1973年9月11日生まれ、大阪府出身。大阪NSC12期生。卒業後は、漫才コンビ「ビリジアン」として活動するも、2001年に解散。その後はピン芸人として活動し、吉本新喜劇に入団。2006年には史上最年少で座長を襲名した。現在は、フジTV『人志松本のすべらない話』などのトーク番組にも多く出演し、レイザーラモンと組んだ音楽&お笑いユニット「ビッグポルノ」としての活動や、野外音楽フェス「コヤブソニック」の企画・主催など、多岐に渡る活動を展開している。
大阪の町工場を舞台に、シングルマザーに恋心を抱く冴えない男と地球に不時着した宇宙人の出会いと友情を描いたヒューマンドラマ『FLY!〜平凡なキセキ〜』。
主人公で町工場の工員・満男を演じたのは、本作が映画初主演となるお笑い芸人・小籔千豊。その満男がひそかに恋心を寄せる工場のマドンナ・ななみを演じたのが、本作で初の母親役に挑戦した相武紗季だ。
映画では口数少ない地味な男に扮し、同じく非モテでさえない宇宙人シカタ(温水洋一)と、お互いの恋を成就しようと真剣な姿を見せた小籔。2人のほのぼのとしたやり取りも映画の見どころの一つだが、そんな雰囲気と同様、終始和やかなムードで行われた今回のインタビュー。小籔と相武に、役作りや本作のテーマである“友情”について語ってもらった。
小籔:まさか会うとは思ってもなかったので、どんな人やろうってイメージしたことも無かったというか(笑)。まあ、すごい女優然とした、キレイな方ですよね。お会いして驚いたのは、普通の女性過ぎてビックリしました。でも、よく考えたらみんな地元もあって、お菓子も食べたりするし、そらそうかって当たり前のことに気づかされましたけども。
相武:お笑い番組とか新喜劇で見ていて、鋭い突っ込みをされてることが多かったので、休憩時間もズバズバ突っ込まれて追い込まれるかと思ってたんですけど(笑)、そういうこともなく、すごく温かい空気を作ってくださいました。(共演のお笑いコンビ)天竺鼠さんとお話されて、そのままの流れで本番に入ったりとか、そういうのが今までに無い経験で良かったです。
小籔:こうやって取材を設けてさせていただいて「役作りのポイントは?」と聞かれるんですけど、そういうのは全く無くてですね。自分が満男であるということを思い続けることぐらいが役作りなのかなとか思いながら、撮影の合間に相武さんのことをずっと見て、「この人のことめっちゃ好きやけどしゃべられへんわ」っていうのをイメージしてたんです。周りから見たら“キモ”って思われたかもしれないけど、それも厭わず役作りにまい進しました。
相武:すばらしいですね(笑)。私は今回作らずに、子育っていう面では友だちにどうって聞いても、自分で体験してないことを再現するのはなかなかできないので、なるべく子役の子と仲良くなろうとか、現場入ってから作っていこうと思いました。シーンごとに明るく楽しんで、どんどん進むにつれて淡い恋心が芽生えてくれば嬉しいなと思って現場にいましたね。
小籔:普通に読んで面白かったんですけど、主演なんてさせていただくのは初めてでしたし、ガッツリたくさんしゃべるという役も初めてだったので、恐怖心しか無かったです。「俺、こんな感じでしゃべるの?」とか「俺、相武紗季とこんだけしゃべるん?」とか、恐怖でしかなかったですね(笑)。
相武:すごく温かい大阪の情景が浮かぶような脚本だと思いました。ただ、宇宙人シカタがすごいキーポイントになるので、「これはどんな話になるんだろう? 大丈夫かな?」とさえ思ってたのですが、温水さんの宇宙人を見たら「これはいける!」って想像できましたね。
相武:ガッツリ一緒のシーンが無くて残念だったんですけど、(温水さん本人は)穏やかで落ち着いた方なので、(見た目との)ギャップが面白すぎて直視できなかったです。いつもお会いしたらたくさんお話してくださる方なんですけど、この状態で話してていいのかなと(笑)。こっちがよそよそしくなっちゃいました。
小籔:(他の共演者の)相武さん、大杉漣さん、笹野高史さん、本仮屋ユイカさんっていうのは、USJのスパイダーマンというか、「出てきたな!」って対峙する感じだったんですけど、温水さんの場合は相方みたいに思えたというか。とても偉い方なんですが、僕みたいな下っ端にも距離の詰め方がお上手で、「このシーンどうやって笑かしますか?」とか、相談させていただきました。
小籔:シカタを抱っこしてベッドに下ろすシーンがあるんですけど、実は僕、屁こいてもうてるんですよ。うっすら聞いたら、これちゃうんかっていうのが入ってるんですけど(笑)。あとは、撮影が押して、車中で出番待ちしてた温水さんが疲れたんでしょうね、宇宙人の格好のまま外に出て背筋を伸ばしたんですよ。そしたら、それを見た犬が吠えてました(笑)。
小籔:僕は昔ビリジアンというコンビで漫才してたんですけど、ある日相方が辞めると言ってきて。そのとき僕には、この世界入る前から付き合っていた彼女がいて(現在の妻)、「幸せな結婚」と「この世界で売れる」っていうのが同じくらいの夢だったので、(芸人を辞めて)結婚して普通の仕事就いて、せめてそっちの夢だけでも叶えようと思ったんです。
それで、会社の人に辞めると言いに行き、「このことは周りの芸人たちに言わんとってな」と伝えました。止められたら意志も鈍るので。でも、ある人がバラしてしまって、2丁拳銃の小堀の耳に入ったんです。で、僕はロッシー(野性爆弾)と小出水(シャンプーハット)とよく遊んでたので、小堀がロッシーに電話して「お前、小籔と仲ええんやろ、どうなってんねん?」と聞いて。それで、ロッシーと小出水に呼び出され、「辞めるんでしょ! 小籔さん辞めるんでしょ!」と問いただされまして。朝まで「辞めんな辞めんな」の説得でした。
でもそのときはもう結婚を決めていたので、「いや、ちょっと(撤回は)無いねんな」と言ったんですが、「小籔さんは辞めない方がいいですよ」とずっと言われて、なんてええ奴らに囲まれてたんやと思いました。それで、嫁に「あと一年だけやるわ」と言って、そのままのらりくらりとやらせていただき、今では座長でございます。
ロッシーとか小出水のことが無かったら辞めてたと思いますし、その後たむらけんじさん、ケンドーコバヤシさん、(FUJIWARAの)原西さん、木村さん(現バッファロー吾郎A)とかたくさんの方に「辞めるな」と言っていただき今がありますので、まあ友情じゃないですけど、情けをかけていただき、義理を感じてます。
相武:いい話ですね……。私、そんな話あるかな……普通の話でもいいですか?
小籔:全然いいです! 僕は紆余曲折ありまくった人ですから(笑)。順風満帆な方には基本的にこんな話は無いです。
相武:先に話しとけば良かったです (笑)。私、東京に出てきて10年なんですけど、地元の友だちとの関係がまだ続いていて、私の家に泊まってくれたりとか、東京で食事会を開いたり、ことあるごとに集まれるのが嬉しいです。そういうときって仕事の話もせず昔の話だけで盛り上がれたり、そういうことができる友だちがいて救われてるなって思います。
相武:先に言わせていただきます(笑)。大人になってピュアな恋愛ってなかなかできなかったり、踏み込めなかったりすると思うんですけど、すごくいい感じでエンディングに向かっていくストーリーはどなたでも楽しめて温かい気持ちになれると思いますので、ぜひいろんな方に見ていただきたいなと思います。
小籔:満男という主人公は何か一歩踏み出さないといけないと思っているのに、その勇気も無くて、毎日ルーティンのように過ごしてる男です。でも、そういう部分は多かれ少なかれみなさんにあると思いますので、この映画を見て、実生活で勇気を持っていただけたらなと思います。あとは、モテない男の人は僕のことを自分だと思って見ていただけたら楽しいと思いますので(笑)、よろしくお願いします。
(text&photo=編集部)
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