主題歌を担当していただいたのは、とても幸運でした。
──アクションシーンもさることながら、登場人物が織り成す人間ドラマも見どころかと思います。監督は今作にどんなメッセージを込めたのでしょうか?

監督:この作品に込められたメッセージは非常にストレートです。多種多様な種族が存在する世界での争いを描いてはいますが、それは現代の人間たちの争いに置き換えられてしまいますよね。異世界で異種族を描いても、それは現代の人間の世界の縮図でもあります。
 このような架空の世界に投影することで、今をより客観的に見つめることができるし、わかりやすくなると思うんですね。今作でも主人公のカサンドラが抱いていた、異族への隔たりをどう乗り越えていくか、そこが見どころになっていると思います。

──主題歌を含め、劇中音楽でこだわったところは?

監督:今までの作品は日本向けに制作し、それを輸出しているイメージだったのですが、今回は最初からインターナショナルに打ち出していくということが明確にあったので、そう考えたときに日本のアーティストのなかで、アニメーションと相性の良いアーティストであり、今作のイメージにも合うGACKTさんに担当してもらえたことはとても幸運でした。
 アニメーションのファンの方々にもGACKTさんのファンは多いと思いますし、GACKTさんに主題歌を担当していただけるということは、日本のアニメーションとしての格が上がると思います。嬉しい限りですね。

──GACKTさんは声優キャストでもありますが、現場での印象はいかがでしたか?

監督:失礼な言い方かも知れませんが、巧いという感じでしたね。ナイトコマンダーの年齢に合わせて、役作りをしていただいて大変だったと思うんです。ナイトコマンダーは結果として良い意味で当初のイメージと違ったものに仕上がったなと思います。GACKTさんがやることで予想を裏切る味のあるキャラになりました。谷原さんも「すごい!」と言っていました。GACKTさんにしか出来ないものに仕上がりましたね。

栗山さんはアニメの知識が豊富で、カサンドラのキャラもしっかり掴んでいました
──栗山千明さん、谷原章介さんの現場での印象はいかがでしたか?

監督:栗山さんは以前からいろいろな作品で拝見し、とても気になる女優さんでした。すごくクールな印象を持っていたのですが、お会いしてみると、とても気さくな方で話しやすく、いろんなことを説明しなくてもすぐに理解していただけました。
 アニメーションに関しても知識が豊富で、カサンドラのキャラクターもしっかり掴んでいただいていました。自分のやるべきことがしっかり見えている感じで、真剣に取り組んでいただいたので、最後の方はカサンドラが乗り移ったようでしたよ(笑)。だからその乗り移った感じのまま、前半もう一度やりましょうという拘りもありました。アクションシーンの息づかいって本当に難しいんですよ。なかなか実写の演技では無い部分じゃないですか。それも難なくこなす頼もしい女優さんでした。
 谷原さんは『ベクシル 2077日本鎖国』のときに一度ご一緒しているので、心配することは何もなく、全部お預けするような気持ちでいられました。ガリアンはとても感情豊かなキャラクターで、谷原さんがやると面白いんだろうなと思っていたのですが、まさに想像どおりで、収録しながら随分笑わせていただきました(笑)。抜けた感じの演技がいいんですよね。あんな2枚目な方が3枚目の感じを出すところがいいんでしょうね。個人的にはすごく好きなキャラになりました。収録も順調でリテイクもなかったですね。

──今後はどういった作品に挑戦したいですか?

監督:いずれ、実写の経験とCGアニメの経験が、どこかで融合しているような作品を制作出来たらなと思っています。スケールはCGアニメのスケールで、演技は実写というような。いつかその作品が世界のマーケットを賑わすようになればと思っています。

──最後にファンの方へメッセージをお願いします。

監督:ストレートでとても見やすいエンターテインメント作品になっています。難しいこと抜きで素直に楽しんでもらえたら嬉しいです。劇場映えする仕上がりになりましたので、ぜひ映画館でご覧になってください。

曽利文彦
曽利文彦
そり・ふみひこ

1964年5月17日生まれ、大阪府出身。1997年にUSC(南カリフォルニア大学映画学科)留学中、『タイタニック』にCGアニメーターとして参加。帰国後は、映画『ケイゾク』(00年)など多くの劇場作品でVFXスーパーバイザーをつとめ、2002年に『ピンポン』で映画監督デビュー。その後も『ICHI』『あしたのジョー』などのヒット作を生み出している。

曽利文彦
ドラゴンエイジ −ブラッドメイジの聖戦−
2012年2月11日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開
[監督]曽利文彦
[脚本]ジェリー・スコット
[声の出演]栗山千明、谷原章介、GACKT
[DATA]2009年/アメリカ/TOブックス/89分/PG12
(C) 2012 Dragon Age Project. All rights reserved by FUNimation / T.O Entertainment