2001年俳優デビュー。『昼顔』、『シン・ウルトラマン』など数々のドラマや映画で主演を務め、現在配信中のNetflix『極悪女王』やTBS日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』など話題作に出演中。俳優業と並行して(俳優業では「斎」、制作では「齊」の字を使用)映像制作にも積極的に携わり、初⻑編監督作『blank13』で国内外の映画祭で8冠を獲得。劇場体験が難しい被災地や途上国の子供たちに映画を届ける移動映画館「cinéma bird」の主宰や全国のミニシアターを俳優主導で支援するプラットフォーム「Mini Theater Park」を立ち上げるなど、幅広く活動している。
1970年代を舞台にした映画『不良少年 3,000人の総番(アタマ)』(3月10日公開)は、ツッパリ文化全盛期の不良高校生たちの熱気がムンムンと伝わってくる青春映画だ。
原作は、暴走族の3代目リーダーをつとめていた経歴をもつ作家・遠藤夏輝による自伝的小説「東京不良少年伝説」。この映画で、著者の分身ともいえる主人公の千藤鷹也役を演じたのが斎藤工だ。その斎藤に、昔のツッパリ高校生を演じる上での役作りや物語の大部分を占める派手なケンカシーンについて話を聞いた。
斎藤:僕個人としては作品を選ぶのではなく、「なんでこの役が自分に?」と考えるよりも、「なぜ彼ら(製作スタッフ)はこの役を僕にあててくれたんだろう」ということを知りたいですね。自分にその役と通じる部分を想像してくれた人々にお返しをしたい、という気持ちがあります。70年代は僕の知らない世代ですが、興味はすごくありました。
斎藤:僕はケンカもしたことがないし、人の頂点に立つというのもイヤですね(笑)。そういう素地は無いんですが、役者って自分に近いものだけを演じるのではなく、素地がない分、どうしたらこうなるんだろう、と観察しているんですよ。
斎藤:彼はたまたまトップになっちゃったんですが、原作者の遠藤先生にお会いしたときに、そのリアリティを感じられたんです。ヤンチャもしていたけれど、その後に風紀委員になったという遠藤先生のプロセスが興味深かったです。
斎藤:現場でお会いしましたが、特には無かったです。でも、先生の僕に対する応対や先生自身のキャラクターがアドバイスだと思っています。自分がどうしたらそういうルートをたどれるんだろうと考えたときに、他者のため、というのがあって。それを紐解いていくと、先生自身がそうだったんですけど、一番多感な時期にご両親と一緒にいなくて、親戚の家に預けられていて、自分の本当の居場所が無かったんです。
それで、その居場所が学校であり仲間であり彼女であり、いわゆるグループ交際ではないですが、そのコミュニティが家族だったんですね。だから、その家族を守るんだ、という先生の人間性が、演じる上で役立ちました。
斎藤:リハをしないようにお願いしました。リハをしてしまうと、頭で演じるようになってしまうんですよね。頭と体が同調していないアクションシーンというのは結構ありますが、そうではなくて、この作品は本能と本能がぶつかっているという構図を見せないといけないな、と。なんとなく流れは決めておいて、一発本番のテンションを大事にしました。
予期せぬ不穏な空気を出したいというか、感動って予想の範疇で作れなくはないと思うんですけれど、それは心の深いところまで刺さらないと思うんです。いい映画というのは、予想しなかったことが起こるんですよね。ですから、アクションシーンは、“同時に手が出てぶつかっちゃったけれどアドレナリンが出ていて止められない”というような生々しさにこだわりましたね。
斎藤:あれ、ちゃんと当たってましたから(笑)
斎藤:まぁまぁ(笑)、ゼロとは言えないです。でもね、傷は消えるけど、映画は残りますから。「次の作品があるから」という気持ちで臨むと、やっぱりふわふわした演技になってしまうし。1本の映画で人生は変わりますからね。
斎藤:あのときは、単純に爽快感があったんですよね。試合の後という感じがして、その気持ちの表れだと思いますね。でも、笑おうとは思っていませんでした。なんか笑っちゃいましたね。
斎藤:よく聞かれるんですが、毎回最後と思いながら、そのような役をよくいただくんですよね。先ほども言ったように、なんで自分なんだろうという疑問のまま現場に行くのは失礼なので、誰かが「あいつで」って言ってくれたのは妥協からではないと信じています。役柄の年齢と実年齢との不自然さを観客に意識させたら負けなんですけど、それを超えるところまで持っていければ勝ちなんじゃないかな。
ただ、僕の年齢とかほかの出演作とかは実はどうでもよくて、いかにそれを意識させないかというのが役者の仕事だと思うんです。ですから、無名の俳優ほど強いものはないですよね、ほかのイメージがないから。それがお客さんには一番親切じゃないですか。
斎藤:自分の目線は観客側にあるので、この役者さんは本当はこうなんだよな、という情報は邪魔でしかないんです。だから、例えば僕が高い車に乗っているとか女好きだとか(笑)、そういう情報がもしあったとして、それで貧しい役を演じたとしても、僕が観客ならそうは見えないんですよね。
今の役者さんは私生活を出す人も多いですが、僕自身はそれは役者としての寿命を縮めることだと思うので、一切プライベートを出したくないですね。自分はただの映画オタクで、映画が好きだから役者をやっているだけです
斎藤:この映画が震災後に撮られたということには意味があると思います。復興の映画ではないですが、70年代という大きな変化の時代を描くことで、日本が立ち上がってきた歴史や、物質的には今よりも貧しくても人と人とのつながりは豊かだったという面を振り返ることのできる作品なんじゃないかな、と思います。この映画のタイトルやビジュアルからそういう面を期待して劇場に行こうとは思いづらいでしょうけれど(笑)。出演者の誰かのファンだとかきっかけはなんでもいいのですが、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。
(text&photo=秋山恵子)
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