1982年生まれ、埼玉県出身。97年、演出家の蜷川幸雄に見い出されて、舞台「身毒丸」のロンドン公演にてデビュー。以降、蜷川作品の常連であり、野田秀樹、三谷幸喜ら名だたる演出家の舞台に立ち続けている。映画では『バトル・ロワイアル』(00年)、『バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜』(03年)、『DEATH NOTE デスノート』『DEATH NOTE デスノート the Last name』(共に06年)、『カイジ 〜人生逆転ゲーム〜』(09年)、『カイジ2 〜人生奪回ゲーム〜』(11年)などのヒット作に出演。その他、『パレード』(10年)、『おかえり、はやぶさ』(12年)などに出演。
『青い春』(02年)や『空中庭園』(05年)などの作品で知られる豊田利晃監督と、蜷川幸雄演出の舞台の常連である藤原竜也が初タッグを組んだ作品『I’M FLASH』が、9月1日より公開される。
沖縄の美しい海辺を舞台に、空虚な日々を送っている新興宗教団体の若き教祖ルイと彼を守るために雇われたボディガードが直面する生と死を描いたドラマで、藤原は自ら起こした事故を機に死生観をくつがえされるカリスマ教祖ルイを演じる。ボディガードのひとりを演じるのは『青い春』、『ナイン・ソウルズ』(12年)で豊田監督と組んだ経験のある松田龍平で、藤原と松田の初共演にも注目が集まっている。
主演の藤原に、念願だった豊田監督との仕事や、初共演となる松田との撮影の裏話を聞いた。
藤原:初めて見たのは『青い春』ですね。当時は僕自身もまだ若くて、今の見方とは違いますが、すごくいいと思った。豊田監督の作品をずっと好きで見ていて、監督も僕の芝居を見に来てくれて、飲むようになって、一緒にものを作ろうという話になったのが5、6年前のことです。と、同時に一緒にやろうとしていた作品もあったのですができなくなり、昨年震災後に飲みに行ったときに、「今度こそ実現させなければだめだ」という話をしていたんです。
藤原:監督が僕に行った作業というものは、抱えているものを掘り起こす作業だと思うのですが、僕のなかにもどうやって進めていこうかな、という不安がありました。監督は、僕を無に近いところに置いて、どうやっていいかわからないというところまで追い詰めてから「よーい、スタート」で撮影するという感じでした。だから、僕は常にイライラしていましたし、監督に対してもイヤな想いを抱えていたんですけれど、あそこまで追い込まれて撮影できる機会は今では少なくなってきていますから、やっぱり幸せですね。ルイという役は監督が創り上げてくれたキャラクターなんだな、と振り返ってみれば思いますね。
藤原:そうですね。それが監督の手法なんですよ、常に苛立たせ、訳のわからないこと言うという(笑)。それが演出なのかと思いながらも、「もう嫌だ」「二度と嫌だ」と思いました(笑)。やっぱり大変ですよ、こういう人と仕事をするのは。めったにいないと思いますよ、すごく貴重な人です。
藤原:監督とルイのキャラクターに関してはあまり話をしていません。ただ、海に入るとようやくひとりになれて安心して、海からあがってきたときに現実を見て、どこに行ったらいいのかわからない、と彷徨(さまよ)っているようなキャラクターだと思いましたし、豊田監督が歩んできた人生そのもののような感じがしました。そういう風に役を作るのではなく、そういうイメージで取り組んだのですが、監督は「それも違う、あれも違う、これも違う」と(笑)。それで、「あー、もう嫌になった」という頃にOKが出る。考えることは考えて、作ることは作るんだけど、それをまたくつがえして新たに作る、というような(笑)。
藤原:いろいろやらせていただきましたが、最後なんて「じゃあ、何をしたらいいんだ」って。前のカットと話がつながらないんですよ。「僕はさっきも同じような感じで芝居してます」って言っても、監督は「いや、だめだ、だめだ」と。「じゃあ、前の(カット)を見せてください」と言うと、「それでいいんだけど」とか。それで、「ちょっとお茶でも飲んでこい」、「お茶飲んできたら話がつながりますかね?」とか言い合って、その後にもう訳がわからないけどいいや、と演じたら「はい、カット、OK」みたいな。だから、なんだかわからない、というのが思い出です。見ていて非常に心に残る作品を撮る監督とやるのは、正直、大変。魂を、神経を削って撮っているんでしょうね。すごく素敵な人です(笑)。
藤原:後悔はしてないです(笑)。監督のまわりの人々みんなが豊田さんにはもっと大きな作品を作ってほしいと思っていて、みんながその才能をもう一度開花させたいと思っているから、この作品がそのひとつのきっかけになってくれたらいいですね。この作品のテーマのひとつが海なんですが、僕は水中訓練をしていて、監督は10メートル、16メートルと潜れるようになってほしかったみたいですが、最後は8メートルまでしか潜れなかったんですね。それが僕の豊田組における実力なんだ、と思いました。監督の求めるところまではいかなかったけれど、すごく居心地のいい現場でした。
藤原:いやー、きれいでしたよ。深さによって水温も変わってきますし、魚の種類も変わってきますし。世界が特殊なものになりますよね。ただ、潜ってるところを俯瞰で撮るとか、撮影は本当にきつかったです。
藤原:オリオンビール(笑)。名護にオリオンビールの工場があり、その近くに居酒屋があったのですが、工場の隣なので作りたての味なんですよ。クランクインの前に行ったのですが、たまらなかったですね。
藤原:龍平くんとの出会いはありがたかったですね。本人は口には出しませんが、大きなものを背負って苦労しているんだろうな、という感じは受けました。キャラクター的にも魅力的で、謙虚ですし。
藤原:全然してない。彼と僕はもちろんタイプも違う俳優だし、育ってきた環境も違うけれど、僕からしてみれば、“松田龍平”という人は特別な存在感というか空気を持っている人だから、これがいいか悪いかはわからないけれど、僕は龍平くんの空気に溶け込むように演じさせていただきました。
藤原:もちろん変わりました。沖縄の自然を背景に流れるように描かれていますが、その自然の力を映画に取り入れる手法がすごいと思うし、大きなパワーになっていると個人的には思います。
藤原:今は面白いことに何も考えていないんですよ。芝居が終わったばかりで、これから休みなので、休みの日に何をしようかな、と。豊田さんには、会ったら会っただな(笑)。でも、繰り返しになるけれど、監督にはもっともっと世間を驚かせるような攻撃的なものを作ってもらいたいし、この作品がそのひとつのきっかけになればいいと思います。また何かを一緒に作りたいですね。
(text&photo=秋山恵子)
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