1968年5月5日生まれ、東京都出身。1995年、伊丹十三監督の『静かな生活』でイーヨー役を演じ、日本アカデミー賞優秀主演男優賞と新人賞のW受賞を果たす。99年に放送されたテレビドラマ『ケイゾク』が大ヒットし、00年に『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』として映画化され主演。ドラマ『外事警察』(09年)、『沈まぬ太陽』(16年)、『犯罪症候群』(17年)、映画『スワロウテイル』(96年)、『愛のむきだし』(09年)、『外事警察 その男に騙されるな』(12年)、『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(13年)など多くの話題作に出演。
国際テロを未然に防ぐための諜報部隊であり、任務のためなら民間人さえもスパイとして利用する、そして徹底的に秘匿(ひとく)された彼らの存在は家族にも明かされない。そんな<日本版CIA>や<裏の警察>とも言われる警視庁公安部外事課を描いて大反響を巻き起こしたNHKドラマ『外事警察』(09年放送)がついに映画化された。
主人公は、“公安の魔物”と呼ばれる男・住本健司。物語は、日本が核テロの脅威にさらされていることが明らかになり、外事課を追放されていた住本が呼び戻されるところから始まる。住本は事件の鍵を握る工作員と思われる男の妻に狙いを定めると、彼女の娘への愛や罪悪感を巧みに利用して協力者として取り込み、夫の行動をスパイさせるのであった。
そんな非情とも思われる方法で捜査を進める住本を演じるのは、ドラマ版と同じく渡部篤郎。冷徹な仮面の下に熱い思いを隠した男を演じた渡部が、役への思いなどを語ってくれた。
――ドラマから2年ほどあいて住本役を演じられましたが、すんなりと役に戻れましたか? また住本の任務は常人の精神状態ではできないような大きなストレスのかかるものだと思いますが、ご自身はこの役を演じているときにはストレスを感じていましたか?
渡部:役にはすんなり入れました。住本のストレスがどういうものか具体的にはわからないですが、たとえば俳優の仕事にしても、芝居をするのは大変ですが、好きという枠組みのなかでしているからできるんですよ。住本も常人の精神状態ではないと思いますが、やっぱり自分が国を犯罪から守るという正義感の枠のなかでしていることだからできるんだと思います。
渡部:僕は、どのような作品であっても映画は娯楽だと思っていますが、人それぞれのとらえ方でいいと思います。基本的に、映画というものの始まりはエンターテインメントですから。裏切りなどもありますが、それも娯楽なんですよ。心が重くなる娯楽ね(笑)。世の中にはいろんな映画がありますからね。見ていてよい気持ちになれないものとか。でも、それはそういう作風ですから。
渡部:彼があそこまでするのは、そうしないと国を守れないからです。僕にとって、住本は警察官のイメージなんですよ。国をしっかり守るという正義感のもとで動いている警察官です。役への納得ということでいえば、役を引き受けた段階で葛藤があったらいけないですよね。だからといって、僕と住本が同じ考えかというと、それは違っていてもいいと思うんです。ただ、役を引き受けるにあたっては、納得できないといけない。そして、演じるときには住本の行動を理解しようとしますが、でもそれは僕が組み立てることではなく、70%は台本上で見えてきますから。残りの30%は、その割合は作品によって違いますが、そこは自分のなかで理屈を考えたりして演じています。
渡部:ないですね。ただ、彼らのやり方は相当進んでいますよ、スタッフも含めて。僕らが若い頃は、韓国映画は日本でほとんど知られていませんでしたが、彼らのなかには日本人の俳優に対するリスペクトがあると思うんです。そして、僕らは韓国映画の現状に対する尊敬があります。互いに素直にならないと、うまくいかないですよね。僕は僕、彼は彼、仕事をきちんとしている、ということが大事。自分の役まわりをきちんとできるのがすぐれた俳優なんじゃないかな。
渡部:他の仕事はできないですからね、いまさら。年齢とキャリアは比例していますが、若いときから基本は何にも変わってないですね。演じることが好きだということは。大人になったことといえば、昔はこういうインタビューに答えていなかったですよ(笑)。抽象的な質問には答えられなかったですよね。「俳優とはなんですか?」とか言われても。伊丹(十三)監督には、「答えられなければ、答えなくていい」と言われていたんですよ。「それよりも自分が伝えたいことを伝えなさい」と。
渡部:結局、お客様にどう届けるか、それをどう感じていただいたかで評価されると思うんです。ですから、僕が今はこうなりました、とかいうことはあまり意味がないので考えていないですね。日々、このシーンはどうしようか、ということの繰り返しであり、それをどう見ていただけるか。自分が俳優としてどう変わったかということは正直、わからないです。言えることは、俳優という仕事をわかってくればくるほど、難しさをますます感じているということ。若いうちは、やったような気分になっていたり、満足していたこともあったけれど、今はそういうものはなくなってきて、難しいですし、楽しいですね。
(text&photo=秋山恵子)
(stylist=中村みのり/hair making=TOYO(BELLO))
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