1961年5月6日、アメリカのケンタッキー州で生まれる。父親は映画評論家兼ニュースキャスター、叔母は歌手というショウビズ一家の出身。俳優としては長い下積みを経て、テレビシリーズ『ER 緊急救命室』の医師役でブレイク。『アウト・オブ・サイト』(98年)でオスカー候補となり、『オー・ブラザー!』(00年)でゴールデングローブ賞最優秀男優賞を受賞。『シリアナ』(05年)でアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。02年に『コンフェッション』で監督デビューし、05年に2作目となる『グッドナイト&グッドラック』を監督。主な出演作は『オーシャンズ11』(01年)、『オーシャンズ12』(04年)、『オーシャンズ13』(07年)、監督もつとめた『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』(11年)など。
ハワイのオワフ島に暮らす家族の姿を通じ、人生の苦さや再生、人と人との繋がりを描いた『ファミリー・ツリー』。今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、編集賞など5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した秀作だ。
主演はジョージ・クルーニー。『オーシャンズ11』シリーズなどでの小粋なイメージが強い彼が、本作では、娘に振り回され、妻の隠し事に衝撃を受けるごく普通の父親を演じ、新境地を開拓している。
本作の演技でゴールデングローブ賞ドラマ部門の主演男優賞を受賞した彼に話を聞いた。
クルーニー:実は前にもやったことがあるんだ。今まで数本の映画で父親役を演じているし、夫を演じた作品も数本ある。でも、この映画の役は今までとは違うんだ。もっとずっと感情が絡んでいるし、家族との繋がりが強い作品だから。
物語は、妻が昏睡状態になったところから始まり、言わば、人が一人前になる成長を描いているんだけど、なんと、一人前になるのが50歳の男なんだよ(笑)。だから、この役を適切に演じる方法を会得するにはコツがある。でも、とにかくよくできた脚本だったからね。脚本が良いと、(役者の)仕事はずっとラクになるんだ。
クルーニー:僕はアレクサンダー・ペイン監督と仕事がしたいとかなり前から思っていて、トロントで彼と夕食を共にする機会があったとき、彼が僕に脚本を送ってくれると言ったんだ。実を言えば、僕はどんな脚本だろうと関係なく出演しようと思っていたんだよね。フィルムメイカーとして、彼は今まで一度もミスしたことがない人だから。でも、脚本を読んでみて、自分はとても運がいいと思ったんだ。僕が(出演の)判断を下すときのポイントは2つだけ。監督と脚本。この2つだよ。
クルーニー:この映画は子どもたちがステキだったんだ(笑)。次女役のアマラは、これが初めての映画だったから、何回も同じシーンを撮ることを知らなくて、与えられたアイスクリームをずっと食べ続けていた。7カット撮り終わったときには7個のアイスを食べちゃっていたんだよ!
現場でよく冗談をいっている理由? 常に何かしていることが好きなんだ。僕はテレビシリーズの『ER 緊急救命室』に何年も出ていて子どもとも一緒に撮影をしていたから、どうやって撮影現場を盛り上げるかが分かるんだ。
クルーニー:最初の頃は『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』『ピースメーカー』(共に97年)などに出たけど、あれは一種の助走のようなものだね。役者として仕事を手にし始めた時期というのは、とにかく「ノー」と言わずに受けるものなんだ。テレビにも出演していたし、2、3本の映画に出るようになった時だったから、とても嬉しかった。あちことに電話をかけて「『バットマン』が決まったぞ、ワォー! 役はバットマンだ!」ってね(笑)。
それから段々分かってきたんだ。自分の責任範囲が、単に演じる役だけではなく、これから作る映画全体に及ぶってことがね。そして、次に取り組んだ作品は、『アウト・オブ・サイト』(98年)、『スリー・キングス』(99年)、『オー・ブラザー!』(00年)で、脚本がとても良かった。あの3本にたどり着けてラッキーだったよ。
その後は、できるだけよくできた脚本に焦点を絞るようにしているんだ。それともうひとつ。一緒に組む監督と、互いに理解し合うこと。素晴らしい人たちと協力することは、役者にとっては自分の身を守ることにつながる。自分の多くの欠点を隠せるからね。(小声で)アレクサンダー・ペイン監督も、僕の悪いところを隠してくれているよ。
クルーニー:彼は物語をとても早く変化させることができるんだ。面白くなったと思ったら悲しくなったり、それでまた面白くなったり。その切り替えも見事なんだ。これは天賦の才能で、あんな才能を持っている人はなかなかいないよ。
クルーニー:この作品は「エモーショナルなこと」だけじゃなくて、「家族」という要素にすごく結びついているから難しかった。(この役について)「自分をそのまま見せているだけだから簡単だよ」という役者がいるけれど、自分自身を演じることは、役者にとっては一番大変なことなんだよ。
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