1984年8月1日生まれ、東京都出身。2002年、ドラマ『壬生義士伝〜新撰組でいちばん強かった男〜』で、父である渡辺謙演じる吉村貫一郎の青年期役でデビュー。07年、『県警強行殺人班 鬼哭の戦場』で映画初主演を果たす。伊藤俊也監督の『ロストクライム -閃光-』にて第20回日本映画批評家大賞主演男優賞を受賞。18年の主演映画『ウスケボーイズ』でも高い評価を得た。また、2021年6月に『峠 最後のサムライ』の公開を控え、4月からの舞台「魔界転生」で初舞台に挑戦する。
昭和40年ごろの活気ある屋台街と、バブル崩壊後の不景気に沈む現代を舞台に、とんこつラーメンの発祥地である福岡・久留米で親子2代のラーメン店主と家族のドラマを人情味たっぷりに描いた『ラーメン侍』。
4月7日より公開の本作は、ラーメンフェスタの発案者でもある香月均が地元タウン誌に連載しているコラム「ラーメン今昔物語・初代熱風録」に着想を得た作品。主演は『ラストゲーム 最後の早慶戦』や『ロスト・クライム -閃光-』の渡辺大で、父・神代昇と息子・光の親子を1人2役で演じた。
そんな渡辺に、新横浜のラーメン博物館での修行や悪戦苦闘したラーメン作りなどの撮影秘話から、親子2世代に渡るドラマを通して感じられた映画への思いを語ってもらった。
渡辺:もともと僕はラーメンや麺類が好きでした。ただ、僕等(関東在住者)が屋台って言うと縁日とか、溜まるっていうよりかは神社とかで買い物をしてサッと帰るテキ屋とかそういう類しか知らなかったです。
渡辺:そうそう、縁日のイメージが強かったので、ああやって朝まで明かしてっていう屋台(文化)は知らなかったですね。今回ご当地映画という色も強いんですが、そうじゃない地域、東京とか大阪のような地域でも発信出来たら面白いなっていう思いがありました。
もちろんラーメンが主軸で(話が)回るんですが、伝えたいところはそれ以外にもある。家族であったり、親子であったり、夫婦であったりや、血の繋がりじゃないところでの共同生活から、血よりも濃い繋がりが出来たりとか。現代ではなかなかないような、そういう意味で言うとプライバシーもへったくれもないような時代で生きていた人たちっていうのは、やっぱり僕たちにはカルチャーショックな部分がありますね。
渡辺:今まではどちらかと言うと食べることしかなかったですから、実際にどういう風にスープを作って、どういう風に麺を調理していくのか知らなかったですね。だから、こんなにも難しいものなのかと。まず、“麺あげ”の画が欲しいということになって、いざやってみると全然あがらないんです。それを会得するために麺を何玉も使って、何回も茹でて何回も練習しました。
渡辺:ありましたね。僕なんかは火傷の痕が消えなくて。丸1年経ちますけど、今でも消えない。でも、大事な勲章だと思って残っていると嬉しいんです。
豚バラを落として脂がビシャっと跳ねてきたり、湯気で火傷したりとか、そういう怪我というのは常につきもので、不思議だったのは手をかばい過ぎてタコみたいなのが出来たんですよ。ペンだこみたいな。これが1年消えなかったですね。それと獣のニオイがすごかったです。豚骨のなかでも「大砲ラーメン」(原作者・香月均が社長をつとめる人気ラーメン店)のはかなりパワーがあるヤツなので、半日ぐらいでニオイがついて、僕はいいんだけど一緒に住んでる家族は大変だったと思いますよ。
渡辺:監督のキャスティングの意図としては、その役のバックグランドに近い物を持っている人にやってもらいたいというのがあって、僕も読んでいて思うところがありましたね。多分そうだろうなと思って、「じゃあ乗っかりましょう。監督の意図に敢えて乗っかりましょう」みたいな感じでしたね。
陰と陽じゃないですけど、すごい対極の位置にある光と昇なんですが、両方とも僕が持っている物なんです。ただ、昇のときは僕が持っている昇の部分を特化させ、光のときは僕が持っている光の部分みたいな物を特化させて、と。光のときはちょっとジトッと、あんまり強くないというか都会に憧れて、軟弱というか中性的な部分がちょっとありますね。
渡辺:ま、そういうことだな、と(笑)。僕が下の世代にやることは一緒なんでそうなんですよ。そういう意味で僕は両方なんですよ。光でもあり、昇でもある。今までは光の部分が多かったけど、今度は昇の部分が多くなるし。そういう意味でも監督はキャスティングなさったんだな、と思いますね。
(text&photo=じょ〜い小川)
[衣装協力:ブロックインダストリー、ヴィンテージ55]
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