1953年8月19日生まれ。73年より友人と映画を撮り始める。81年、『監督ミケーレの黄金の夢』でヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞。94年には『親愛なる日記で』カンヌ国際映画祭監督賞を受賞。01年に『息子の部屋』でカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞。
意に反してローマ法王に選ばれてしまった主人公が、就任演説を前にローマの街に逃げ出してしまうことから巻き起こる騒動を描いた『ローマ法王の休日』。オードリー・ヘプバーンの名作を彷彿とさせる作品だ。
全世界11億人以上にのぼるカトリック教徒の最高指導者「法王」を主人公にするという大胆な作品を監督したのは、『息子の部屋』(01年)でカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞したこともある名匠ナンニ・モレッティ。イタリアのウディ・アレンとも呼ばれる彼に、法王の戸惑いを描いたユーモラスな“問題作”について話を聞いた。
監督:(脚本を手がけた)フェデリカ・ポントレモーリとフランチェスコ・ピッコロ、そして私の3人で、同時に別々のアイデアを練っていました。しばらくしてから本作の脚本に取り掛かることに決めました。あるシーンを思いついたことをきっかけに、すべてが始まりました。それは、新しく任命されたローマ法王が、彼の登場を期待して待つ信者たちの前に、なかなか姿を現すことができないというシーンです。
監督:作品そのものに対する批判はありませんでしたよ。宗教的な教育については、両親が信奉者なので、ほどほどに受けてきました。けれど、私自身は信奉者ではありません。
監督:私は1本の映画でコメディ性とドラマ性を混在させたかったのです。劇中で描いている枢機卿のコンクラーヴェ(法王選出選挙)は、あくまでも我々の想像の産物ですが、現実のコンクラーヴェの儀式と教義に敬意を払いました。そして、法王はヴァチカンから逃げ出して街中を歩いていると、彼は、長い間忘れていた様々なことを経験するのです。
監督:私は人々が期待していることを取り上げたりはしません。すでに人々に知られていることをわざわざ映画を通して描きたいとは思いません。時事ネタを扱って、観衆にベールに包まれたメッセージを送りたいとも思わない。カトリック教会を取り巻くスキャンダルについては(例えば小児性愛や財政問題など)、それを取り上げている本やドキュメンタリー、新聞記事がすでにたくさんある。私は時事に影響されないように距離を置いています。本作はフィクションです。この作品は私の視点から見るヴァチカンであり、コンクラーヴェであり、枢機卿の姿です。
監督:いつものことですが、映画を撮っているという行為自体が自伝的です。より深く説明するとすれば、法王になりたくないと違和感を覚えているメルヴィルと精神分析家の2人は、両方とも私自身の投影なのです。
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